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「≪最悪の迷宮≫? いいえ、≪至高の楽園≫です!!」~元皇女は引き籠り生活を満喫しつつ、無自覚ざまぁもしていたようです。~  作者:
本編

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二十六

冒険者ギルドにて



「本当に、ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」


絶対自分は悪くない。

そう思いつつもファウスティーナは頭を下げた。


何故なら自分は悪くないが、迷惑を掛けられただろう目の前の相手たちだって絶対に悪くないからだ。


「いいえ。ファウスティーナさん…あっ、ファウスティーナ様の所為ではありませんから」


笑顔で首を振ってくれるのは親切なギルドのおねーさん。


あの頃よりも大人びたおねーさんがチラリと視線を向けた先には、懐かしい祖国の制服を着た男達。


うん、悪いのアイツらだよね!

もっと言うとアイツら遣わせたクズ共!!


何はともあれ、ギルドの皆さんにはご迷惑お掛けして大変申し訳ありませんでした。


私の居場所が判明してから毎日来てたとか……正気なの??


もう10年経ってるんですけど…。

最初は探されるだろうなーって思ってたけど流石にもう私のことなんて忘れてると思ってたわ。


「ファウスティーナ様っ!!」


呼び掛ける男どもをおねーさんたちと睨む。


うっせー、迷宮踏破の手続きして貰ってんだから黙ってて。


そしてやたら周囲の注目度が高い。

「あの子が…」とか「めっちゃ美人」「冒険者?」「迷宮帰り…?え、嘘だろ……?」みたいな囁きがめっちゃ聞こえる。


国から派遣された男達が毎日バカの一つ覚えみたいに「ファウスティーナ様はっ?!」って連呼してたみたいで名前もめっちゃ浸透してて知らぬ間にかなりの有名人。

全然嬉しくない。


迷宮帰りな冒険者ってことにはおねーさんをはじめ、あらゆる人たちに驚かれた。


まぁ、そりゃそうだよね。


服装の違和感にしか気を払ってなかったけど…迷宮帰りともなれば普通薄汚れてるよね。

ましてや10年も迷宮に潜ってればまともな食事もとれずに薄汚れてやつれた浮浪者みたいになって戻ってきても可笑しくないと思われてたっぽい。


毎日お風呂入ってたし、ご飯もデザートも頂いてましたけど??


美容ケアもバッチしだし、年頃の女の子として身嗜みは譲れません。



「早く国にお戻りに…」


だーかーらー、うっさいってばっ!!


手続きの終わったギルドカードを受け取り、振り向いたファウスティーナは冷ややかに男達を見据えた。


「お戻りに??

可笑しなことをおっしゃいますのね。私はもうあの国と何の関係も無い筈ですが?

確かに私はあの国の皇女でした。

ええ、十年前までは。

ですが兄であった皇帝陛下に断罪され、もう皇女でもなければあの国の国民ですらない今やただの冒険者ですわ」


「あれは間違いでした。

陛下はファウスティーナ様を元のお立場にお戻しになられるおつもりです。

ですのでっ」


「はぁ”?」


あらいけない。


男の言葉の途中で思わずドスの効いた声が漏れてしまい慌ててにっこり笑って口元を抑えた。


ここはシャバ。


楽園(迷宮)と違って人目があるんだからちゃんと取り繕わなきゃ。


「元の立場に?それはつまり……、

年齢が二桁に満たない頃からロクに働きもしない周りの人間たちの尻拭いの為に寝る時間もそこそこに働きづめて、仕事をしろと正論を告げれば疎まれ嫌味を言われ、下世話な誘いをかけてくる男どもをあしらえば腹いせに嫌がらせをされる哀れな皇女へお戻し下さるということ?」


おぉぅ、周りの皆さんの冷たい視線に男達が気まずそう。


ざまぁ。


労わるように肩にそっと手を置いてくれたおねーさんは相変わらずいい人だ。


「まぁ、いいわ。連れてきなさい」


腰に手を当てて告げた私の言葉に一同がギョッとした顔を向けてきた。


確かに今の流れはどう考えても断る流れだったしね。


「ファウスティーナ様っ?!」


「“様”は要りません。私はただの冒険者ですから。

それに別に戻る気なんてありませんよ?

ただこのままってわけにもいかないでしょう?

なんせ鬱陶(うっとう)しいからって冤罪ふっかけて断罪してきた癖にこうして十年も付き纏ってくるような方達ですから。迷惑ですしきっちり話をつけてきます」


そう言っておねーさんへにっこりと笑う。


こいつらに此処に居座られても迷惑だしね。

今後もこのギルドにはお世話になる予定だし。


……むしろ、こいつらが10年近くも毎日通ってたとか本当にごめんなさい。


冒険者の皆さんボコっちゃってよかったのに…。


えっ?

何度か揉めてボコった?


全然問題ないと思うよ!!

ウザかったんだよね、仕方ない、仕方ない!!


そうして心配して引き留めてくれるギルドの皆さんの見送りを受け、ファウスティーナは馬車へ乗り込み忌々しい祖国へと向かった。


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[一言] どう破滅するか楽しみ
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