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14 兄の心配事

続きます

 



 くらい、暗い、暗い…




 まっくらで息苦しい




 頭がぐらぐらして、それで、それで…








◆◆



 


 ようやく夜勤明けの気だるさから解放され始めた頃。

 


 時刻はとうに夕刻をさしていた。




 朝に寝て夕刻に目が覚めるというのはやはり体のリズムが狂うのか、体が休んだ気がしなかった。夜間に眠る時間が短くとも、しっかり回復できるというのに、昼に寝るとうまくはいかないものだ。

 


 変な時間に寝たものだから、これから夜がやってくると言うのに眠れるだろうか。

 


 多少の不安はあるものの、弟のジャンドールと同じく自分の体は随分と頑丈に作られていて、鈍感な節があるので、そこまでの心配は不要だろう。




 さて、朝方ティナに声をかけたが、彼女は気落ちしてはいないだろうか。心配のあまりつい口に出してしまったが、そのせいで彼女がさらに傷ついていないかが気になった。



 あのような美丈夫に言い寄られていい気のしない女性はいないだろう。

 




 随分と変な話の多い男ではあるが、年もティナと同じくらいで釣り合いもいい。


 随分と貴族意識も薄れてきている時代になったので家柄の釣り合いで付き合いを禁止されるような事もない。



 しっかりと自由恋愛の生きている社会であることが救いだろう。数十年前はそうでなかったと聞くので、いい時代になっているのだと思う。



 しかし、どこの高位貴族も不倫浮気妾愛人は付き物で、いつだってそう言った話は絶えないものだ。どうにかならないものか…


 やはり、根も葉もない噂だとしても、その下に必ず土は存在する。土台が存在する。

 


 少しでも信じる部分があるとあっという間に広がっていくものだ。良くも悪くも噂とはそう言うものだ。


 ひとまず先に調査を進めて、それからティナに確認せねば。




 うん。いい感じに頭も回り始めてきた。




 自室のベッドから起き上がり、首を回せばパキリパキリと小気味のよい音がなる。



 鍛えているとはいえ、年々体の調子は落ちてきている。


 ティナに回復薬でもねだろうか。


 無駄な心配をかけてしまわないかは心配だが、元来心配性の彼女はきっと快く引き受けることはわかっていた。

 



 言葉が不自由だった事もあるが、どうも歳と共に余所余所しさが目に余る。


 見た目が似ていない事やその色味が引け目を感じさせているのは間違いなかった。


 しかしどうも、まるで家族の関係性とは違う気がしてならないのだ。



 言うならば、一軒の家に住んでいるだけの他人。



 言うならば、家族ごっこ。


 



 そこまで考えて、思考を止める。

「疲れているんだな」


 きっと思っている以上に疲れているに違いない。

 

 やはり歳か……

 



 以前使用してそのままになっていた空になった回復薬のボトルと、部屋に吊るし乾燥させてあった束になった回復薬の元となる薬草を引き抜き、部屋を出る。



 しばらくすると、ティナの部屋の前でウロウロとするルノワールの姿が見えた。

 


「ああ、ああ、サラドール様」



「おやおや、ティナはどうしたんだい? ルノワール」



「あああ、サラドール様ぁ、それが……それが……」


「ああ、落ち着いて。ゆっくり、落ち着いて話すんだ。できるかい? 」


 


 ゆっくりと宥めるように落ち着かせる。

 ルノワールは「はぃぃ」と裏返したような声を出して、咳き込んだり忙しないが、肩で深呼吸を繰り返し、ようやく落ち着きを取り戻してきたようだ。



「む?兄上、ルノワール。二人して部屋の前でどうしたんだ?」



 ルノワールが落ち着くのを待っていると、自室へ戻る最中だったのかジャンドールが長い髪をゆらゆらとさせノロノロと近寄ってきた。



 ノロノロとした動作のまま、扉の前にたどり着くと、一拍おいて「なんだティナの部屋ではないか」とキョトリとした顔で言った。続けて「何か問題があったのか? 」とルノワールに尋ねた。そうするとまたルノワールがフリーズをした。今私も同じことを聞いていたんだよ弟よ。

 青ざめ始めた顔があまりにも可哀想で、またしっかりと息を吸うように勧めた。



「それが、それが! まだお嬢様がお帰りになられないのです……! 」



数ある小説の中から、この小説を読んでくださりありがとうございます。


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