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「≪最悪の迷宮≫? いいえ、≪至高の楽園≫です!!」~元皇女は引き籠り生活を満喫しつつ、無自覚ざまぁもしていたようです。~  作者:
愚か者たちの末路

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皇帝



何故、こんなことになった?


薄汚れた壁に手を付き、ふらつく身体を支える。

()えた臭いが鼻をついた。


薄暗い路地には幾つものゴミが散乱していた。

陽の差さないそこには昼夜を問わず淀んだ空気が充満し、目に映る何もかもが汚らわしい。


ゴミを漁り、食す子供。

半裸に近い恰好で男たちの手を引く娼婦。

飢えた野犬の目をした男や、ぽっかりと空いた闇のように濁った目をした男たち。


そして、

()()()()()者達。


飢餓に薬、果ては暴力の末に人であることを失った屍が蹲り、救いを求めるように手を伸ばしこと切れて虫に纏わりつかれている。


そんな、地獄絵図の様な世界。

そんな中に自分は居た。


暴れ、叫んでもどうにもならなかった。


卑しい女との間に生まれた汚らわしいあの男が厚顔にも玉座に腰かけ、城の重鎮も兵も誰も私を助けようとしない。

そんな狂った世界で与えられた選択肢。


他国の誰かに引き渡される?

そんなものは論外だ。


私は皇帝で、国も、民も全ては私の所有物(モノ)

誰よりも尊く、偉大な私が()()所有物(モノ)になるなどあっていいはずがない。


牢の中で生涯を過ごすなど……考えられる筈もなかった。


苦渋の末、選んだ選択。


腹立たしいことこの上なかったが、仕方がなかった。

高貴な私が下賤な者達の暮らしに紛れるなど考えただけで身の毛がよだったが、それでも他の二つよりもマシだと思った。

多少の苦労はするだろうが、自由に勝るものはない。


それに、時間が過ぎればわかるだろう。

私の存在の偉大さに気づき、自らの犯した過ちを恥じてきっと私を呼び戻す筈。


豪華とは言い難い馬車で何日も揺られ、供の1人も付けずに放り出された小さな国。

私財を持ち出すことも許されず、小さなナイフと僅かな小銭だけを残し無情にも馬車は去って行った。


街を彷徨い、無礼な下民どもに紹介された宿は部屋が二間しかなく質素なベットと椅子に机しかない小汚い部屋。夜になっても部屋に食事が運ばれることすらなく、自ら出向いた階下で出されたのはパンとスープとチキンを焼いただけの犬のエサのような粗末な食事。


だが、そんな生活さえ三日と持ちはしなかった。


「金がないなら野宿でもしな」


侮蔑的な言葉に無礼者に殴り掛かれば、いつの間にか殴られていたのは私の方だった。

高貴な私の血が流れているというのに、誰も助けないどころか「先に手をだした」と取り調べを受ける始末。


「私は皇帝だ!!」


何度も叫んだその言葉に、ついには「頭がイカレてる」と放り出された。


全てが狂ってる。

何もかもが、狂い果てている。


あれから、どれだけたったのか。


ズキズキと痛みを訴える身体。

足が、身体が、引きずるように重くて堪らない。


漂う異臭が自分から放たれる臭いだと気づいた瞬間の衝撃。


手も足も顔も、何もかもが汚れ果ててドス黒く、ざんばらになった髪は汗と皮脂でところどころよくわからない塊のようになり果てている。


立ち止まった道端、配水管が壊れて出来た水溜りに映った自分の姿に息を呑んだ。


汚らわしい、みすぼらしい。

これは ダレだ?


頬を伝った雫が真っ黒な顔に一筋の道筋を描いた。


「ああ……きっと、全部夢だ」


はは、は、はと歪な声が喉をついた。

引き攣れるように、叫ぶように、笑いが込み上げて腹を掲げて笑い転げ、腕を広げて空を見上げる。


路地の隙間から僅かに見えた空は、切り取られたかのように晴れ渡る青い空。


ほら、全部が可笑しい。

何もかも、 狂ってる。


笑って、笑って、笑い続け、疲れ果てて壁に背を預けた。

ズルズルと沈む背に任せ、路地裏に手足を投げ出して座り込む。


「全部全部悪い夢に違いない」


だからもう 目を閉じよう。



目覚めたらきっと 正しい世界が戻ってるに違いないから________。



典型的な楽な方に流されやすいタイプ。

傀儡政権にうってつけ!

傲慢だけど気は小さいから、アイツらの中ではまだまともな方?典型的な小悪党。

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[一言] 最期まで傲慢やねえ
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