二十七
「……ファウスティーナ…なのか…?」
そうよ、ファウスティーナ様ですよー。
呆然とした一同の視線と、兄であった皇帝の声を聞きながらファウスティーナは外面を取り繕う。
「随分と、美しくなったな…」
思わず、といった風に零れた言葉に僅かに唇を釣り上げる。
「勿体ないお言葉です。皆様はお変わりあられぬようで」
しおらしくそんな言葉を口にする。
もちろん嫌味ですが何か?
だって実際、顔はまぁまぁいいままだけど皆けっこーお変わりあるもん。
明らか老け込んでるし、疲労の色も隠せてなければ荒んだ感じがまざまざとする。
そしてチラリと正妃の胸元に目をやった。
相変わらずのデカ乳。
だがしかし!!
ハリを失ったそれは確実に以前よりも形が崩れていた。
ふんっ、胸は大きさじゃないんですー。
デカい胸はなぁ、垂れるんだよっ!!!
ドヤッとばかりに胸を張った。
一瞬の攻防、男性陣には伝わらなかったようだが正妃にはばっちし伝わったみたいで手元の扇がミシッと音を立てた。
あら、怖いお顔ー。
そんな口元引き攣られせちゃうと小皺が目立ちますよー?
増えましたね、小 ・ ジ ・ ワ。
元々私の容姿が妬ましかった正妃は再会した時からすっごい視線を向けてきてる。
視線に攻撃力があったらぐっさぐさの惨殺死体が出来上がりそうなぐらい。
そして騎士団長や宰相を含め、男共の欲を含んだ視線も鬱陶しくて気持ち悪い。
ああ…迷宮に帰りたい……。
「良く戻った」
何その広げた両手??
飛び込むとでも?
兄妹の感動の抱擁のつもりですか?
しませんよ??
そもそも私、テメェに冤罪で断罪されたんですけど。
もう家族でもなんでもないから。
赤の他人より遠いっていうかテメェらみんな嫌悪の対象ですから。
はぁ、と溜息を一つ。
それに驚く一同。
まぁ、ね?
いい子ちゃん時代の私はこんな人を小馬鹿にした態度見せなかったもんね?
「寝言は寝て仰って下さいな。
私を断罪したの貴方でしょう?皇帝陛下」
敢えてお兄様でなく皇帝陛下と他人を強調。
「拗ねておられるのですか?
確かにあの時は申し訳ありませんでした。
ですが全て理由があったのです。陛下も私たちも皆、騙されていたのです」
はぁ?
拗ねてる?
正当な反応ですけど?!
むしろめっちゃ怒りを堪えて大人な対応してますけどっ?!!
えっ?本能のままに荒ぶってみせた方がいいの?
そうしないとこのバカたちには伝わらない?
こっちは後始末が面倒だから必死に穏便に終わらせようと自分を抑えまくってんですけど。
眼鏡割るぞコンニャロウ!!
そして唐突に始まった演説。
題して、 「 ~神子に騙されていたこの国の悲劇!!~ 」
………。
………………知らんがな。




