時計の針は、クリスマスに私の心を寂しくさせることはもうない
時計の秒針が動き、カチカチという音が私の心を寂しくさせる。
彼がいないことを時間が教えているから。
彼の声も、彼の吐息も、彼の落ち着いたゆっくりな心臓の音も。
全てが聞こえない。
だからこそ、時計の秒針の音が私を寂しくさせる。
大切な今日を本当は、一緒にいたいと思う私は、彼の音を求めて探している。
「今年のクリスマスも仕事でごめんね」
「仕方ないよ」
「プレゼントも早めにあげたし、早めにクリスマスデートもしたんだし、大丈夫だよね?」
「うん。大丈夫だよ」
時計を見ると、クリスマスがもう少しで終わってしまう時間。
そんな時間に彼から電話があった。
こんなクリスマスはいつも通り。
彼とは会えないクリスマス。
早めのクリスマスデートも、早めのプレゼント交換も、彼がクリスマス当日に謝るのも、全部いつも通り。
私は仕方ないで済ませる。
そうしなきゃ、頑張っている彼に申し訳ないもの。
ワガママなんて言えないの。
でも本当は彼に会いたいの。
彼と出会っていなかった時のクリスマスは、一人でもなんとも思わなかったのに。
彼の優しさを、彼の笑顔を、彼の存在を、彼の隣にいる居心地の良さを、知ってしまったから。
彼が愛しいから。
「そうだ、明日は君って仕事は休みだよね?」
「うん。あなたは明日もお仕事でしょう?」
「それが明日は休みがとれたんだ」
いつもと違う。
毎年、クリスマスの次の日も、彼はお仕事なのに。
「そうなの? いつもと違うわね」
「ねえ、嬉しくないの?」
「そんなことはないわ。でも今年もいつも通りだと思っていたから、驚いたのよ」
「そう? でもクリスマスの次の日が休みって意味ないじゃん、なんて思ってない?」
どうして私の思っていることが分かるの?
「仕方ないよ」
「また仕方ないで済ませるんだね?」
「えっ」
「仕方ないは、我慢しているって伝える言葉だって知ってる?」
「そっ、そんなことはないわ。私はあなたが忙しいのは分かっているもの」
「俺は我慢しているなら言ってほしいよ」
「えっ」
「明日は休みだって言ったよね? もう明日だよ」
彼の言葉を聞いて時計を見る。
時計は夜の十二時を過ぎていた。
「外を見てよ」
窓から外を見ると、白い息を吐きながら、息を整えている彼がいた。
「どうして?」
「俺はクリスマスの当日は無理だから、前日と翌日は君といたいんだ」
「私と同じなのね」
「君も同じなら、今から君を抱き締めてもいいかな?」
「喜んで」
私と彼の時計は、今日がクリスマスだと告げる。
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