99.快楽と劇薬、からの…
「は、はひ、はひ……」
ベッドの上で髪と服を乱したミユウが痙攣を起こしながら倒れ込んでいる。
ティークから“マッサージ”と称する性感責めを約1時間受け、ミユウは心身ともにボロボロとなっていた。
ティークは既に姿を消しているが、未だにミユウの皮膚には責められていた時の感触がくっきりと残っている。思い出すだけでも声を出してしまいそうなほどに。
そんな彼女の枕元で、今回の張本人であるアストリアがニコニコと微笑みながら、ミユウの顔を眺めていた。
「いかがでしたか、ミユウさん?」
「し、死ぬかと、思った……」
「そうですか。“天にも昇るような気持ちよさ”ということですね。気に入っていただけて嬉しいです」
「違う……というか、どうしてこんなことするの」
「先ほどもお伝えしたでしょ?私はミユウさんにマッサージをして差し上げたかっただけです。流れで、すこーしだけいやらしい場所を触ってしまったかもしれませんが」
「何が少しよ……」
ミユウはつぶやくようにツッコむ。
実際のところ、少しどころかかなり際どい場所を押されたり、撫でられたりした。そのせいで何度も人間としての尊厳を失いそうになった。
しかし、もう声を張り上げる気力も残っていない。
「そのようなことより……」
アストリアはベッドの上に少し身を乗り出すと、生気を失ったミユウの顔を両手で押さえ、自分の目の前に向けた。
双方の鼻先の距離は1センチ未満。吐息が互いに混じり合うほどに近い。
突如アストリアの端正な容貌を間近にし、ミユウは思わず目を見開いた。
いつも当たり前のように目にする顔。
もう慣れていると思っていたが、この距離で見ると、未だにドキドキしてしまう。
今すぐにでも目を逸らしたかったが、アストリアのルビーのような紅い瞳が捕らえて離さない。
「ミユウさん」
「ひゃい!」
自分でも情けないほどに上ずった声で返事をする。
「私の顔を見て、どう思いますか?」
「……へ?」
アストリアの意図の分からない問いに間抜けな声を出す。
「どういうこと?」
「ミユウさんは私の顔を見て何か感じませんか?」
「何かと言われても……」
突然そんなことを言われても、どう答えればいいのか。
下手なことを言えば、くすぐり責め・性感責めが再び行われる可能性がある。それだけは避けたい。
きっとアストリアがこう言ってほしいと望むものがあるのかもしれないが、それが分からない。
もう少し慎重に考えるべきなのだろうが、これ以上時間を費やせば空気が悪くなる。
ここは当たり障りのない率直な回答をしよう。
「き、綺麗だし、かわいいと、思うよ?」
「……」
そう口にした途端、ミユウの顔は真っ赤に染まる。
日頃絶対に口にしないであろう言葉を堂々と言ってしまったことに、恥ずかしくなった。
それに対し、アストリアは何も言わず、ただ見つめるだけ。
沈黙がミユウの羞恥心を煽り立てる。
お願いだから何か言ってほしい。
「あの……」
「ミユウさん。そのお言葉は嬉しいですが、私が求めているのはそういうことではありませんから」
ミユウの心がパリンとガラスのように割れる音が聞こえた。
勇気を出して口にした言葉が的外れだった。
これほどまでにプライドを傷つけることはあるだろうか?これでサヤたちに見られていれば、廃人になっていたかもしれない。
「私がお訊ねしたいのはですね。私の顔を見て、したいことはないかと言うことであって」
「敢えて言うなら逃げ出したい」
「それはどういうことですか?」
「ご、ごめんなさい」
「ほら。先ほどティークさんにいろんなところをマッサージをされたではないですか」
「うん。された」
「その時に身体の底からこう湧き上がるようなものはないですか?」
「例えば?」
ミユウにそう訊ねられると、アストリアは初めて目線を反らし、頬を赤く染める。
「だからですね。えっと、その、ム、ム、ムラ、とか……」
「ん?」
「私にキ、キ、キ…………したくなったとか」
「ごめん。よく聞き取れなかった。もう一度言って」
「んん~~!ミユウさんの意地悪ぅ!」
「いたっ!」
アストリアはミユウの頭を投げると、背を向けてしまった。その勢いで、ミユウの頭頂部が壁に当たる。
「おかしいですね。計画では、際どいところを責められ続けて、自分の欲情に耐えられず、強引に私へキスを迫ってこられるはずだったのですが。もう少しマッサージを続けるべきだったのでしょうか?」
「いてて。ねぇ、何をつぶやいてるの?」
「いいえ。何でもありません。そうです!せっかくなので、もう少しマッサージをしましょう!」
「嫌だよ!何がせっかくなの!もう騙されないからね!」
「今度は私がしますから、安心してください!」
「さっき自分にはマッサージの心得はないって言ってたじゃん!」
「ティークさんのマッサージを見ていたら『私にもできるかも』と自信が出てきました!」
「どこから来たの?その根拠のない自信は!」
「さあ、邪魔になるのでガウンを脱いでください!」
「嫌だ。ちょ、どうして、パンツを脱がそうと。そこを掴んじゃ、くしゅぐった、い、いあはははははは!」
最後に残った力を振り絞り、服を脱がそうとするアストリアを必死に抑える。
心なしか、いつもよりアストリアの力が強いように思える。
その時、
「にぃに!おはよーう!」
ドーンと勢いよく開く扉の音とともにサヤの元気溌剌な挨拶が舞い込んできた。
それを耳にしたアストリアは即座にミユウから離れ、何事もなかったかのようなすまし顔で床の上に正座した。
「朝早くにごめんね。昨日にぃにの調子が悪そうだったから……って、ベッドの上でなんて格好してるの?」
「え?」
ミユウが目線を落とすと、自分のガウンが乱れ、ほぼ半裸状態だった。
「いや、違うの!これはアストリアが、ひゃん!」
弁明しようとするミユウを制止するように、アストリアが人差し指でミユウの横腹をつつく。
そして、サヤに目線を向けると、ニコッと微笑みかけた。
「おはようございます、サヤさん。今日は珍しく早く起きられたのですね」
サヤはアストリアの存在に気づくと、悔しがるように小さく舌打ちした。
「ちっ、先を越されたか」
「まあ、人の顔を見るなり舌打ちをするとは酷いですね。泣いてしまいそうです」
「アスねぇはこんなに朝早くにぃにに何の用かな?」
「私はミユウさんの体調が気になって、ちょっとした看病をしに来ただけですよ?」
「へぇ~。どうせ看病って口実で、にぃににいやらしいことをしようとしたんじゃないの?」
「うっ…………そ、そういうサヤさんはミユウさんにどのようなご用件が?」
「あたしもにぃにが心配になったから、見に来たんだよ。ほら、体力が落ちてるかなって思って、ポーションも買ってきたよ」
そういいながら、サヤは背後に隠していた黄色のガラス瓶をミユウに手渡した。
装飾されたガラス瓶は拳で握れるほどの小さなサイズで、中には液体が入っている。
「ありがとう。ちょうど体力が消耗してたところなんだ。でも、これ高かったんじゃない?」
「まあね。けど、にぃにが元気になるならこれぐらいなんともないよ」
サヤの言葉に少しほろっとする。
よく喧嘩をすることがあるが、ここまで想ってくれていたとは思わなかった。なんだかんだで実の妹なんだなと嬉しくなった。
「じゃあ、ありがたくいただくね」
ガラスの蓋を開けると、中から甘ったるい香りが漂う。
ミユウは瓶の口を自分の口元に近づける。
しかし、鼻の下側まで近づけたところでミユウの動きが止め、再び蓋をする。
「どうしたの?遠慮しないで飲んでよ」
「ねえ、サヤ。あたし、このポーションの匂い、どこかで嗅いだことがあるんだけど」
「そ、それはそうだよ。ポーションなんてみんなそんな匂いだよ?」
「いつだったかな?そうだ。この前サヤに捕まって、キスされた時だ。その時にサヤの口から同じ匂いがしてたな」
「うっ!」
ミユウの言葉を聞いた瞬間、サヤの表情が強ばった。
「や、やだな~。妹の口の匂いを覚えてるなんて、にぃにもなかなkマニアックだね~。そんなにあたしとのキスが印象に残ってるのかな~」
「それにこの瓶も見たことがあるんだよね」
「ポーションの瓶なんて全部同じだよ?」
「そうなの?アストリア」
そう話を振ると、アストリアは横に首を振った。
「ポーションと一言でいいましても、材料や生成方法、用途、使用対象などによって細かく種類分けされています。そして、それらを混合しないように公国では種類ごとで決められた瓶に入れて販売しないといけないはずです。ですから、大抵のポーションは瓶を見れば、見分けがつきますよ」
「え?!ポーションなんて飲むことないから知らなかった……」
「そうですね。見たところ、そちらは“ハイパーポーション”と呼ばれるものですね。そういえば、イリイナさんがよくお飲みになられているのを見ます」
「へぇ、そうなんだ」
ミユウがサヤに目線を戻すと、サヤは逆に目線を反らした。
「ねぇ、サヤ?」
「な、なにぃ?」
「この前、これと同じポーションを飲んだよね?」
「え?そうだったかな?」
「その時に性的興奮が抑えられなくて、暴走してしまった覚えているよね?」
「いや~、覚えてないな~」
サヤの額から大量の冷や汗が流れ、目が泳いでいる。
何とわかりやすい。
確実にあの時のことを覚えているはず。
そして、これを飲むとどうなるかを知ったうえで、飲まそうとしていた。確信犯である。
「……はぁ」
ミユウは一つため息をつくと、近くにあったテーブルにポーションの瓶をそっと置いた。
そして、ベッドで横になるとシーツで全身を包んだ。
「サヤがあたしに元気になってほしいって言ってくれたのは嬉しかったし、感謝してる。だから、あたしにこんなものを飲ませて、あたしをどうしようとしたのか、それは敢えて聞かないようにするよ。せっかく買ってきてくれてごめんだけど、これはイリイナに渡してね。あたしはもう少し休むから部屋を出て行ってもらえるかな?アストリアも一緒にね」
しばらく沈黙した。
シーツで顔を隠しているので、アストリアとサヤがどんな表情をしているか分からないし、何を考えているのかも分からない。
ただ、ミユウの脳内にはアストリアとサヤが反省し、ショボンとしている光景が浮かんだ。
言い過ぎたかと後悔したが、それでも言うべきことを言わねばならない。
同時に、これでもう少し自分への対応を改めて欲しいものだとミユウは望んだ。
しかし、ミユウの推測は的外れなものとなった。
「えい!」
「ぐひゃっ」
サヤの叫び声が聞こえると同時に、ドスンとうつ伏せになったミユウの腰に柔らかく、重量感のあるものがのしかかった。
収まりかけた腹痛が僅かに強みを増し、潰されたカエルのような声を出してしまった。
腹部を片手で押さえながら包まっていたシーツをめくると、ミユウの腰に馬乗りになっているサヤがいた。彼女の表情は反省しているどころか、開き直っているように見える。
「病み上がりの兄の上に飛び乗るなんて、どういうことかな?さっき、あたしに元気になってもらうために買ってきたって言ったじゃん。あの言葉は嘘だったの?」
「もちろん、それは嘘じゃないよ。けど、その他にも目的があるんだ。その成就のためにも、絶対にぃににはこのポーションを飲んでもらうよ」
「とうとう本性を現したな。あなたの健気な思いやりに感動したあたしの気持ちを返せ!」
「別ににぃにを想う気持ちに嘘はないよ。これからすることも全てにぃにを想ってのことなんだから。さあ、大人しくポーションを飲んで元気になろうねぇ」
「嫌だ!サヤの思い通りになってたまるか!」
「そうか。それじゃ、無理矢理にでも飲ませてやる。それ!」
サヤはうつ伏せのミユウの脇腹を掴み、くすぐり始めた。
「いや、あ、ぎゃはははははははははははははは!待って!それは、い、いあはははははははは!」
ミユウは笑い悶えながら、全身を使ってサヤに抵抗する。
しかし、くすぐられている間はほぼ力が入らない。腰の上で馬乗りになっているので、逃げることができない。背後をとられていて、次にどう責められるか分からない。
まさに“万事休す”、サヤにされ放題である。
「ほらほら、体力がなくなってきたんじゃない?早くポーションを飲んだ方がいいんじゃないの?」
「しょ、しょれじゃ、ほ、本末、転倒じゃな、あはははははははははは!いひひひひ。あ、アシュトリア、たしゅけて~~~~!」
ミユウは苦し紛れにアストリアに助けを求めた。
しかし、彼女は助けるどころか、ニコニコと微笑みながら、笑い苦しむミユウの姿を眺めていた。むしろ、ミユウがサヤに屈して、ポーションを飲むのを心待ちにしているかのようだった。
「いひひひ、あははははははははは、も、もうダメ、無理、お腹が、い、たはははははははは!」
「助かるためには、どうすればいいのかな?賢いにぃにになら分かるはずだよね?」
「わかったよ!飲むから!飲むから、もうやめて!」
「はい。よくできました。偉い偉い」
ミユウの全面降伏宣言を耳にしたサヤはミユウの脇腹から手を離し、ミユウの上から降りると、まるで幼い子どもにするように彼女の頭を撫でた。
「なんでこんな目に遭わないといけないの……」
「駄々をこねたにぃにが悪いんだよ。さあ、起きて。寝たままじゃ飲めないよ」
「うぅ~。元気になったら、絶対仕返ししてやる」
ミユウは渋々上半身を起こす。
サヤからポーションの入った瓶を受け取ると、その蓋を開けた。
(そういえば、元気なときに飲むと副作用が出るんだっけ。じゃあ、今のあたしみたいに疲労困憊のときに飲めば変な気分にならないかもしれない。そうならないことに賭けてみるしかない)
そう決心すると、無心に瓶の中のポーションを飲み干していく。そして、空になった瓶をテーブルの上に叩きつけるように置いた。
サヤは空になった瓶を確認すると、身を乗り出してミユウの表情を確認する。
「ねえ、どうだった?」
「…………うえぇ。甘ったるい。イリイナはよくこんなの飲んでるね。信じられないよ」
「そうだよね。あたしも飲んだとき、思わず吐き…………って、味の感想じゃないよ!なんか体に違和感はない?」
「ん~。特に変化みたいなものはないかな?あえて言うなら、少し元気になったような気が……」
「おかしいなぁ。お店の人が『これを飲んだらイチコロだ』って言ったから、一番高いヤツを買ったのに。効果が出るのに時間がかかるのかな?」
「なんか言った?」
「ううん。何でもないよ」
一瞬、サヤの目線はアストリアに向けられる。
そして、すぐにミユウへ目線を戻すと、ミユウの右手首を握った。
「ねぇ、にぃに!」
「え?今度は何?!」
「今からあたしの部屋に行こうよ!そしたら、アスねぇよりもっといい看病してあげるからさ」
「もっといい看病って何?!」
サヤはミユウの返事を待たずに、思いっきり引っ張る。
それに抗えず、ミユウの体はベッドから引きずりおろされた。
このままサヤの部屋に連れて行かれるかと思いきや、サヤとミユウの動きが止まった。
左手首をアストリアが掴んだからだ。
「サヤさん?ミユウさんをどちらに連れて行かれるつもりですか?」
「さっきの話、聞いてなかったの?今からあたしの部屋に連れて行くつもりなんだよ」
「看病されるなら、こちらの部屋で十分でしょう。それを病み上がりのミユウさんをわざわざ動かして。再び体調を崩されたらどうするのですか?」
「大丈夫だよ。あたしが全身全霊でにぃにを看てあげるんだから。もしかしたら、いつもより元気になっちゃったりして」
「先ほどの言動を見せられて、あなたを信じろと?それは無理な話です。ミユウさんは私が責任を持って介抱いたしますので、サヤさんはどうぞご自身のお部屋でごゆるりと」
「そんなことを言って、アスねぇはにぃにを独占したいんじゃないの?あわよくば、にぃににいやらしいことを……」
「そ、そのようなことは考えていませんよ。そういうサヤさんの方こそミユウさんを襲おうとしているのでは?実の妹がそのようなことをしていいとでも?」
「愛に妹も何も関係ないよ!だいたい……」
いつの間にかアストリアとサヤは今にも鼻がくっつくのではないかと言うぐらいに顔を近づけ、互いを牽制し合っていた。
いつもは本当の姉妹のように仲のいい二人だが、今日は珍しく表立って対立している。
二人の間に何があったのか、ミユウには知る由もない。
ただできるなら、この争いには巻き込まれたくはない。
(早くこの部屋から逃げ出さないと……あれ?)
あることに気づいた。
よほど互いを牽制することに集中をしているのか、ミユウの手首を掴んでいたはずの二人の手が離されており、それぞれの胸の下で組まれていた。
(よし。こっちに気づいていないうちに……)
ミユウは音を出さないよう、四つん這いになりながら部屋のドアに向かい、部屋の外へ出ることに成功した。
「今日の二人はちょっと変だよ。いつもより熱が入っているというか、余裕がないというか、積極的というか……そんなことはどうでもいいか」
ミユウはゆっくりと立ち上がり、下に向かう階段に向かって駆け出そうとした。
「あれ?」
何の前触れもなく、心臓がドクンと大きく脈を打ち、強いめまいがおこった。
ミユウはそのまま床に倒れ込む。
「な、何、これ……」
今までに体験したことのない心臓の鼓動とめまいがミユウを襲う。同時に、全身の熱が上昇し、体内から快感にも苦痛にも似たモヤモヤがこみ上げてくる。脈が速くなるとともに、呼吸もどんどん荒くなっていく。
左手で胸を掴み、右手を太ももに挟みながら、内より湧き上がるものを抑える。
(これが副作用ってヤツ?体がうまく動かせない。いや、動かしたらダメな気がする。くそぉ。サヤめ、なんてものを飲ませるの。いや、ティークのマッサージの効果もあるかも……)
ミユウは匍匐前進の要領で少しづつ前に進む。
このまま倒れていては、いずれアストリアやサヤに捕まる。
今の状態で捕まれば、自分が彼女たちに何をするか分からない。下手したら、一生を棒に振る失態を犯す危険性だってある。
それだけはどうしても避けたい。
(絶対に逃げ切る!)
そう決心し、廊下の向こう側に目線を向けた。
その時である。
ミユウの目線に靴が入り込んだ。正確に言えば、靴を履いた人の足が見えた。
「はえ?」
目の前の状況を把握することができず、一瞬思考が止まる。
ゆっくり目線を上げると、その全体像がはっきりと見え始める。
スラッとした脚、引き締まった腰、豊満な胸、黄金色の髪。
その中でも極めて特徴的なのが犬の耳と尻尾である。
「シュ、シュナ……」
ミユウは目の前にいる獣人族の少女の名前を口にする。
「こんなところで寝っ転がって何しとるんじゃ?」
シュナはその場でしゃがみ込むと、ミユウの赤く火照った顔を覗き込む。
「妙に騒がしいけん覗きに来てみたんじゃが、何かあったんか?」
「別にたいしたことは……」
「大丈夫か?なんや顔色が悪そうじゃけど」
「気に、しないで……」
「気にしないでって。そういうわけにはいかんじゃろ」
そういいながら、シュナはミユウの肩に触れる。
「ひゃんっ!」
シュナに触られた瞬間、甲高い悲鳴をあげる。
ティークのマッサージの効果か、ポーションの副作用か、ミユウの皮膚はちょっとしたことで反応するほどに過敏になっていた。
「いや、これは違……」
「……ほ~う。なるほどのう」
シュナはミユウの姿と彼女のいた部屋を見比べ、何かを察したのかのように口角をニタッと上げる。
「まあ、こんなところにおってもしょうがないけん、ボクの部屋に行こうや」
「それは、いいから……」
「そう遠慮せんで。ゆっくり休んだらええよ。ゆっくり、たっぷりとのう」
シュナは舌なめずりをし、獲物を前にした獣の目でミユウを見ていた。
(あっ。これはダメなヤツだ……)
シュナに抱えられる瞬間、自分の将来が崩れ落ちる音を感じながらミユウは気を失った。




