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チートな俺が、チープなあたしに変わったら、くすぐりに悩まされる日々が待っていました  作者: 広瀬みつか


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82/109

82.今回は許さない、絶対に…

 薄暗い森の中を三人の少女が歩いていた。

 一人は金色に輝く長髪の魔術族アストリア、一人は癖の強いカールをまいた銀の長髪と丈の長い白衣が特徴的な操雷族イリイナ、もう一人は獣の耳と黄金色の毛がフサフサに生えているしっぽが特徴的な獣人族シュナである。

 彼女たちがなぜ明け方の森を歩いているかというと、ともに旅をしていた不殺族であるミユウとサヤの兄妹を探すためであった。


 彼女たちがいないと最初に気付いたのはアストリアであった。

 いつものように朝早く目を覚ました。

 前日起こった“ミユウ入れ替わり事件”もあり、用心のためにミユウの魔術印を通して彼女の居場所を確認した。

 しかし、なぜか隣の部屋にいるべきミユウの気配がない。

 慌てて部屋を出て、鍵のかかっていないミユウの部屋のドアを開けると、やはり彼女の姿がない。

 もう一度、集中をしてミユウの居場所を探すと町から離れた遠い場所にいる。

 すぐにシュナを起こし、隣の部屋にいたイリイナとサヤを起こしに行ったが、サヤの姿もなかった。

 アストリアたちは急いで外に出る服装に着替えて、ミユウの魔術印を頼りに彼女たちを探しに出たのだった。


 夜が明けたといっても、まだ太陽は昇りきっていない。木々の生い茂る森にはまだ朝日がいきわたっておらず、視界も大分遮られていた。

 そんな中を小さなランプの光で照らし、シュナを先頭に進んでいく。

「あともう少しでミユウさんがいらっしゃる場所に辿り着きます」

「えらい奥の方におるんじゃのう。そこから移動はしとらんのか?」

「はい。私たちが宿を出た時から移動した気配はありませんね」

「ミユウが夜中に逃亡したんとはちゃうみたいやな。もしそうやったら、今も動いてるはずやろうし、もし休んでるいうんやったらアストリアの感知できんぐらい遠くまで行って休むはずやからな」

「でも、もしミユウさんが逃走されているのであれば、私が感知できないほど遠くにいらっしゃったとしても地の果てまで追いかけますよ。そして、この世に生を受けられたことを後悔するほどのお仕置きをします。うふふ……」

 イリイナとシュナは邪悪なオーラがアストリアからあふれ出ていることに気付き、思わず愛想笑いをした。

「だ、大丈夫や。最初の方は逃げようとしてたんかもしれんけど、これだけうちらと一緒におったんや。もう逃げようと考える訳がないで」

「いやですよ、イリイナさん。もちろん私もそう信じています。これはあくまで冗談。本気にとらえないでください。そう、冗談ですから……」

「あはは。それなら安心したわ」

 後ろ姿でアストリアの表情はよく見えないが、いつものように優しく微笑んでいないのだろうとなぜだかわかる。

「しかし、サヤさんはどちらにいらっしゃるのでしょうか?さすがにサヤさんの居場所までは感知できませんし」

「そうやな。ミユウと一緒におってくれたらええんやけどな」

「しっ!みんな静かに」

 先頭にいたシュナはアストリアとイリイナを制止すると耳を立てた。

「二人とも。なんか聞こえんか?」

 シュナに促されると、アストリアとイリイナは耳に手を当てて音を集める。

 すると、なにやら人の声が森の奥の方から反響するように聞こえる。叫び声のようだ。

 しかも、彼女たちに聞きなじみのある声だった。

「これは、ボクたちが進んどる方から聞こえるのう。ということは……」

「急ぎましょう!これはひょっとすると危険な状況かもしれません!」

 三人は声が聞こえる方向へ駆けて始めた。


 アストリアたちが数十分ほど走り抜けると、そこには木の生えていない小さな空間があった。

「これは一体……」

 そこにはアストリアたちが探していた少女二人が、彼女たちが想像していなかった状況に置かれていた。

 黒い長髪の少女ミユウは下着姿で、両手を木の枝に吊るされた縄で拘束されている。その上、体をくねらせたり、足をジタバタさせながら笑い悶えていた。

 その傍らで肩ほどの長さのある黒髪の少女サヤがミユウと同様に下着姿で倒れていた。

「ミユウさん!サヤさん!大丈夫ですか?!」

「あひゃひゃひゃひゃ、み、みん、な、た、しゅけ、いやははははははははは!」

「今助けます!」

「近づいたら、だめえあはははははははは!」

 アストリアたちがミユウを助けようと近づこうとするが、当のミユウがそれを止めた。

「どうしてじゃ?早うせんかったら笑い死んでしまうで」

「いひひひ、しょ、しょれ、を、見てえははははははははははは!」

「え?どちらのことですか?」

 アストリアはミユウの周囲を確認する。

 すると、ミユウとサヤの間に二つのものが転がっていた。一つは手のひらサイズの空瓶、もう一つは液体が入った霧吹きだった。

 アストリアは空瓶と霧吹きを手に取り、そこに張られたラベルに目を通す。

 瓶の方には“取り扱い注意”の文字が、霧吹きの方には虫のイラストにバツ印が描かれている。

「これは何でしょうか?」

「なんやどっかで見たことあるような、ないような」

 アストリアの後ろから覗き込んだイリイナはこめかみに指をあてて、記憶を探っていく。

 すると、二人の後ろから何かが倒れる音がした。

 二人が振り返ると、シュナが自分のしっぽを両腕で抑えながら笑い悶えていた。

「どうしたんや!」

「あひゃひゃひゃひゃ、な、なんじゃ、しっぽが、しっぽがあははははははははは!」

「ミユウさんと同じように笑い悶えている……。もしかしたら、こちらの瓶に入っていたものに何か関係があるのではないですか?」

 アストリアがミユウの目の前に瓶と霧吹きを見せた。

「か、体に、ふきかけ、いやはははははははははは!は、はやくーーーー!」

「こちらを体に吹きかければいいのですね?」

 アストリアは霧吹きの中の液体をミユウの全身に吹きかける。

 すると、ミユウの笑いが徐々に収まり、そのまま眠るように気絶した。

「アシュトリア!ボクにも、ボクにもしょれを、あはははははははははは!」

「わかりました!」

 地面で笑い転げるシュナの体に液体を拭きかけると、ミユウと同じように彼女の症状が治まった。

「はあ、はあ、し、死ぬかと思った……」

 シュナは息を整えながら、自分のしっぽを毛繕いする。

「ああ!思い出したわ!“くすぐりノミ”や!」

「“くすぐりノミ”ですか?」

「そうや。よう拷問とかで使われるんやけど、瓶の中に入ったそいつらの卵を体にまくと、人肌で孵化して全身をくすぐるんや。昔、仕事の依頼人の学者から聞いたことがあったわ」

「なるほど。何者かがミユウさんの全身にその卵をまいて拷問をしていた。そのミユウさんにシュナさんのしっぽが当たり、一部がシュナさんの体に移ってしまったということですね。ということは、この液体は専用の殺虫剤といったところですか」

「う~。とんだとばっちりじゃ~」

「しかし、どなたがミユウさんをこんな酷い目に遭わせたのでしょうか?ミユウさんは気絶されて、事情を聞き出せそうもないですし……」

「そんなん考えるまでもないやろ?なんせ、そこに第一級の容疑者が眠ってるんやからな」

 アストリアたちの目線が一つの場所に集中する。

 そこには気持ちよさそうに眠るサヤの姿があった。

「確かにそう考えれば合点がいきますね」

「まあ、今はこいつらを宿に連れて帰ろうや。事情聴取はその後でもええやろう」

「そうじゃのう。ボクの大事なしっぽをわやにした落とし前はしっかりつけさせてもらないけんのう」

 その後、ミユウを拘束する縄を解き、イリイナとシュナが下着姿の二人を背中に背負い、宿まで戻っていった。



 ---



 場所は変わり、ミユウたちが泊まっていた宿の一室。

 朝の陽ざしが差し込むこの部屋で黒髪の少女サヤが目を覚ました。

「う~ん。よく寝た、ってあれ?」

 サヤは毎朝するように背伸びをしようとしたが、思うように腕が動かない。いや、腕どころか全身が思うように動かない上にところどころ痛い。

 その理由は少し時間が経ってわかった。

 下着姿の彼女は手足を椅子に拘束されていたのだった。

 両手首は椅子の後ろ脚に、両足首は椅子の前脚に荒縄で括りつけられ、お尻を突き出した状態だった。

「なんなのこれ~~」

「目が覚めた?随分気持ちよさそうに寝てたじゃん」

「ん?誰?」

「あたしの声を忘れるなんてひどいな」

 サヤの背後にいた声の主が彼女の前に現れる。

 それはサヤの実の兄ミユウであった。

「にぃに!まさかにぃにがこんなことをしたの?」

「正確にはアストリアたちに手伝ってもらったんだけどね」

「かわいい妹にこんなことをしていいと思ってるの?」

「よく言うよ。人を森の奥に連れて行った上に木に縛り付けて、あんなものをかけて拷問したのは誰だと思うの?何度かお花畑が見えたんだからね」

「何のことかな~?」

「思い出せない?それじゃ思い出せるように手伝ってあげるよ」

「え?手伝うって何を……」

 ミユウは露わになったサヤの両わき腹に手を伸ばして、くすぐり始める。

「あはははははははははは!や、や、やめてーーーー!」

「どう?思い出せた?」

「思い出せた!思い出せたからーーーー!」

 サヤの言葉を受けて、ミユウはくすぐりの手を止め、再びサヤの目でしゃがみ込む。

「はあ、はあ、ごめん。でもね、記憶はあるんだけど、なんであんなことをしちゃったのか、あたしにもわかんないんだ」

「うん。その理由はイリイナから教えてもらったよ。サヤ、昨日の晩これを飲んだでしょ?」

 ミユウはサヤに茶色いガラス瓶を見せる。

「そ、それはイリねぇに内緒で飲んだポーションの瓶!でも、ちゃんと隠したはずなのに」

「甘いね。サヤのカバンの中に入っていたのを見つけたんだよ。けどこれね、ただのポーションじゃないんだ。イリイナみたいに激務に追われる人が元気を出せるように特別な配合をしたポーションなんだけど、サヤみたいな元気の有り余る人が飲むとね、違う効能が出るんだって」

「違う効能?」

「そう。いきなり気持ちが高揚して、性的な興奮が抑えられなくなるんだ」

「だから、飲んだ後に体が熱くなってきて、あんな大胆なことを……」

 サヤの顔が真っ赤になる。

 自分がやったことを思い出すと、途端に恥ずかしくなった。

「ね、ねえ。今回はほとんどそのポーションのせいなんだしさ、許してくれないかな?」

「何言ってるの?確かにこのポーションがサヤを駆り立てた原因かもしれないけど、それを飲んだのはサヤの意思でしょ?」

「それはそうだけど……」

「それにサヤが正気の時にあの“くすぐりノミ”を用意していたということは、いずれあたしをあれで拷問する気だったんだよね」

「う!」

「それじゃ酌量の余地はないね」

「……手加減してね」

「ダメだよ。みんなからしっかりサヤにお仕置きするように頼まれているんだから。手加減したら今度はあたしがみんなにお仕置きされちゃうよ」

 ミユウはサヤの後ろに移動する。

「ねえ、今から何されるの?やっぱりくすぐりの刑?」

「実はね、“くすぐりノミ”に責められていた時に走馬灯のように昔のことを思い出したんだ。覚えてる?あたしたちが悪さをした時にお父さんからどんなお仕置きをされたか?」

「え?えーっと、なんだっけ?」

「お父さんの膝の上にうつ伏せで寝かされて、お尻を思いっきり叩かれたじゃん」

「あー懐かしい!一回だけじゃなくて、何度も何度も叩かれて、初めて死んじゃうかと思っちゃったんだよね。でもそれが?」

 サヤの問いかけにミユウは「ふふふ」と笑いかけて答える。

「嘘でしょ?まさか嘘だよね!」

「もちろん本気だよ」

「いやだよ!にぃにのあれを受けたら、あたしのお尻がダメになっちゃう!」

「あたしたちの体はどれだけ傷ついてもすぐに治るでしょ?それに安心して。“くすぐりノミ”に長時間くすぐられたせいで百パーセントの力を出せないから」

「よ、よかった……」

「今は九十五パーセントぐらい回復してるかな?」

「もうそれほとんど百パーセントじゃん!」

「よし。早速始めるよ。お尻を動かさないでね。動くと逆に危ないからさ」

「わかったよ……」

 ミユウは一つ深呼吸をすると、右腕を大きく振りかぶり、サヤのお尻をめがけて勢いよくぶつける。

「ふぎゃーーーーーーーーーーーー!」

 サヤの叫び声と一緒に、「パチン」と肉がぶつかる音と、「バキッ」という骨が折れる音が部屋中に響き渡った。

「あ、あ、あ……」

 肉を裂き、骨を砕くミユウの一撃を受けて、サヤの意識が飛ぶ。

 数分かけて傷ついたお尻は白い煙をあげて治っていく。

「に、にぃに、もう、反省したからさ、これで、許して……」

「許すわけないじゃん。お父さんだって百回続けてやってたでしょ?あと九十九回するよ。大丈夫。完全に治ったところを確認して次の攻撃をするから」

「そ、そんな~」

「もうそろそろ治ったかな?さあ次行くよ!」

「やめて……」

 ミユウは再び右腕を大きく振りかぶり、平手でサヤのお尻を打つ。

「えい!」

「ぎゃーーーーーーーーーーーーーー!」


 その後、九十八回のサヤの叫び声が響き渡った。


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