二十一
※ in 迷宮
「……あっ…あぁっ…ん、あんっ!…んぅ…」
痛みすら感じる快感に身悶えする。
びくびくと震える身体に寄せられた眉根が刻むのは苦悶と恍惚。
痛みと快感は時に紙一重。
「くぅぅっ~!!…さいっこう!!!」
手にした缶をぐっとあおった。
くびくびと喉を鳴らして空にした缶を乱雑に机に置く。
そしてすぐさま隣に置かれた冷え冷えでうっすらと水滴を纏っている缶のプルタブを開ける。
フットマーサージ機の威力はMax。
振動マッサージがふくらはぎを揉み込む度に声が出るほどの痛気持ちよさ。
だが、これがいい!!
きゅうぅっと締め付けられながら悶絶する。
愛用のフットマーサージ機は現在、三代目。
若き三代目は単調な揉み込みだけでなくぐりぐりとした球体での刺激も加わり、その威力と性能は先代たちを凌ぐ優秀さ。
そして手にした缶の中身は……。
ジュースでなく正真正銘のお酒。
前世の記憶を思い出してから絶っていたお酒だけど、数年前から解禁。
何故なら20歳を超えたので。
缶を握ったのとは反対の手で美顔ローラーをくるくるしつつ、頬を上へ上へと押し上げる。
止まったフットマッサージ機から足を抜いて、美顔ローラーを置き代わりに鏡を引き寄せた。
卓上用のメイクスタンド。
その小さな円形の中に映るのは……。
ものすっごい美女!!!
艶やかで絡まりなどまるで知らなそうなさらっさらの髪。
透明度の高い瞳にこれがエクステでないなんて信じられないぐらいのばっさばさの睫毛。
手触りのよさを一目で感じさせる肌は白く柔らかで、
小作りな顔にバランスよく配置された目鼻立ち。
以前よりふっくらとした唇は可憐さとともに色気を湛え、
何より纏う雰囲気に大人っぽさと艶やかさが増した。
清楚なイメージでありながら、仄かに香る大人の色気。
鏡を見つめながらほぅっと思わず吐息が漏れた。
「美人…」
ナルシストと笑いたければ笑えばいいわ!!
前世の普通レベルを思い出したからこそ感じるこの世界の顔面偏差値の高さ。
その中でも正しくトップレベルに入る美貌は自分の顔だろうと見惚れるレベル。
『若いから大丈夫とか思ったら大間違いだから!!
崩れてからじゃ遅いのよ!!!
潤いとハリは失くしてからじゃ取り戻せないんだから!!』
そうどこかで叫ぶのはきっとかつての自分。
前世それなりの年だっただろう自分の中の自分が告げるままに、10代からスキンケアも欠かさなかったのだ。
因みに……。
胸は、残念ながら巨乳とはならなかった……。
それなりには成長したけども………。
べ、別に小さいわけじゃないんだからねっ?!
寄せて上げて固めればそれなりにあるんだからっ!!!
誰にともなく言い訳しつつ、自分はスレンダー派なのだと言い聞かす。
こうして立派に大人になったわけですが。
「私も、もう24歳とはね…」
実は、迷宮入りして早9年が経過してました。
先日、改めて気づいてびっくらこ。
もうすぐ10年じゃん………。
10年近く引き籠ってたのか自分…。
軽くひいた。
でも冒険者活動してるしニートじゃないよ。
ちゃんと仕事してるよ!!
思い起こせば、迷宮周回も2周目をとっくにクリアし、(※ボス部屋のボスは元気に復活してた。また倒したケド)もう6周?…いや7周??もはやよく覚えてない。
復活したボスも金貨や経験値は手に入っても討伐報酬は初回のみだったし、宝箱は一度GETしたものは空のままであらかた財宝も手に入れ尽し、迷宮内部も自分の庭レベルに覚えてしまって散策も飽きてきた。
やはりこれは………。
「そろそろ一度、外に出てみようかしら」




