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7.許さない、絶対に…

 町から離れ、静かな流れる森の中。木々は風に揺らされ重なり合う木々の音が心地いい。


 そんな中、一人の少女ミユウ・ハイストロは魔獣によってくすぐり責めにされていた。

「いやああはははははは!ゆ、許してーーーー!」

 ミユウは逃げようともがくが、手足に魔獣ティークがしっかり巻き付いて彼女の動きを完全に止める。そんな彼女の全身を目には見えないところで繊細なティークの筋肉が襲いかかる。

 笑い悶えるミユウの姿を近くにある大きな石に腰掛け、冷たい目で見つめているアストリアがいた。

「ミユウさん、残念です。あなたは私のことだけ見ていただけると思っていたのに」

「違うの、違うの!あ、あれは、体が勝手に、いあはははは!」


 ミユウがくすぐり地獄に陥る原因はこれより1時間前にあった。



 ---



 ミユウとアストリアは森の中の道を歩いているときに前から来た男女4人とすれ違った。旅人間でのエチケットとして、互いにあいさつ代わりに軽く会釈をした。

 その時、集団の中の一人の女性の大きく開かれた胸元にミユウの目が移った。

 心の中に男性の本能があるミユウにとって、それは不可避の行動だったのだろう。


 その一瞬をアストリアは見逃さなかった。

「ミユウさん。ちょっとこっちへ」

 4人が見えなくなったとき、アストリアはミユウの腕をつかみ、強引に森の奥に連れ込む。

 突然のアストリアの行動にミユウは困惑していた。

「どうしたの?こんなところに連れ込んで。早くいかないと、次の町につく前に暗くなっちゃうよ」

「ミユウさんの…もの」

「え?」

 アストリアがつぶやいたが、ミユウには聞き取れなかった。

「ねえ、アストリア」

「ミユウさんの…浮気者!」

 アストリアは右手で指を鳴らす。それを合図にティークが現れるとミユウの上に覆いかぶさり、彼女の手足に絡みついた。

 ミユウは、なぜアストリアがティークを出現させたのか、その意味が分からずにいた。

「待ってよ!どうしてこんなこと……」

「ミユウさんの中には男性の部分があるので、仕方ありません。しかし、私以外の女性の胸を見るなんて……絶対に許せません!」

 ミユウはやっと怒っている理由を理解できた。

「いや、あれは不可抗力というか何というか、仕方がないことなんだよ」

「問答無用!ティークさん、始めてください!」



 ---



 そして、今に至る。くすぐり責めは軽く1時間に及んでいた。

「あの夜、ミユウさんに私の胸をお見せしたときは拒否していたのに。他の女性の胸はよくて、なんで私のはだめなのですか?」

「いひひ、そ、そこなの?あはははは!」

 アストリアはアイトスの宿でミユウにお色気責めをした。その時にミユウはアストリアの豊満な胸をひたすらに拒み続けていた。

 彼女はそれを未だ根に持っていたのだろう。

「それと、これとは、べ、別の話!いひひひ!」

「言い訳は無用です。私はあなたに裏切られました。この繊細な乙女心を傷つけられました」

「あははは!わ、わかったからー!何でも言うこと聞くからー!お願いだから許してー!あははは!」

「え?」

 アストリアは腰を上げ、右側にしゃがみこむ。

「先ほどの言葉、本当ですか?」

「本当!本当だから!」

 アストリアはティークの体を撫でて、くすぐりをやめるように指示をする。

「それでしたら、今晩も添い寝してくれますか?」

「そ、それは、ちょっと…」

 昨晩のトラウマがある。ミユウはもうアストリアとは一緒に寝ないと朝に決心したばかりであった。


 曖昧なミユウの態度を不満に思ったアストリアが小筆を出現させ、彼女の右耳を筆先でくすぐる。

 その瞬間、ミユウの脳にビビッと不快な衝撃が横切る。

「いやーーーあははは!」

「嘘はいけませんね。なんでもいうこと聞くっておっしゃったじゃないですか?」

「ごめんなさい!します!するから、やめてーーーー!」

「約束、忘れないでくださいね」

 ミユウの返事を聞くと、アストリアはくすぐりの手を止める。そして、ティークと小筆を消す。


 くすぐり責めから解放されたミユウは髪と服を乱した体で痙攣させていた。

「えへへ、もう、だめ~」

「そうと決まれば、早く次の町へ向かいましょう!」

 機嫌を直したアストリアはミユウをを無理やり起こし、肩を貸して歩き始める。

 力なく千鳥足で歩くミユウを肩に担いだアストリアは夜が待ちきれずに鼻歌を口ずさむのだった。

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