表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/17

序章  転生。

「さよならっ……!」

「っ! あゆっ!」


 彼女はそう言うと、交差点の向こう側へと走って行った。岩倉(いわくら) あゆ。俺の幼なじみで、好きだった人。さっき俺は、フラれたのだった。

 俺の名前は、佐藤 颯真(さとう そうま)。16歳。高校1年生。勉強も、運動もそこそこしかできず、何の取り柄もない、ただの高校生だ。

 今日は12月24日。クリスマス・イブ。だというのに、俺は好きな人にフラれたのだ。別にフラれたというわけではないけど、恋は終わった。好きな人に、あゆに、他に好きな人がいるみたいだ。


「帰るか……」


 家に帰って、ご飯を食べよう。今日は親も姉もいないから、1人で気楽にご飯が食べられる。

 俺は、赤信号が青に変わったのを見て、あゆが走って行った方へと歩き始めた。


 と、その瞬間。


 キィィィ!!


 向かい側の交差点を車が、猛スピードで突っ込んでくるのが見えた。そして、そのまま対向車線を走ってきた車と衝突した。


 キキィィ……ドォォォォォォォォン!!


 大きな爆発音と、煙が一気に広がる。

 やっば。てか、ここに居たら危険だ。


 逃げよう。


 俺は、交差点から離れようと横断歩道を渡りきって……、


 え?


 目の前に車が現れた。


 その車は、俺もろとも交差点の1角、つまりショッピングモールの壁に突っ込んだ。そして大炎上した。

 

 何分経ったのだろう。

 俺は、崩れたショッピングモールの壁(瓦礫)の中にいる。身体が半分以上押し潰され、首から下の感覚がもうない。死んだな。俺。

 まさか、自分が死ぬことを自覚する日が来るとは。


《身体を作成中・・・必要な魂を確認しました》


 まぁ、この世界に思い残すことなんて無い。高校生活は、思っていたより楽しくなかったし、活躍する場なんて俺には無かったしな。

 唯一心残りがあるとするのならば、あゆに想いを伝えきれなかったことだな。


《意識の覚醒を確認。進化に挑戦・・・》


 と、いうか身体が押し潰されているのに、痛みとかは全く感じないんだな。あれか? 死ぬ瞬間はめっちゃ気持ちいいってやつか? どこかで聞いたことあるな。


《進化に失敗。不死の身体を作成します》


 なんだか眠たくなってきた。これが死ぬってことか……。思っていたよりも怖くないな。来世では楽しく過ごしたい。


《意志を確認。直接通話に切り替えます》


 と、いうかさっきから気になっていたんだが、この声なんなんだ?

 意志を確認? それかこれも死ぬときに聞こえる幻聴ってものなのか?


《颯真……颯真……聞こえますか?》


 暗闇の中で優しそうな声が聞こえる。いや、聞こえるというよりは、頭の中に語りかけてきているような。


《選びなさい。貴方はこのまま死ぬのか。それとも生きるのか》


 選べ? 生きるか、死ぬかって……? まぁ、無理だとは思うけど生き返れるなら、生き返りたい。


《分かりました。では、いってらっしゃいませ》


 ん? どういうこ……と……。


 眠気が……もう…………耐えられな………………





 暗い。何も視えない。何も感じない。

 あれから何時間経った?

 ここはどこだ?

 俺は死んだのか?

 確か、生きるか死ぬか選べみたいなことを、問われた気がする。じゃあ生き返っているのか?

 無数の疑問が、俺の頭の中を駆け巡る。

 とりあえず起き上がろう。

 あれ? 起き上がることが出来ない。いや、もう起き上がっているのか? 微かに足が地面に刺さっているのが感じられる。

 手も伸ばしてみようとしたけど、手がなかった。もしや、俺、人間じゃなくなってる!? 

 俺が、身体を左右に動かすと、


 ズボッ!!


 足元で何かが抜ける音がした。

 そのまま俺の身体は、傾いていっているのが分かった。よし、感覚がだいぶもどってきたぞ。


 カランッ カラァァン!!


 鉄の棒が転がったような音が聞こえた。音は聞こえるんだ。あと、背中が冷たい。俺が倒れて、仰向けになってるんだな。


 うん。


 俺もう、人間ではないらしいな。


 認めなくねぇ。じゃあ、俺これからどうやって生きてくんだよ。

 と、いうか俺、何になってんだ? 人間じゃなかったら、鉄筋にでも生まれ変わったのか?


 おっ! 目が慣れてきた。


 えっーーと。俺の身体は。硬く、でもちょっと柔らかい柄の部分。左右に伸びる金色の棒。そして、真っ直ぐ銀色に光る剣身。これは。


 剣だね。


 俺は剣に転生したんだね。

 認めた訳じゃないよ? 認めたくもないよ? でもさ……


「寄りにもよってなんで、剣に転生なんだよっ!!」


 あのさぁー。転生って言ったら、勇者とか、魔王とかもっと……こう……良い者になれるんじゃないの? 剣って、なんにも出来ないじゃんっ!! このまま人が通るのを待つ以外、動けないし。というか、動けるのか?


 俺は身体を起こそうとしてみた。ま、動けないよね。はい。転生した瞬間、動けなくて詰みましたーー。


 おしまい。


 あーーーー。絶望とは、このことを言う。こんなことになるんだったら、大人しく死んどけば良かったな。これ以上の絶望なんかないだろ。動けない上に、意識はあるとか、5億年ボタンより酷い気がするんだが。

 誰かーー!! 助けてくれぇーー!!


 ま、誰も来るわけ無いか。


『ようやく見つけました』


 ん? なんか聞こえた。

 すると、俺の目の前に光り輝く女の人が現れた。光で顔は見えないが、雰囲気がただ者じゃない。


「貴方をお待ちしていました」


 え? 俺を待ってた?

 ってかアンタ誰?


「私は、大賢者ユーフィミア、七大神戦士(セットエラクレア)が1人です」


 七大神戦士(セットエラクレア)


七大神戦士(セットエラクレア)とは、2500万年前に超星帝王(エンペラー)と戦い、勝利し、世界を創造した7人の神の戦士たちです」


 世界を創造した? 神?

 ってか、なんで俺、喋ってないのに会話できてるんだ?


超能力(エクストラスキル)念力通話(テレキネシス)です。貴方は転移したときに既に獲得しています」


 そういえば転生する前に、変な声が聞こえてたな。

 覚えてないけど。


「神は、この世界を創造した際にいつか闇が復活すると悟り、私をこの世にとどめなさったのです」


 そこから2500万年も生きてきたのか?


「私の肉体は既に2500万年前に死んでいますが、魂がこの世に残っていますので、生きながられることが出来ているのです」


 ふーん。本当に俺、転生したんだな。

 こうして、俺はただの高校生から、剣へと転生し、大賢者ユーフィミアと運命の出会いを果たしたのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ