08 騒音、喧騒、回復薬
今日は7、8話連続してあげられました!
日本で言うところの、タクシーのような役割を果たす辻馬車に乗り込み、王城近くの演習場へ向かった。
以前お兄様達にファルマン様は変態だから普段演習場にいる事が多いと聞き、そこへ向かうことにした。
いまいち変態だからの意味がわからなかったが、お兄様達は奇人変人変態と枕詞のように使うので、もはやツッコミはしない。大概はファルマン様の事を指している。
手の中でクシャクシャになった今朝届いた手紙の封を切ると、そこには「また会いたい」その一言が記されていた。
きっと会いにいっても無碍に扱われる事はないだろう。ほんの数秒、言葉を交わすだけだ。
今日がダメならば明日、明日がダメならば明後日伺えばいい。手紙を出して予定を伺ってそれから準備立てて会うことも、もちろんできる。
しかしどうしても気持ちばかりがはやり、居ても立っても居られない気持ちになったのだ。
王城より程近くに広大な演習場がある。
王城からは門や関所はなく、直接入れるが、外部から入ろうとするとそうはいかない。
外部の者も多く立ち寄ることから、関所のような場所が設けられ、そこで検査を受けてから入っていく。
そしてようやくその奥に大きなドーム状の建物が聳えている。そこが騎士達が日々鍛錬を行なっている演習場である。
言葉では聞いたことがあったが、いざ赴いてみると、思っていた以上に広く、大きく、また人が多かった。
随分と年若い女性も居るようで、なんとも居心地が悪い。
コソコソと検問が行われている場所へ行き、受付をしている兵士に声をかける。
「どのような御用でしょうか?」
「あの、すみません、ファルマン・ルフトクスト様はいらっしゃいますか?」
「ええ、と...見学、と言うこと......でしょうか?」
「友人、なんですけど」
「それは...」
「えっ?」
ファルマンという名前が出ると途端に歯切れが悪くなったが、さらに友人、と言う言葉が出た瞬間、シン、と急激にその場が静まり返る。
受付の兵士も訝しげに眉を顰め「友人、ですか...」とジロジロと上へ下へと視線がうろつく。
「なんですの?ご友人ですって?」
「あの人が?」
「ファルマン様に女性のご友人が?」
「そう言って会おうとしてるのよ厚かましいですわ」
「まぁ、なんてこと。」
「そんな嘘までついて恥ずかしくないのかしら」
「っ、いえっ!見学です!見学!」
突然静かになった空間での陰口はコソコソとしていようが随分響いて聞こえた。ハッとして早口で捲し立てるように訂正する。
きっとファルマン様の姿を見ようと来たのだろう、ドレスを身に纏った御令嬢達がちくちくとした視線を寄越してくる。
顔から火でも出るんじゃないかと思うほどの羞恥が込み上げて、つい大声で言ってしまった。
決して嘘でもなんでもないのだが、自分がズルをして会いたくて仕方がない人のように見られるのが堪え難かった。
「あー、っと。見学、でよろしいですか......?」
「はい! あ、はい......それでおねがいします......」
「そうですか。では持ち物を確認させていただきますね。よろしいですか?」
「もちろんです。どうぞ」
はい、と出された手の中に肩にかけていた小さな鞄を預ける。
「拝見いたしますね。財布、時計、っと、あと回復薬が二つですね。問題ございません。」
回復薬。つまりポーションというやつだ。
この言葉を聞くと、随分ファンタジックな感じがしてくるが、ここは魔法も有れば魔物も出るのだ。間違いなくファンタジーな世界なので、かなり重要なアイテムなのである。
回復薬には2種類存在して、魔法を使うための力を回復するための薬と、体力の回復をはかる栄養剤や、直接かけて怪我の回復にも使ったりする万能なポーションが存在する。
貴族の人達は基本的には従者に持たせていることが多いが、私は自分で持って歩くようにしている。
前世での絆創膏を携帯する感覚に少し似ている。
この世界の女性は料理や裁縫の前にまずはポーションを作れるようにするのが常識らしい。
誰でも手に入れられるもので出来ているので、平民も貴族も基本的には誰もが作ることができる。
私も例に漏れず、言葉の習得と同時に練習した物だ。
「...いい色の回復薬ですね。素敵な色です。ご自分で?」
「ええ。回復薬は得意なんです」
「回復薬は人柄が最も出ると言われておりますね。どうぞ、ゆっくりご覧になっていって下さい」
ポーションを褒めてくれた兵士は何故か残念そうに肩と眉を落とした。
なぜ......?
隣で様子を伺っていたもう1人の門番の兵士がポンと肩を叩いているし、何が起こっているのかさっぱりわからない。
戸惑いながら「ありがとう」と鞄を受け取ると、中へと続く門をくぐり、大きな建物が現れた。
大きなドームのような建物は、天井が一部ポッカリと空いている半分野外のようになっている建物で、周りが壁と二階席程度の高さに設定されている見学席でぐるりと囲まれている設計になっているようだった。
適当な位置に腰をおろし、周りを見渡すと、随分と人で埋め尽くされているようだった。
年若い女性から、兵士のような人達、騎士の集団。
見学に来たのか、騎士を目指す学生達。ギョッとするほど大勢集まっていた。
これから何か大会でも開かれるのではないかと思うほどの熱気がそこにあった。
下を見下ろせば、広々とした広場のような作りの荒れた土地に、数十人の騎士たち、色とりどりの服を着ているのでこれはいろんな騎士団の人が混ざって演習をしているのだろう。
一際、女性達の声援や、騒音、そして土煙が上がっている場所があった。そこはより一層の熱気に満ちている。
よく目を凝らすと、そこには土煙から登場する二刀を構えたジャンドールお兄様と、サーベルを構えたファルマン様の姿があった。
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説明臭すぎるので、書こうか迷った設定の話
※ ポーションについて補足
色によって人柄が出る。
現在、巷では流行りの劇や本であなたに興味がある、やひっそりとした告白としてポーションを褒める。ポーションもらえたら成功。
流されたらそこで振られたことになる。
っていうのがこの国で流行ってます
ティナはかなり外界から切り離されて、かつ自分から切り離して生活しているので知りません。
ティナパパとかは知ってる。
という設定のもと書いております。
数ある小説の中から、この小説を読んでくださりありがとうございます。
本日ではじめて投稿した日から8日目です。
誰にも読んでもらえないかも、と覚悟をしておりましたが、たくさんの方が読んで下さり本当に嬉しいです。
拙い文章、読みにくい箇所も多いかと思います。
なるべくしっかり伝えられるよう頑張って書いて参りますので、今後もよろしくお願いします。
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