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チートな俺が、チープなあたしに変わったら、くすぐりに悩まされる日々が待っていました  作者: 広瀬みつか


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94.罪科への償い、しかし…

 町と町を繋ぐ街道から離れた森林の中に、人一人分の細い道がある。

 いつなんのために作られたのかわからない。今はほとんど誰も使っていないのだろうか、十分な舗装をされておらず、歩くだけでも疲労が溜まっていくような道だった。

 日が沈むと、生い茂る草木も相まって数メートル先を見渡すのも難しくなる。


 しかし、夜深くなった今もその森の中を不自然に煌々と照らすものがあった。

 光源は光で形成された十字架であった。二メートルほどの高さで、そこに存在するだけでも拝みたくなるほどの神々しさを放っていた。

 その光の十字架の正面には二人の少女が睨み合うように立っている。

 一人は深い紺色のワンピースをまとい、金色の長髪とルビーのように赤い瞳の少女アストリア・ナルトリフ。魔力を根源に奇跡を起こす“魔術”を使うことに特化した“魔術族”である。

 相対するは淡い青色の修道服をまとった、エメラルドのような緑色の髪と瞳のホーリーエルフ族の少女メイリス・トロイアス。世界規模の巨大な宗教である“ヒーリスト聖教”の助祭であり、魔術に対抗するために聖教が独自に編み出した“神術”屈指の使い手である。

 彼女たちは八年前に“ナイトリアス”という町で出会い、一時は親友ともいえるほど互いに信頼し合っていたが、ある事件をきっかけに仲違いするに至った。

 そして、今日二人は再び顔を合わせることになった。

「魔女が近くにいるとは聞いていたが、まさか君だったとはね。アストリア・ナルトリフ。もう二度と出会えないとは思ってはいたが、案外世界というのは狭いものだよ」

「お久しぶりですね。あれから八年も経つというのに、あの頃と何も変わっていらっしゃらないようで。メイリス・トロイアス司祭」

「今は“司祭”ではなくて“助祭”だ」

「おや?降格になったのですか?」

「あの事件で責任を負わされて、“修道士見習い”にまで降格したんだ。審問機関のお預かりになってね、彼らから拷問のような修行を一年間もさせられて、何度も本当に死ぬかと思ったよ。僕への懲罰が目的だったんだろうね。

 けど、我らが主は僕を見捨てなかった。僕の修行に対する真摯な姿勢を本部の方々はちゃんと見てくれていて、一修道士として再びチャンスをくれたんだ。そして、五年間の年月をかけてようやく助祭になることができたんだよ」

「そう、でしたか……」

 アストリアはメイリスから目線を逸らした。

 自分が教会から逃走すればメイリスがどのようなことになるか、ぼんやりとだが察していた。だからこそメイリスを教会から連れ出すとしたのだ。

 しかし、メイリスはそれを拒否した。教会の同胞を皆殺しにしたアストリアを許せないと。

 そして、案の定メイリスは聖教本部から酷い仕打ちを受けていた。それも自分自身の犯したことの責任を負って。

「僕はね、君にほんの少しだけ感謝しているんだよ」

「感謝?どうしてです?」

「もしあのまま何の苦労もせずナイトリアス教会の司祭を続けていれば、今頃僕は未熟な聖職者でしかなかっただろう。けど、あの地獄のような修行を経験することで我らが主シリスト様の慈悲というものを改めて実感することができた。そして、成長することができたんだ。こんなきっかけをくれたのはアストリア、君なんだよ」

「そのような気休めの言葉は要りません」

「気休めではないよ。何の脚色もない本心さ。それに君からは大事なことを教わった」

「私はあなたに何かを教えた覚えはありませんが」

「いいや。確かに教わったよ。言葉ではなく、行動で。そう“君たち魔女を信用してはいけない”とね」

 その時、メイリスの目から怒りの感情とともに悲しげな軽蔑の感情を感じ取った。

「私はあの時多くの修道士の方々の命を奪いました。私を信じてくださった罪のない方の命まで。いまでもあの時の光景を思い出し、後悔しています。私の一生を使い切っても拭いきることはできないほどの罪です……。しかし、私は!」

「僕のことを裏切ってはいないと。もう一度自分を信じてほしいと。そう言いたいのかい?それは随分と虫のいい話じゃないかな?」

「…………」

 アストリアは言葉を続けることができなかった。

 メイリスの言うとおり、いくら裏切ったつもりはないとはいえ、あれだけのことをして「信じてほしい」「また親友になってほしい」というのは虫のいい話だ。

 アストリアは悔しさで両手を握りしめる。

「ところで、昔話をしている暇はあるのかな?君の大事な眷属、いや許嫁だっけ?この子が心配じゃないのかな?」

「あ!」

 アストリアはメイリスの隣に鎮座する物体に目を向けた。

 メイリスが“笑う聖処女”と呼ぶ釣鐘型の鉄の物体の全体には微笑む乙女の彫刻が掘られている。中から反射して聞こえる笑い悶える少女の声も相まって、まるで彫刻の乙女が笑っているかのように見える。

 その中で笑い悶える少女は、アストリアの許嫁であるミユウ・ハイストロその人である。

 ミユウは自身の妹であるサヤと一緒に野営をするためのたき火用の薪を集めに森の中を歩いていた途中で、行き倒れていたメイリスを見つけた。

 サヤをアストリアを呼びに向かわせ、一人で残って彼女を解放していたが、目覚めたメイリスに偶然にも背中の魔術印を気づかれ、その魔術印を刻んだ者の居場所を聞き出すためにメイリスから尋問を受けていた。

 なかなか白状しないミユウに業を煮やしたメイリスはこの“笑う聖処女”へ彼女を閉じ込めてしまった。

「ミユウに助けてもらったお礼にシリスト様のお力の一部を授けようと、彼女の背中に手を触れたときに気づいたんだけど、驚いたな。まさかミユウの全身が魔の力で包み込まれていたなんて。いや、彼女の表面が魔の力で形を成していたというべきか。いや、表面だけでなく、内側の一部も魔の力に置き換わっているようだね。あれは君の仕業ということでいいのかな?」

「はい。本来はあそこまでする気はなかったのですが……」

「かわいそうに。君という魔女と関わりを持ったせいであんな姿にされてしまったんだね」

「…………」

「うすうす君も気づいているんじゃないか?さっきまで彼女を拘束していたこの“聖光十字”も、今閉じ込めているこの“笑う聖処女”も魔の力を打ち消す効果を持つ。その上、“笑う聖処女”の中で長時間くすぐられていることでかなり魔の力も体力もかなり消耗している。あと一時間も経たないうちに完全に息が止まってしまうだろうね」

「ミユウさんは関係ありません!」

「ああ。ミユウに罪はないし、ただの被害者だ。僕もそんな彼女をこれ以上苦しめることをしたくない」

「それでしたら、早くミユウさんを解放してください!」

「いや。解放するには条件がある」

 メイリスはアストリアを人差し指でさす。

「君が彼女の代わりに“魔女狩り”を受けるんだ!」

「わ、私がですか?」

「そうだ。まあ、ミユウの命を取引材料にしているようで気が引けるが、本来君が受けるべきものなのだから取引というのも違うかな」

「……メイリスさん。変わりましたね。昔のあなたならそんなことはしなかったはずです」

「言っただろ?いろんなことを経験したんだ。その中で僕も変わっていったんだよ。さて、どうするんだい?」

「……」

 アストリアは“笑う聖処女”に目を向ける。

 未だにミユウの笑い悶える声が響き渡っている。

 メイリスはあと一時間で死んでしまうといっていたが、ミユウは常人よりもくすぐりに弱い体になっている。長く見積もっても、あと三〇分ぐらいが限界だろう。

 もうここで自分の身可愛さに躊躇している暇はない。

「わかりました。甘んじてあなたの手による罰を受け入れます」

「よし。では、手始めに服を脱いでもらおうかな?」

「な!」

 アストリアは半歩後ろに下がり、メイリスを怪訝な目で睨む。

「勘違いしないでくれ。僕は聖職者。女の子を辱める趣味はない。これは君の魔の力をけん制するために必要な最低限の策なんだ」

「どういうことですか?」

「君たち魔女は紺色の衣服を身にまとうことによって、体内で魔の力を生成する能力を促進することができるんだよね。僕たちにとってのこのペンダントのようなものだ。それじゃいくら神術で魔の力を打ち消してもすぐに新しい魔の力を作られてしまう。だから、僕たちが魔女狩りをするときにはまずその魔女を裸にするんだ。君も覚えているはずだ。八年前も服を脱がされていたことを」

「くっ。そこまで私たちのことを知っていたのですか」

「ヒーリスト聖教は何百年も君たちと敵対してきたんだ。敵のことをとことん調べ上げるのは当たり前だろ?さて、早く脱いでもらおうか。それともさっきの言葉は嘘だったのかい?また僕を騙そうと……」

「ぬ、脱ぎます!脱ぎますから待ってください!」

 アストリアはワンピースの裾をがしっと掴む。

 一瞬動きを止めたが、覚悟を決めると、奥歯を食いしばり思いっきりワンピースを脱ぎ捨てる。

 すると、彼女の透き通るような白い肌が姿を現した。“聖光十字”の光が反射すると、より一層存在感を増していく。

 アストリアは頬を赤く染めながら、すぐに両腕で体を隠す。

「へえ。随分と成長したものだね」

「それはどうも……」

「そうだね。あと靴と下着も脱いでもらおうかな?」

「全裸にするつもりですか?!」

「冗談だよ。靴だけでいい。もし下着も紺色だったら脱いでもらうつもりだけど、赤なら大丈夫さ。けど、昔はあんなお子様パンツを履いていた君が、今ではそんないやらしいものを身に着けるとはね……」

「ほ、ほっといてください!」

 アストリアは恥ずかしさを隠すように履いていた靴をおもむろに脱ぎ捨てる。これで彼女を守るものは布切れ二枚だけとなった。

「じゃあ、次は僕に背を向けて、肩の高さまで両腕を上げるんだ」

「うぅ……」

 メイリスの言われるままにアストリアは一八〇度に振り向き、両腕を上げる。

「そうそう。そのままで……『告げる。光の御柱は罪あるものを捕らえる』」

「え?何か……きゃっ!」

 メイリスがアストリアの背後で小さく何かを唱える。

 それと同時に、アストリアの手首足首に光る枷がはめられ、全身を後ろに引っ張られる。気が付くと“聖光十字”に磔にされた。

「どうかな?聖なる力に捕らえられた感想は」

「ま、魔力が……」

 手首足首を経由してアストリアの全身から魔力が抜けていく。その勢いは昔拘束された“封魔鎖”の比ではない。

「さて、君を捕まえることもできたし、約束通りミユウを解放してあげるよ。『告げる。その咎を許し、業火より放ち給え』」

 メイリスがペンダントを手にして詠唱する。

 すると、“笑う聖処女”の扉が重々しい音を立てながら開かれる。そして、煌煌と光る中から黒髪の少女ミユウ・ハイストロが地面に投げ出された。

「は、はひ、はひぃ……」

 ミユウは地面に横たわりながら、全身をピクピクと痙攣させている。まだ息はあるようだが、かなり体力を消耗しているようだった。

「み、ミユウさん。間に合って、よかった……」

 メイリスはミユウの側に近づくと、彼女を仰向けへと返した。

「ごめんね。本当は僕も君をこんな目に遭わせたくなかったんだ」

 ミユウの両手を胸の上に組ませると、“聖光十字”に磔になっているアストリアを睨んだ。

「安心して。今から君を苦しめ続けた魔女に報いを受けさせるから。『我が主よ。御名のもとに侍らせます使いを授けたまえ』」

 メイリスが詠唱すると、アストリアの周りに百体以上の小さな光の玉が現れ、背中に羽を生やした幼児へと姿を変えた。先ほどまでミユウの全身をくすぐっていた“天使”たちである。

「こ、これは……」

「あまり驚いていないね。もしかしてさっきミユウがこの子たちにかわいがられていたのを見ていたのかい?許嫁がひどい目に遭っている姿を傍観していたなんて、いい趣味しているね」

「私はただ……」

「けど見ていたなら、これから何が行われるか想像できるだろ?君にもミユウと同じ、いや、それ以上の苦しみを味わってもらうから覚悟してね。みんな!今度は一切手加減要らないよ!最初から全力でやっちゃいなさい!」

 メイリスの号令で天使たちはアストリアの周りに集まり、彼女の全身を素手でくすぐり始めた。

「ちょ、ま、い、いやははははははははははは!いひひ、だめ、そこは、やだいやははははははははは!」

 アストリアは全身をくねらせながら、天使たちの責めを回避しようとする。しかし、天使たちはくすぐりの手を緩めるどころか、あの手この手と手法を変えながらアストリアを苦しめる。

「君たち魔女は自然界に存在する僅かな粒子を感じ取るための修行をしていただろう?そのせいで皮膚上の感覚が異常なほどに敏感になっているんだ。だからこそ、こうやってくすぐられるのが苦手なんだよ。“魔女狩り”でもくすぐり責めがよく使われているほどさ。まあ、神術を使う僕たちも同様にくすぐりにめっぽう弱いんだけどね」

「ゆ、ゆるし、い、いあはははははははははは!」

「だめだ。君に殺された修道士たち、君に唆されたミユウ、彼らへの償いはこんなものじゃ足りないだろう?さあ。もっと悶えなさい!もっと苦しみなさい!君にできることはただそれだけだ!」

「アス、トリア……」

 メイリスは背後から微かな声を聞いた。振り向くと、そこには気を失っていたはずのミユウが目を覚ましていた。

「そんな!“笑う聖処女”の空間に数十分も閉じ込められて、すぐに目を覚ますなんてありえない!」

「メイ、リス。お願い、だから、やめて……」

「どうしてだ!君だってあの魔女に体を変えられて迷惑していたじゃないか!どうして彼女を許すんだ!助けようとするんだ!」

「だって、彼女は、アストリアは、あたしの、大事なひと、だから……」

「君が騙されているだけだよ!自分に都合が悪くなれば、君を簡単に裏切るんだ!彼女をここで消すことが君のため、この世界のためなんだ!」

「もし、そうだとしても、あたしは……」

「くっ!やっぱり強い洗脳を受けているのか。君がなんと言おうと僕はアストリアを許す気はない。もうじき何もかもが終わる。そこで大人しく黙って見ているといいよ」

「やめて、お願い、やめて……」

 ミユウはか細い声でアストリアの助命を何度も嘆願したが、メイリスは全く聞く耳をもたなかった。

「まだまだ魔の力は残っているようだね。さすがは魔女だ。天使の数を増やしてみるか。それとも、もうそろそろ“笑う聖処女”を使ってみようかな」

「いひ、いひひ、メイリス、さん……」

「どうしたのかな?言っておくけど、君が死ぬまでやめる気はないから」

「ち、違いま、あはははは!私だけ、に、気を、取られていて、も、い、いひひひひ、いいの、でしょうか、あはははははははは!」

「もしかして、僕の気を反らそうとしているのかい?そんな手には乗らないよ」

「それはどうかな?人の忠告は聞いておいた方がいいと思うよ」

「なに?!」

 再びメイリスの背後から少女の声が聞こえた。

 しかし、それはミユウの声でも、ましてやアストリアの声でもなかった。

 急いでメイリスが振り返ると、そこにはミユウを抱えた黒髪の少女がいた。

「誰だ、君は!」

「せっかくあたしの大事なクッキーをあげたのに、忘れるなんて薄情だな」

「クッキー?もしかして、君がミユウと一緒に僕を助けてくれたのかな?」

「そう。サヤ・ハイストロ、このだらしない顔で抱えられているミユウ・ハイストロの妹だよ」

「そうだったのか。その折は助けてくれてありがとう。君たちには感謝しているよ」

「ところで、あたしの大事なにぃにとアスねぇに何をしてくれているのかな?返答次第では病み上がりといっても容赦しないよ」

「ミユウには酷いことをしたとは思っている。けど、すべてはこの魔女のせいなんだ。君のお姉さんを騙し、たぶらかしたアストリアという悪い魔女のせいなんだよ」

「……やっぱりアスねぇの言っていた通りだ。こっちの話を聞いてくれなさそうだよ」

「ミユウは君に預けるよ。この魔女を始末すれば、僕も君たちのところに行く。その時に改めてお礼をさせてもらうさ」

「そういう訳にはいかないんだよね。アスねぇも返してもらわなくちゃ」

「アストリアは引き渡すことはできない。彼女にはその命を賭して犯した罪の償いをしてもらわないといけないからね」

「どうしてもダメ?アスねぇもあたしの大事な仲間なんだ」

「ダメ。これは僕たちの責務であり、僕の同胞を弔うためでもあるんだ。譲ることはできない」

「そうか……。じゃあ仕方ない。イリねぇ!よろしく!」

「よっしゃ任せとき!」

「な?!」

 サヤの発した言葉に疑問を持つ間もなく、メイリスはその手足に枷をはめられ、林の中に引きずり込まれる。そして十字に拘束された。

「これは“聖光十字”、ではない?」

「あはは。そんな大したもんやない」

 拘束されたメイリスの隣にいきなり一人の少女が現れる。

 彼女は癖の強い銀色の長髪で、スーツの上に丈の長い白衣を着たまるで学者のような出で立ちだった。

「君もミユウやアストリアの仲間なのかい?」

「お初にお目にかかります、助祭様。うちの名前はイリイナ・ルーリールといいます。あんたのお察しの通り、ミユウたちと一緒に旅をしよるもんや」

「なるほど。アストリアは随分と仲間を増やしたものだよ」

「私には、身に余るほどの、素晴らしい仲間たちですよ……」

 すると、林の奥の方から三人の人影が近づいてきた。

 一人はサヤ、一人は彼女に抱えられたミユウ、そして、もう一人は弱々しい足取りで歩くアストリアだった。

「アストリア、君がどうして……なるほど。ペンダントから手を放したから“聖光十字”が消失してしまったんだね」

「あなたが私をあの十字架に拘束することはなんとなく予想していました。ですので、サヤさんにイリイナさんを呼んできていただいたきました」

「なるほど。この十字架は魔の力で形成されたものではない。これなら神術では太刀打ちできないというわけか。考えたね。それで、これから僕をどうする気かな?」

「私が罰せられることは仕方ないとは思っています。それは今でも変わりません。しかし、それにミユウさんを巻き込んだことは許せません!ですので、イリイナさんにはお仕置きを受けていただきます」

 アストリアはイリイナに目線を送る。それを受け取ったイリイナは十字架の後ろ側に回ると、そこに手をかざして微弱の電流を流した。

 すると、十字架から複数のマジックハンドが現れる。

「ま、まさか……」

「先ほどおっしゃっていましたよね。魔術族と同様に、神術を使う方はくすぐりに弱いと。ということは、メイリスさんも……」

「ま、待つんだ!本当に僕はくすぐりはダメで……」

「ダメです。私もミユウさんもあなたに同じ目に遭わされたのです。自分だけはやめてほしいというのは虫のいい話ではありませんか?」

「く、くそ~」

「イリイナさん、お願いします」

「わかったで」

 イリイナがもう一度十字架に電流を流すと、マジックハンドがメイリスの全身をくすぐり始める。

「いやははははははははははは!やめろ!よ、横腹は、横腹はだめなん、あはははははははははは!」

「ミユウたちが帰ってくるまでの時間つぶしに作ってた“コチョコチョ君”の試作品やから十分な調整ができとらんのやけど、うまいこと動いてほんまよかったわ」

「あた、し、あれに、くすぐられる、予定、だった、んだ……」

 サヤに抱えられているミユウはメイリスがくすぐられている姿と自分の姿と合わせて、思わず身震いをした。

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