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チートな俺が、チープなあたしに変わったら、くすぐりに悩まされる日々が待っていました  作者: 広瀬みつか


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55/109

55.朝を迎える、そこで…

「……にぃに。にぃに」

 自分を呼ぶ声に意識を取り戻す。

 目を開くと、突き刺さるように光が差し込む。

 頭がガンガンと痛むし、全身の肌がヒリヒリする。

 この感覚は要塞の中でも何度も体験したことがある。どうやら一度殺されたようだ。

「あ、起きた。大丈夫?意識はっきりしている?あたしのこと忘れていないよね?」

 ミユウの顔を覗き込む少女に対して答える。

「……変態ドSブラコン妹」

「へえ、にぃには日頃あたしのことをそんな風に思っていたんだ」

 ニコニコと笑う彼女の両手がワキワキと動かすと、ミユウの両腰を掴んでくすぐり始める。

「こちょこちょこちょ~」

「あははははは!ごめん!サヤ!あははははは!」

 数秒間くすぐると、サヤはその手を止める。

「もう!覚えているんだったら名前で呼んでよね!」

「はあ、はあ、あのね、生き返ったばかりなんだから、いきなりくすぐらないでよ」

「それだけ大声で笑えるんだったら問題ないね。本当にぃに“捕まり癖”がついてるんじゃない?治した方がいいよ」

「“捕まり癖”って何?!本当に治せるもんなら治してるよ!」

 ゆっくり上半身を上げる。体の痛みがいつの間にか消えたが、まだ頭の痛みが残っている。

「にぃに、記憶の方は大丈夫?」

「昨日のことはぼんやりしてるけど、それより前の記憶だったらなんとか」

 不殺族は一度殺されてよみがえった瞬間、殺されたその日の記憶があいまいになることがある。

 とりあえず、昨日の朝のことから順番に思い出そう。

 “ナクトリス”に辿り着くとサヤが待っていて、シュナがいなくなったと教えられた。アストリアとサヤが町にサヤを探しに行き、自分は宿で待っていると、武装した男たちと出くわして彼らに捕まってしまう。シュナの居場所を聞き出すために彼らから拷問されていると、彼らの棟梁と一緒にシュナが現れた。

 そして、シュナから“仲間じゃない”と言われてしまって、その後に棟梁によって殺されてしまった。

 やっと昨日のことを鮮明に思い出すことができた。

「あたしが殺された後どうなったか知ってる?」

「うん。知ってるよ。拷問が始まる前から隠れて見てたからね」

「見てたの!じゃあ、その時に助けてよ!」

「まあ、そんなに怒らないでよ。いろいろ事情があったんだから。そんなことより、にぃにが殺された後の話をするね」

 サヤが言うには、ミユウはヤグラに首を飛ばされた後に拷問器具から外されたそうだ。

 そして、全身に油をかけられて、骨が粉々になるまでに燃やされた。彼らなりの埋葬方法らしい。

 シュナたちはミユウに火をつけた後に森の中に立ち去っていた。

 ミユウの体が元に戻るのに6時間はかかったという。さすがの驚異的な再生力をもつ不殺族でも骨も粉々になった体を戻すにはそれだけの時間がかかる。

 

 ふとシュナのことを思い出す。

 彼女はミユウに“仲間じゃない”と言い放った。殺されたことより彼女のあの言葉の方がよほど精神的にこたえる。

「サヤもシュナのこと見ていたんだよね。あれを見てどう思う?」

「どう思うって?」

 サヤがキョトンとした顔で聞き返す。

「シュナはあたしに“仲間じゃない”って言ってたけど、あれは本心じゃないと思うんだよね。けど、それに確証はなくて。どういう風に考えたらいいか分からなくなって……」

「あ、そうか。まだにぃにに伝えてなかったんだっけ?」

「ん?」

「シュナさん、あたしたちに協力してたんだよ」

 サヤが当たり前のように答える。

 彼女の言葉を一瞬受け入れることができなかった。

「ちょっと待ってよ!それはどういうことなの?」

「一旦落ち着こうよ。ここで話してもいいんだけど、アスねぇが町で待ってるからそこで詳しく説明するよ」

「わかった……」

 ひとまず立ち上がり背伸びをする。

「じゃあ早速案内して、サヤ」

「うん。けど、そのまま町に行くつもりなの?」

「え?そのつもり……キャ!」

 自分の体を見下ろすと、何一つ身に着けていない生まれたままの状態だった。ある意味生まれ変わったのだから、その例えは的外れではないことだが。

 とっさにその場でしゃがんで体を隠した。

「一応服を持ってきているからこれを着て。にぃにが露出癖があるなら無理に止めないけど……」

「着るよ!着るから服貸して!」

 サヤが持っていた服を半ば強引に奪って、急いで服を着る。

 そして、アストリアが待つ町に向かった。


 ミユウとサヤはナクトリスの町に到着した。

 向かったのは昨日ミユウが捕まった宿だった。

 一応警戒のために周りを確認したが、あの男たちの気配はなかった。

 シュナが見つかったことで、用がなくなったからだろう。

 宿に入ると、宿主や従業員たちが幽霊を見るような顔でミユウを見ていた。

 それもそうだ。物騒な男たちに気絶させられたまま連れていかれたのだ。無事に帰ってくると思うはずがない。

 彼らの目線を全身で受けながら二階の部屋に向かい、ドアを開ける。

 そこにはアストリアがいた。

「アストリア、た、ただいま……」

 ミユウを見つめるアストリア。

 理由はわからないが、彼女は笑顔なのに、怒っているように見える。

「ミユウさん、こちらにお座りください」

 アストリアは座っているベッドの右側をポンポンと叩いて催促する。

「え、えっと……」

「はーやーく!」

「はい!」

 アストリアの迫力に圧倒され、すぐに彼女の右側に腰かける。

 それと同時に、彼女はミユウの左腕を掴んで、ベッドに倒す。

 そして、倒れたミユウの上にアストリアが四つん這いになる。

「アス、トリア?」

「ミユウさん。あなたは何度私を心配させるのですか?」

「ごめん。以降気を付ける……」

「以前もそのようなことをおっしゃっていましたよね!」

「今回は本当だから、許して」

「……許しません。今からお仕置きします」

「お仕置き?!くすぐりはやめ……」

 ミユウはくすぐられると思い、とっさに目をつぶった。

 しかし、その後想定していたものとは異なるお仕置きをされた。

 アストリアは倒れるミユウの体を強く抱きしめていた。彼女の女性らしい柔らかい体の感覚が伝わる。

 いつもだったら拒否反応を起こすけど、今回はそんなことはなかった。

 なぜなら、耳元の彼女の鼻をすする声が聞こえていたからだ。

「何で泣いてるの?」

「……ミユウさんのバカ」

 耳元で小さく囁く。

「あの~暑いから、もうそろそろ離れてくれない?」

「ダメです。ミユウさんが反省するまでこのままでいます。それが今回のお仕置きです」

「え~」

 そんなミユウの枕元にサヤが座る。

「にぃに。もうちょっとこのままでいさせてあげて。部屋に帰ったらにぃにがいなくて、一晩中泣いていたんだからね。それだけ心配させたんだからこれくらい」

「余計なことを言わないでください」

 シュターナリクスの件もあるから、アストリアも心配していたんだろう。本当に申し訳ない。

 ミユウはアストリアの気が済むまで彼女に身を委ねていた。


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