三十六
そして、三日後。
「ご無理をなさいませんよう」
「結婚式には絶対ご出席くださいね、お義姉様っ」
別れを惜しまれながらファウスティーナは城を後にした。
空間転移でぴぴっと転移。
あー、やっぱ空間転移ラク!!
一瞬で辿り着いた懐かしの地に、ファウスティーナは心からそう思った。
なんせ馬車だと二週間近くかかったからね。
迷宮は恋しいわ、国の使者は国の惨状だの何だのベラベラベラベラうっせぇは……超苦痛だった。
検問をさっさとクリアし、向かう先はもちろんギルド。
「たのもー!!」とばかりに突っ込むとおねーさんが「ファウスティーナさんっ!!」と笑顔を輝かせて迎えてくれた。
周りの職員さんや冒険者さんも笑顔で出迎えてくれる。
いつの間にやら有名人ー。
「ご無事で良かったです」
「ありがとうございます。クズ共は成敗してきました。今は異母弟が皇帝です」
ファウスティーナの言葉に喝采が沸くが、一部のファウスティーナを知らない冒険者は突如出てきた皇帝の名にギョと眼を見開いて辺りをキョロキョロ。
「早速ですが、≪最悪の迷宮≫へ潜ります」
満面の笑みでギルドカードを差し出したファウスティーナに「はっ?!冒険者っ?」と一部の冒険者は二度見のち大混乱。
王城から直行したファウスティーナは豪華なドレス姿の絶世の美女でとてもでないが冒険者には見えない。
ベテラン冒険者がそんな大混乱冒険者たちの肩を「わかる、わかる」と豪快に叩く。
「また、≪最悪の迷宮≫ですか?」
「はい、楽園なので!!」
「「「楽園?」」」全員が頭にハテナマークを浮かべた。
意味がわからないながらも、中には超絶美女のファウスティーナに下心を持って声を掛けてくる冒険者が多数いたが「ごめんなさい。私、ソロ派ですし、愛しのダーリン(迷宮)いるんで!!」にっこり笑顔のファウスティーナにあえなく撃沈。
「また長らく潜られるのですか?」
処理を終わったカードを差し出しながら問いかけてきたおねーさんには軽く首を振る。
「いいえー。今回は短めですかね。でもまた潜りますけどね」
何せ、面倒事が解決した今、気軽にシャバをうろつける。
引き籠りは続けたいが、ふらっと外に出て、また帰る。そんな生活が可能なので。
そんな生活を続けて一年。




