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第1章 第4話 詐欺のきっかけ

「私、真影くんに助けてもらったんだよね。3年くらい前かな。店を出し始めた時にこの辺を取り仕切るヤクザに目をつけられてね。ショバ代、ってやつ? 払わないと追い出すぞって言われてさ。で、店出し始めて金がない私は困ってたんだよ。その時、声をかけられた。まだ中学生の子どもが助けてやるって。で、それから1週間後。そのヤクザは組の金に手をつけたとか何とかで消えていた。それからだよ。この子に逆らえなくなっちゃった」



 廣瀬の髪を整えながら根尾が説明する。ずいぶん好意的な解釈だが。



「俺はいい獲物を見つけたから金を毟り取っただけだよ。助けたのはそのついでだ」

「そう言って私が取られた分は返してくれたでしょ?」


「そっちの方が気分がいいからな。良いことをするのは良いことだ」

「ばっかみたい。詐欺師のくせに感情優先なんだから」


「詐欺師だからだよ。人間なんて理性よりも感情で生きる生き物なんだから。気持ちのいい生き方をするのが一番だ」

「君と話で戦うつもりはないよ。勝てないからね」



 後ろのソファーに座りながら根尾と話していると、鏡越しに困惑している廣瀬と目が合った。



「つまり……先輩は良い人……ってことですか?」

「……ぷっ。あははははっ」



 それを聞いた根尾が大きな笑い声を出す。失礼な奴だな。



「良い人? 良い人のわけないじゃん悪人だよ悪人! どうしようもない悪人だよ! たまたま今その矛先がこっちに向いてないだけで、結局は人を騙す生き方をしてるんだから。悪人に決まってるよ」



 廣瀬の困惑が強くなり、俺もため息をつく。まぁその通りだからいいが。



「先輩は……なんで詐欺師なんてやってるんですか?」

「詐欺やる理由なんて一つだろ。金がないからだよ。うちの両親がカルト宗教に嵌っててとにかく金がなかった。確か小学1年か2年くらいかな……。その時流行ってた消しゴムがどうしてもほしくなって、家に来てた宗教の関係者と話して金をもらった。次はおいしいごはんが食べたかった。服がほしくなった。その度に宗教関係者に金をもらった。気づいたら宗教団体は潰れていて、親はいなくなっていた。その代わりに金があった」



 廣瀬の顔を見ながら話していく。どんどん顔に陰りが見えてくる。たぶんこいつは良い人なんだろうな。良いカモだ。



「まぁ金なんて今はほとんどないけどな。悪銭身につかずって言うだろ? 今は親もいないから生きるために詐欺を続けている。悪人しか狙わないのは変わらないけどな。まぁ悪人か善人なんて個人の価値観でしかないから結局は俺も悪人なんだろうが……」

「……わたし、お金なんてありませんよ……」



 あぁそういう意味か。まぁ二重ではあるんだろうが。言葉を返そうと思っていると、先に根尾が口を開いた。



「そこは気にしなくていいよ。あなたが考えるべきなのは、真影くんに心を許さないようにすることだけ。本当に気をつけないと、地獄を見るからね」



 まったく。せっかく心を許し始めてきたのにこれで元の木阿弥だ。まぁでも、逃がすつもりはないんだが。

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