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チートな俺が、チープなあたしに変わったら、くすぐりに悩まされる日々が待っていました  作者: 広瀬みつか


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62/109

62.ミユウとシュナ、の場合…

 ミユウが目を覚ますと、部屋中が真っ黒になっていた。

 昼ぐらいに新しく用意された宿の部屋に入った途端に疲れが一気に押し寄せた。

 そのせいでベッドの上に倒れてすぐに眠ってしまった。

 その時には外は明るかったイメージがあったから、かなり長い時間眠っていたことになるだろう。

 やはりくすぐりによる体力疲労はかなりのものだ。どうしても慣れない。

「あれ?シュナはどこに行ったんだろう?」

 ふと同室であるシュナの姿がないことに気がつく。

 確か眠る前に“一緒に飲みに行かんか?”と言われたような気がする。

「そうか。きっとみんなで町に繰り出したんだな。あたしも一緒に行けばよかったよ」

 ベッドの上で天井を見ながらぼーっとしていると、ドアをたたく音が聞こえた。

「はーい!どうぞ!」

 返事をしたが、ドアが開く気配がない。

 不思議に思い、ベッドから起き上がってドアノブを回す。

 すると……

「お~い、ミ~ユ~ウ~ちゃ~ん!」

 一人の女性がドアを押し開けるように倒れ込んだ。黄金色の髪と獣耳、そして大きなふさふさの尻尾が目立つその女性、それはシュナ・アルペルトだった。

 しかし、いつものシュナと何かが違う。

 口調もそうだが、なんだか異常に顔が赤い。

「シュナ、酔っぱらってる?」

「…………えへへ」

 ミユウの返事にまともに答えず、シュナはニヤニヤしている。

 誰の目から見ても十中八九シュナは酔っている。

「ミ~ユ~ウ~、ミ~ユ~ウ~」

 シュナはゆっくり立ち上がると、ふらふらになりながらミユウに近寄ってくる。その間も彼女のニヤニヤが止まらない。

 ここで捕まったら、この世の終わりだと直感が囁く。

 ミユウは後方にゆっくりと退きながら逃げる隙を探す。

 シュナとドアの間に距離が開くと、そこまでの導線が目に飛び込む。

(これならすり抜けてドアから逃げられる!)

 重心を左側に倒して逃げ出そうとした瞬間、ベッドの角に腰をぶつけてしまい、その上に倒れてしまった。

「ヤバい!」

 このまま倒れていたらシュナに襲われる。

 急いで上半身を起こそうとしたが、もう遅かった。

 ミユウの上にシュナが飛び掛かり、彼女の両手を力強く押し付けられる。

 怪力自慢の不殺族のミユウに負けないシュナの野生の力には驚かされる。

 いや、今はそんなことはどうでもいい。早くこの状況から逃げ出さないと。貞操がやばい。

 まずは、ダメもとでこの獣と化したシュナを説得することにした。

「シュナ、一回落ち着こう。あなたは今正気じゃないんだよ。冷静になれば自分のやってることがバカなことだってわかるから」

「ボクはいたって冷静じゃ~」

「そんなわけないでしょ!だったら言わせてもらうよ!今のあたしは女なの!今のあたしを襲っても意味がないでしょ!これが理解できないなら、やっぱりあなたは冷静じゃない!」

 ミユウの声掛けを聞くと、いままでニヤニヤとしていたシュナの顔が真顔に変わる。

「そげなこと、わかっとるよ。それに君は何か勘違いしとる」

「え?」

「ボクは君を襲おうとしよるんじゃない」

 この状況のどこに“襲っていない”の要素があるのだろうか?

「どういうことなの?しっかり説明して」

「ボクは今まで君と子が作れたらそれでええと思っとったんよ。じゃが、君がボクを助けに来てくれた時に気が付いたんじゃ。ボクは君を愛しとると思っとることを」

「シュ、シュナ……」

 シュナがそんな風に思っていたとは。なんだか照れくさい。

 あの時のどのタイミングでそう思ったのか分からないが……

「そこで考えを変えたんよ」

「考えを変えた?」

「そうじゃ。ボクは君が嫌がる状態で子作りをするんはやめる」

「そ、そうだよね!だったら、すぐに離して!」

「つまり君にボクのことを本気で好きになれせればええんよ」

「え?」

「ボクが居らんかったら、どうしようもならんぐらいに悩殺しちゃる。その上じゃったら、子作りしてもええじゃろう」

「……あの~話が全く見えないんだけど~」

「ミユウ知っとる?獣人族には異性を半ば強制的に魅了する技が四十八も伝承されとるんよ。これを全部君にしたらどうなる思う?」

「あわわわわ……」

 そうつぶやくシュナは舌なめずりをしている。その瞳に心なしかハートが見える。

「た、助けてーーー!」

 ミユウは今出せる全力を出してシュナを押し返すと、彼女は後方に飛ばされる。

 その隙にベッドから体を起こして、ドアに向かう。

(これなら逃げられる)

 そう思った瞬間だった。

 ミユウの両手首に冷たく固いものが出現した。それと同時に、起こした上半身がベッドに引っ張られる。

「ふにゃっ!何が起こったの?……ってこれは!」

 手首に目を向けると、太い鉄製の手錠が装着されて、そこから鎖がつながれていた。

 その鎖は小さな黒い穴から出現している。

 これは今まで見たことのある光景だ。

 間違いない、アストリアが魔術で出現させている鎖だ。

「アストリア!アストリアがいるの?!ねえ、なんでこんなことするの?!」

 いくら呼びかけても答えない。ならなぜ鎖が出現しているのか?

 いや、そんなことはどうだっていい。こんなところで拘束なんてされたら……。

「ミ~ユ~ウ~、何があったんか知らんけんど、ここが年貢の納め時じゃ。大人しゅう、ボクの愛を受け入れえや~」

「ひい~~、お願い、やめて……」

 ミユウの制止を無視し、服を脱ぎ捨てたシュナが這いずり上がってくる。

「まずは一手目じゃ。うふふふ……」

「一体、何を……ひ、ひにゃ~~~!」

 シュナは顔を近づけて、右耳から首の右側をペロッと舐める。

 その上、腰回りをフサフサの尻尾で撫でまわす。

「シュ、シュナ~、お願いでしゅ、や、やめて~」

「どうしたん?ボクのことが好きになったん?」

「しゅれは~~」

「じゃったら、やめるわけにはいかんのう。大丈夫じゃ、これからもっと気持ちええことがまっちょるけんのう~」

「い、いにゃ~~~~!」

(ダメだ、もしこれ以上何かされたら頭がどうにかなりそう!あたしも獣になっちゃう!)

 自分の理性が危うくなったその時、思いも寄らないことがまた起きた。

「「ひにゃ!!」」

 ミユウとシュナの悲鳴が部屋に響きわたる。

 なぜなら、彼女たちの上に重い何かが覆いかぶさったからだ。

 今までの経験のから学んで理解した、この危機感のある感触。

「ティーク!なんでティークが!やっぱりアストリアがいるんじゃないの?お願い!いるんだったら出てきて!」

 やはり返事がない。

 認識阻害で隠れているのか?しかし、彼女がそんなことをするメリットなんてない。

(まあ、なんとか助かった。……のかな?)

「何じゃ!ボクとミユウの愛づくりを邪魔するもんは誰じゃろうが許さんけんのう!」

「そんなこと言ってる場合じゃないよ。シュナ。あなた、結構危ない状態にいるから」

「どういうこと……ティ、ティーク!」

 気づいていなかったの?どれだけ自我を失っているの。

「そうだよ!今までの経験上、ティークが現れるということは……わかってるよね?」

「あわわ……。ボクもティークに捕まってしもうとる。ミユウ、どうしよう?」

「お願いだから暴れまわらないで!そ、その、体が……」

 暴れるシュナの柔らかく温かい肌の感覚を直接感じてしまう。

「そんなこと言いよる場合ちゃうじゃろ!」

 そうこう言っている間にミユウたちの手足がティークに拘束されていく。

「いかん!ティーク、話を聞き!うちはミユウじゃないんじゃけん、うちだけでも放して!」

「あっ!自分だけ助かろうとするなんて卑怯な!こうなったら、シュナも巻き添えだ!」

「「ぎゃあああああああああああはははははははははは!」」


 こうして、ミユウたちは理由も分からずくすぐり責めに遭うのだった。


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