【番外編】私のおかしな友人【ジル第二王子】
誤字脱字のご指摘、大変ありがたいです。気をつけているつもりでもたくさん間違ってしまっていて申し訳ないです。
私には大層おかしな友人が1人いる。
1人しか居ないだと?馬鹿言え。1人も居るのだ。我が父親よりも居る。兄上はどうだか知らんが、多分居ない。
王族は孤独なもので、自分と近い存在に会えれば御の字。友人だなんて死んでも無理と言われてしまう人種だ。権力、金、地位、名誉、行き着く先なんてものは所詮泥沼。生きながらに死に、死に向かいながら生きている。それも真っ直ぐに地獄へ向かっている。そんなものは真っ当ではない。
だから私に友人が出来たことは幸運な事だった。人脈の作り方、人間の操り方。人を束ねるに必要たるカリスマ性のなんとやらを学べと放り込まれた学園の中で、たまたま孤独な変人がちょこんとそこに座っているではないか。
私にこれっぽちも興味のない貴重で喜ばしい人間が目の前に現れて心が躍った。これは恋に落ちたと表現しても良い。
野暮ったく伸ばされた髪に手入れが行き届いていない指のささくれにひび割れ。カサカサの唇。
そのくせ、誰もが目を奪われる美しさを持つこの男の名前はファルマン・ルフトクスト。
この男は実に面白く、愉快だった。
「おい、お前この私が声をかけていると言うのに何という顔をするんだ」
「すまない。元々こういう顔なんだ」
「違うそうではない」
「? 何か御用でしょうか。ジル王子」
「そういった他人行儀もよせ......疲れる。こんな場所でも堅苦しい真似はされたくない」
「はぁ」
ファルマンは、暇さえあれば教室中の人間を観察していた。
女を見つめ、そして男を見つめる。
じっくり観察した後に、ゆっくり私に向き合って、じぃ、と隅々まで観察された。
「おい、気味が悪い」
「そうか。すまない。癖だ」
「余計悪いわ」
怒鳴ろうが、貶そうがどこ吹く風でいつも何か物思いに耽っている。
根掘り葉掘り聞くのも気が引ける。それに趣味が悪い。そう思い、しばらく無視をしていたが、そろそろ我慢の限界だった。
「貴様......良い加減にしろよ」
「何をだ」
こいつ......
どうも、人をじっと見つめることで何かを思い出すように考える癖があるのか、本当に不躾に誰でも彼でもジロジロと見るのである。
こんなことはまだ学生であるからギリギリ許されるだろうが、あと数年もすれば失礼な変態変人の出来上がりである。なまじ小綺麗な顔を持っているが故に、変態や助兵衛とは言われはしないだろうが気味が悪い事には変わりない。
女性にも変な気を持たすことだろう。
コソコソと聞こえる声に耳を傾ければ、ほれ言わんことか。
「ファルマン様がわたくしを見てる!」
「は? わたくしですわよ」
「ちょっと、私でしょうが。勘違いも程々にしときなさいよ」
罪深き男ファルマンよ。
この清き変態野郎め。
「何故そうジロジロと人を見る?そのように舐め回すように見ては失礼だろう。殴られるぞ」
「そうなのか......? すまなかった......直そう」
誰か教えてやれ。この歳まで何も言われないのはキツいぞ。いくらこの綺麗な美しい顔で見られるのが嬉しいとはいえ、だ。
地味にショックを受けているではないか......
「して、何か探しているのか?」
「いや、まぁ...そうなんだが」
「言ってみろ」
「こんなに人がたくさん居るだろう?」
「まぁ。学園だからな」
王族も通う学園であれば、相当な人数が通う学校であるだろう。その通りだ。
ここは、この国に存在する学園と呼ばれる施設の中で一等大きく、人も多い。間違いなく巨大で、大勢の人々が集結している。
「私の、私の知っている妖精が、この中に紛れては居ないかと思ってだな」
「は?」
「私の知っている妖精が」
「いや、いい......」
なんとも変人らしい答えで頭が痛い...
「...はっ!もしやジル王子ならば知っているか?こう、黒くて美しい妖精だ。こう、少女のような...いや、美しい少年だったという可能性もあるな」
まるで新発見!とでもいうようにキョロキョロとし始めるこの男は、紛れもなく挙動がおかしい。
しかし、やはりおもしろい男だった。
「ファルマン。今日我が城に招待しよう」
「いや、いい。お断りする」
「何故だ。我が城も人が多い。もちろん美しい人間も多いぞ」
「行こう」
私はどうも、ホイホイ誰にでも着いて行きそうなこの美しい男が少しばかり、いや、だいぶ心配だった。
さて、どこから手を入れたものか。
爪を磨かせ、櫛を通し、顔を洗わせよう。
きっとこの変人は嫌がるだろうが、その妖精さんは美しいお前が好きなんだと言えば、ころりと態度を変えるだろう。
美しく仕上げて、私に降りかかる女難を吸い上げてくれたら、それが一番良い。
そんな思惑半分に始まった関係だが、これが何年もの付き合いの始まりとなり、気心の知れた友人になって行くとは。
そしてまさか私の思惑とは真逆にファルマンに降りかかる女難が私のところに漂流してくるなど、誰が思うだろうか。
恋は落ちた方が負け。
よく言ったものだと、感心するほかない。
◆
本当にこの男は愉快だった。
ジロジロ学友を舐め回すように見ていたと思えば、驚く事にこいつは人間に興味は無かった。
女が好き、男が好き、容姿が好き、権力が好き。好きにも様々な形があり、大きかったり小さかったりする。
ただ、この男の場合にはそれが無いようだった。
「好き」の対極には嫌いが存在すると私は思っていたのだが、浅い浅い。
そんなモノではなかった。
対極に存在するのは、もはや「無」だ。
何もない。
興味がない。
記憶に残らない。
「嫌い」はまだ良い。
それは多少興味があった人物に対して、「想像よりもひどい対応をされた」「期待通りにならなかった」「嫌なことをされた」などからやってくる反動の感情が変化したものだ。
「嫌い」の上流には必ず「好き」がほんの砂粒ほどでもあるのが普通というものなのだ。
どうも全ての「好き」が昔に見たという「妖精」に振り分けられている印象を受ける。そこからはみ出た残りカスがポロリとたまたま転がり落ちて、私に向いているに過ぎないに違いない。
こいつは酷い人間か?
そうかもしれない。
実際に女生徒に呼び止められ、夢でもみてるかのような瞳をした可憐な少女から告白を受けているのを見た。
いくら社会から切り離され、平等という名のもとに勉学に励む場所だとは言え、貴族社会でそんな事をしてはどうなるか。
その少女も十分にわかっている事だろう。しかしそれを覚悟で話しかけたのだ。健気でいじらしく、実に男心を擽ぐる術を知っている。
そんないたいけな少女にツンとした態度で「そうか、すまないが、私は貴女に興味がない。他を当たってくれ」なんて言い切るその凶悪さたるや。
あまりの非道さにもう止めてやれと、思わずその場に行ってその女生徒を慰めてしまった。
それほど冷酷で、冷徹で、男の風上にも置けないようなやつが、ついに一途に追い求めた女性を見つけたのだ。
大きな拍手と歓声の中、見たこともない、とろけるような笑みを浮かべ、うっとりと女性を見つめている。
ティナ・ベルモンド
この国では見ることのない、まるで深い夜空を詰め込んだような黒い髪と瞳。
美しい女性だった。
まるでおとぎ話の中の王子様とお姫様のような姿。じっくりと目に焼き付けることにしよう。
なんと言っても友人の晴れ舞台。ようやく願い叶って出会えた、嘘みたいな話だ。
そんな友人を祝福しよう。一緒に喜ぼう。
美しい過去を胸に抱いて、そっと瞳を閉じる。
いつまでもこの美しい光景が続けばいい。
瞼の裏で、ゆっくりと何度でも描き、思い出せばいい。
その光景を、ほんの少しはみ出した特等席でゆっくりと見てやることにしよう。
番外編を追加いたしました。
友人に対する思いは人それぞれかなと思います。心境は複雑ながらも応援する気持ちで書きました。
数ある小説の中から、この小説を読んでくださりありがとうございます。
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