11 模擬試合、開始
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突然のバトルです。
ドォォォンと地の底から響く地鳴りのような音が響き、ブワリと土煙が舞う。音もさることながら、振動も相当なものだった。
建物の崩落とまではいかないが、どこかでピシリと亀裂ができる音が鳴る。
激しく舞った土煙は、あっという間に演習場全体を茶色に染めていく。
あたりを茶色く覆っていた土煙はスパンと目の前で切り裂け、そこから閃光のように赤が飛び出した。
凄まじい速度で飛び出してきた男は、チェーンで繋がった刀をヌンチャクのように振り回し、恐ろしい速度で攻撃を仕掛けてきた。
ガキン、ガキン、と金属のぶつかり合う音が重く響く。
なんとか弾き返し、距離を取るが、そう上手く待ってくれる訳もなく、すぐさま両手に構え直された二刀が立て続けにガツガツガツ、と連続で左右から振り下ろされてくる。
軽く攻撃しているように思えたが、どうにも一撃一撃が重い。
互いの体重が乗り、金属同士が交わる音が、ぎりぎりぎりとがなりたてる。
この仮試合は、突如襲いかかってきた赤毛の騎士により始まった。不意打ちのように思えるが、そういうことは多々あるので割とポピュラーな騎士同士の演習である。
蛮行のように思えるが、しかしそこにも一定の暗黙の了解とされるルールが存在している。
剣術での勝負は剣術で。
魔法での勝負は魔法で。
魔法と剣術の混合はギャラリー無しの時に。
怪我人の出ないように配慮された結果である。
随分と長い間撃ち合いを重ねているが、一向に相手の隙が無い。
大きな刀を二刀も抱えているというのに、軽い身のこなしで舞うように切り掛かってくる。
それをいなし、斬り込むも、上手く避けられなかなか続けて攻め入ることが出来ずにいた。
撃ち込み、防ぎ、また狙って撃つ。
数分か、はたまた数時間か。
どれほどの時間が経っているのかは正直わからない。
緊迫が続けば続くほど、膨大な時間が経ったような感覚に襲われる。
そんなつもりはなかったが、相手を甘く見ていたようだ。
練習用のサーベルが悲鳴をあげ続けている。
これであと何度の攻撃を受けられるだろうか。
相手は使い慣れた愛刀を持参していたというのに、随分と自分は腑抜けになったものだと後悔が襲う。
相手の二刀目が一撃目直後に襲い掛かってきた時、演習用のサーベルがバキリと音を立てて刃先が飛んだ。
それを合図に決着がついた。
飛んだ刃先は数メートル先の地面に刺さり、破片がパラパラと砕け、床に小さな山を作っている。
それで満足したのか、その様子を視線だけで追うと、赤髪の男は満足そうに刀を仕舞い込んだ。
「ふむ。なかなかに噂に違わぬ腕だ。悪かったな突然切りかかってしまって」
「いいえ...ご指導ありがとうございます。ジャンドール殿」
「いい。が、しかし。うん。私もまだまだだ」
「近衛騎士団の団員である貴方がなぜここに...?」
「ん? うん。なぁ、ファルマン殿。ここ最近、貴殿の噂がよく出回る。その事に随分とサラドール兄上が頭を痛めていてな。それならば私が、と思ってクギを刺しにきたのだ。」
「? それは、どういう...?」
「わからないか?」
返事ができずにいると、「そうか」と呟き、燃えるような赤毛を靡かせ、ジャンドールが一歩、また一歩と近づいてくる。
身が軽いので小柄なのかと思えば、近づいてくるその身長は随分と大きい。
さらに筋肉隆々で、身体はたくましく大きい。
さながら、獅子のようだった。
猫のような大きな目が弓形に細められ、値踏みをする様に私を捉えている。その眼差しにはうっすらと軽蔑と嫌悪が浮かんでいた。
鼻と鼻がぶつかるほど近くに寄って額をごちりとぶつけられたが、距離を取るにも、大きな威圧とプレッシャーでまるで体は動こうとはしない。
金縛りにも似た現象に、情けなくも、それほどの力の差を実感する。
このジャンドールという男の迫力が今私を支配しているのだ。
「私の可愛いティナを誑かすのは今すぐやめろ。よりにもよって隠れ蓑をティナにするとは何たる侮辱。お前の愛する者のいる森へ帰るんだ」
地を這うような恐ろしい声が、私の首をぎゅっと締め付ける。
何を言う、何の話だと反論する余地も与えてもらえない。
やっと息を吸えるようになったのは、ジャンドールの姿が小さくなった頃だった。
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