五
「っせぇーのっっ!!てぇやぁぁー!!?」
豪快な声をあげながら剣を振りぬく。
もはや握っているのはバッドでホームランでもかっ飛ばそうとしているかのようなそれは見事なフルスイングだった。
わらわらと蠢く数匹の魔物。
ゴブリン、スライム、他にも数種。
それは見るからに魔物といった風体をしていた。
但し、ドット絵調。
振りぬかれた棍棒を交わし、顔面へ向かってハイキックを叩き込んだ。
モロに入ったそれに魔物が吹っ飛び、チャラーンというポップな音と共に消えた魔物が居た場所には輝く金貨が数枚出現していた。
キックにパンチに、剣を振り回し魔物を殲滅したファウスティーナは金貨やアイテムを拾い集め、周囲を軽く探索して宝箱などがないか確認し終えるとパチンと指を鳴らした。
「サントゥアリオ・デッラ・サンタ・カーザ」
謳うように唱えれば、突如として出現した洋館風の小さな家。
因みに、唱えた言葉は“聖なる家”を意味する。
当時前世の記憶を思い出し、絶賛不治の病が発症していたファウスティーナが「恰好いい」と思って付けた名だ。
今でも恰好いいと思わなくもないがいかんせん長い……。
舌噛みそう。
華奢な取っ手に手をかけ、ドアを開く。
その時、背後に現れた魔物が炎の攻撃を放った。
だが、その攻撃は見えない何かに弾かれ、何事もなかったように扉はしまった。
※
玄関で靴を脱いで室内に上がる。
髪を一つに束ねていたゴムをほどき、シャワーを浴びようかどうか少しだけ迷って汗もかいてないしと後で入ることにして服だけ着替える。
さて、何を食べよう?
迷ってインスタントラーメンでいいかと鍋に水を入れて火をかけた。
食事を終え飲み物と軽いお菓子を用意してテレビの前へと戻る。
ん~、見たい番組ないなー。
どうしよう??マンガでも読む?
それとも溜まったDVDでも消化する?
あ、そういえばこの前のライブ映像も見てないかもと棚をがさごそ。
労働基準法も何もあったもんじゃない、訴えたら勝てる!状態だった数日前からは考えられないような生活だ。
最高すぎる!!と幸せを深く噛みしめる。
あの日、断罪されたファウスティーナが真っ先にしたことは……。