七
魔力は大幅に削られるけど空間転移を発動して幾つか国を挟んだとある国へとひとっ飛び。
そしてその足で向かったのは冒険者ギルド。
「たのもー!!」とばかりに新人受付へと真っすぐ進み、
「冒険者登録をお願いします」とにっこりと微笑めば受付のおねーさんに目をぱちくりされながら上から下まで眺められた。
ま、高位令嬢感丸出しだしね。
装備すらないドレス姿だし??
「えっと…ご依頼でなく?」
そっと依頼窓口を手で示されるものの
「冒険者登録です」
にっこり返す。
周囲の揶揄い混じりの言葉も全てスルーして、しどろもどろなおねーさんの説明をふんふんと聞きささっと登録。
「さっそく迷宮に潜ります」
えっ?マジでっ?という顔をもはや隠そうともしないおねーさん。
この世界の迷宮は入口は一つなのに中は異次元っぽい感じ。
どう異次元かっていうと、同じ迷宮に入っても中で他の冒険者と遭遇することがない。
ボスだって誰か他の冒険者が倒したとしても、別の冒険者が迷宮に入ればそこにはまたボスが存在するし、宝箱なんかも同様。
一つ例外があるとすれば、
迷宮に入る際に特殊な契約を交わしていればそれを辿って同じ迷宮内部に進むことが出来る。
これはまぁ、一種の安全措置みたいなモン?
同じ迷宮内部に辿り着けないってことは救助は勿論、中で不幸が起こっても遺体の回収とかも出来ないからね。
んでー、
貴族とか大商人の子供とか中途半端な冒険者って大抵この契約するんだよね。
そんで大体中で遭難したり怪我したりして、救助呼んで迷宮内部に大捜索が入ったりする。
それなりな金積まれてるわけだしギルドとしても断れないけどとっても面倒なお客様たちなわけですよー。
そういう奴らに限って自分の力量無視して無茶な迷宮に挑んだりするからね。
しかも助けてやったのに「来るのが遅い!」とか文句つけてきたりするそうだし。
お仕事とはいえ、やってらんねーって話ですよね。
だからおねーさんの反応もわからないでもないんだけどね…。
「あ、契約は要らないので。
迷宮に潜るんだし、何があっても自己責任で大丈夫ですよ!」
(面倒な奴らから逃れるために迷宮行くんだからそんな契約したら探しに来られちゃうしねー)
因みに、契約がなくっても一日に一回夜の時点で迷宮内の冒険者の位置情報をギルドでは確認出来るので生存確認は可能。
生存は確認できても契約なしだと何も出来ないけど。
あと迷宮内部から簡単なメッセージのやりとりを出来る道具(めっちゃ高価)もあるけど勿論そんなものも持っていく気はナッシング!
自己責任、といったにも関わらず迷宮の危険性とか不便さとかこんこんと説明してくれるおねーさん。
きっと世間を知らない小娘を思いとどまらせようと必死なのだろう。
優しくていいおねーさんだ。
「大丈夫です。本当に全てわかった上で決めたので」
何とか説得し、漸く折れてくれたおねーさんがお決まりの言葉を口にした。
「どの迷宮に潜られますか?」
「《最悪の迷宮》へ」
おねーさんを始め、話を聞いていた全ての人たちの口があんぐり開いた。