80.これも愛、だよね…
「う~ん……」
ぼんやりとした意識のままミユウは目を覚ました。
頭を上げて周りを見渡してみるが、真っ暗で何も見えない。
直接肌に触れる冷たい空気で屋外であることが、人の声の代わりに聞こえる虫や鳥の声からなんとなく町から外れた森の中なのだと推測できる。
背中やお尻辺りにとげのようなものがチクチクと刺さっているし、上に挙げられた両手首を強く縛られている。
どうやら裸の状態で拘束されているようだ。
「はぁ。また拘束されちゃったんだ……」
なんとも情けない話だ。
昼間にイリイナたちに捕まり、ひどい目に遭ったというのにこの様だ。
要塞から逃げ出してから何度も拘束されている。きっと気が緩みきっているのだろう。以前サヤに言われた通り、自分に“捕まり癖”がついてしまったのかもしれない。
「サヤ?……あ!」
気を失う前に起こったことを思い出す。
宿の浴室で汗を流していたところサヤが突入してきた。彼女となんだかんだ話をしていた途中でいきなり後ろから抱き着いてきて、そして……。
「くそぉ、サヤめ……サヤ!どこ!ここにいるんでしょ!」
ミユウは憎き我が妹の名を叫び、周りを見渡す。
「こーこーだーよ♪」
「?!」
サヤが視界の左側からいきなり顔を出し、ミユウの唇に自分の唇を重ねる。
ミユウは逃げようともがくが、両手で頭を抑えられて身動きが取れない。
一分間にも及ぶ口づけを終えて顔を離すと、サヤはぺろりと舌なめずりをした。
「ごちそうさま♪」
「な、何するの!」
「あたしがいるって気づいてくれたご褒美だよ。やっぱり愛の力は偉大だね」
「あたしは浴室であなたに気絶させられて、今こうして拘束されている。その実行犯のあなたがここにいると思うのは当たり前でしょ」
ミユウの味気ない答えに、サヤは呆れたように肩を落とす。
「夢がないなぁ~。もっとロマンティックな考え方はできないの?」
「何が夢よ!ロマンティックよ!そんなバカなことを言ってないで早く拘束を解きなさい!」
「やーだよ。すぐに解放したら、ここまで連れてきた意味がなくなるじゃん。本当に大変だったんだよ。体を拭いて、下着をつけて、誰にも気づかれないように宿から出して」
「そこまでの苦労をして何がしたいの?」
「えへへ……」
サヤはその場で立つと、ミユウから距離を空ける。
「にぃにはあたしたちの中から誰かをお嫁さんに選ぶでしょ?」
「そのつもりだよ。でもそれはもっと先の話。今は答えを出すつもりはない。前にもそう言ったじゃん」
「それじゃダメ。きっと、いや絶対にあたしを選んでくれない。血の繋がった妹であるあたしをね。そんな負けが見えきってる勝負、あたしには耐えられないよ。負けず嫌いのにぃにならこの気持ちわかるでしょ?」
「そ、そんなことは……」
「ないって言える?あたしのこともお嫁さん候補の一人として考えてくれる?」
サヤは力強くミユウを見つめ、ミユウはそれから目を反らす。
サヤを選ぶことはない。それをミユウ自身理解している。それだからこそ目を合わせることができなかった。サヤの真っ直ぐな想いを裏切る答えを口にすることができなかった。
そのミユウの態度からサヤは何かを察したのか、悲しそうに目線を下ろす。
「やっぱり……だよね。再会した時からそう言ってたもんね」
「……」
「でも諦めないよ。あたしも十年間待ってたんだ。だーかーら……」
サヤはミユウに向けてニコッと微笑む。
「ここで誓ってよ。あたしをお嫁さんにするってさ」
雲の間から漏れ出した月明かりに照らされたサヤの表情から妙な不気味さを醸し出す。
「……は?」
「だからさ、ここであたしをお嫁さんにするって誓ってよ。そして、アスねぇたちの前で発表してよ」
「ち、誓うわけないでしょ!というか、みんながそんなことを認めるわけない!」
「それはどうかな?にぃにの口から聞けば、案外認めてくれるんじゃないかな?」
「うっ……と、とにかくそんなこと誓わないよ」
「ねぇ大事なこと忘れてない?」
「?」
「ここにいるのはあたしとにぃにだけ。町から離れた森の奥だからどれだけ大声を出しても誰も来ない。そして、にぃには身動きをとることができない……どう?この意味が分かる?」
サヤは拘束されたミユウに近づく。
そして、ミユウと向かい合うように彼女の太ももの上に腰を下ろして、顎をグイっと上げる。
「つまり、今のにぃにはあたしの好きにすることができるってこと」
「?!」
ミユウの頬に一筋の汗が流れる。
サヤのいう通り、今の自分には彼女に抵抗する術はない。まさに生殺与奪の権を握られていた。
「今から無理やりにでも誓わせてあ・げ・る」
「け、けど、そんなうまくいくかな?あたしの居場所にアストリアたちが気付いて助けてくれるはず。あなたの計画も失敗に終わる。そうなったら、みんなにどんなお仕置きをされるか。それでもいいの?嫌だよね。それだったら早く解放して」
「にぃには気絶していたから気づいていないと思うけど、日付が変わったばかりなんだよ」
「え?!」
「早起きのアスねぇでもあと六時間は起きないだろうね。それだけの間あたしの責めに耐えきれるかな?」
目を見ればわかる。
サヤは本気だ。目的を達成するまで手を抜くつもりはないだろう。
しかし、ここで折れるわけにはいかない。
ミユウは抵抗の意思を見せるようにサヤを睨みつける。
「ふ~ん。言う気はないようだね。素直に言えば、あたしとの楽しい日々が待っていたのに残念だなぁ。じゃあ時間ももったいないし、早速始めようか」
サヤは着ていたシャツの裾に手をかけて、おもむろに脱ぎ捨てた。
目に桃色の下着に包まれた、ささやかながらも柔らかそうな胸がミユウの視界に入り込む。
「な、なにしてるの?!」
「ふふふ。どうかな?アスねぇたちほどじゃないけど、あたしだって魅力的な身体してると思わない?」
そういうと、ミユウの上半身に胸を擦り付ける。
皮膚に当たる柔らかく温かい感触はミユウの理性を激しく刺激する。
「なーーーー!」
「ほらほら~。こんなかわいい女の子にこんなことをしてもらって、うらやましいね~」
「や、やめてーーーー!」
「やめてあげないよ~。ついでにこうしちゃえ!」
サヤはミユウの下半身に自分のやわらかい臀部をスリスリと擦り付ける。
「ぎゃーーーーーー!」
「あ~。にぃに、顔を真っ赤にしちゃってかわいいなぁ~」
「ひ、ひにゃーーーー!」
サヤはお色気責めを一時間程度続けた後、ミユウから上半身を離す。
「は、はひぃ~~」
ミユウは長時間熱湯に浸けられてのぼせたかのように顔を赤く染めていた。
「どう?あたしの女の子としての魅力、気付いてくれた?あたしをお嫁さんにしたいって思ったんじゃない?」
「そんな、わけ……」
「本当?口で言っても体は正直だけど」
痙攣するミユウの右の胸を人差し指でツンツンと突く。
突かれるたびにミユウの全身がビクっと跳ね上がる。
「ははは。やっぱりかわいいなぁ」
「今日のサヤは、おかしいよ。いつもあなたなら、こんな積極的じゃない、のに……」
「そうなんだ。自分でも不思議なんだよ。いつもならこんなこと恥ずかしくてできないはずなのに。けど、今日はなんだか心がウキウキするような、ワクワクするような、今ならにぃにを好きにできそうな気がする」
サヤは目をトロンとさせている。言動といい、表情といい、とても正気とは思えない。
「さて、もう少し遊んでいたいけど、そろそろ本格的にやらせてもらうよ。やっぱりにぃににはこれの方が効き目があるかな?」
両手をワキワキと動かすサヤ。
彼女が今から何をしようとしているのか、予想は簡単につく。
「お願い!正気に戻って!こんなことはやめて!」
「やーだよ。何がどうあれ気分がいいのは本当なの。こんな機会なかなかないんだから。ここであたしをお嫁さんにするって言ってくれたらやめてあげるけど?」
「それは……できない」
「じゃあ遠慮なく……えい!」
ぷにっ!
ミユウの体に再びサヤの柔らかい体の感覚が襲う。
「ひにゃーーーー!」
「これだけじゃないよ……こちょこちょこちょこちょ~」
サヤはミユウの背中に回した両手で両脇をくすぐる。
「ぎゃーーはははははははははははは!」
「どうかな?ここかな?それともここかな?もしかしたらこっちの方がいいかも」
「ぎゃはははははは、だめ、それは、だ、だははははははははは!」
くすぐる場所を上下に移動させる。
ミユウは体をくねらせるが、力強く抱きしめられているせいで逃げることができない。その上、動けば動くほどサヤの体が擦り付けられてしまう。
「これでもダメ?じゃあ、とっておきを見せてあげる」
サヤは左膝を折り曲げる。そして、その先でミユウの股間を小刻みに刺激する。
「ひぎゃああああはははははははははははは!」
体の芯を通して、全身に電気が走り抜ける。一瞬気絶しそうになったが、強烈なくすぐったさがそれを許さない。
「シャヤ!ダメ、し、あははははははははははは!」
「にぃに、覚えてる?ほら、あたしたちが子どもの頃だよ。二人で組み合いの練習をしてた時ににぃにがあたしの両足を固めてさ、こうやってあたしの股間を足で蹴ってきたよね。あの時、あたし死んじゃいそうになったんだよ。けど、それと同じぐらい気持ちよくてさ、なんか変な気分だった。ねぇ教えてよ。今のにぃにはどんな気持ちなのかな?」
「いひひひひ、にゃ、にゃはははははははははは!」
「うんうん。気持ちがいいんだね。じゃあ、もっと続けてあげるよ」
「にゃ、ぎゅ、ああああああああああああああああ!」




