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チートな俺が、チープなあたしに変わったら、くすぐりに悩まされる日々が待っていました  作者: 広瀬みつか


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44/109

44.作戦開始、けど…

 正午になる前、イリイナとテイラはシュミルーク邸前で立っていた。

 巨大な門には多くの細工が凝らされ、その向こうには白い壁で覆われたこれまた巨大な建物が建っている。

 いままでの仕事で様々な豪商の邸宅を見てきたが、それらをはるかに凌駕する邸宅にイリイナは恐縮していた。

「どうした、イリイナ?驚いて声もでんか?」

「う、うるさいな!でも、さすがは貴族の邸宅といったところやね」

「そうやろ、そうやろ。俺もこういうとこはまだ慣れんわ、どうも」

 テイラは頭を掻きながら、大笑いをする。

 着飾っていても、こういうところは変わらない。

 テイラは襟を少し整えて、門の右側で立っている守衛に国家技師のバッジを見せ、自分の名前と要件を伝える。

 それを聞いた守衛は取り次ぎのために邸宅内に入る。

 しばらく門の前で待っていると、重厚な音を立てながら鉄製の門が開いた。

 そこには黒い燕尾服を着た二十代の若い少年が頭を下げて待っていた。

「テイラ様、イリイナ様、お待ちしておりました。準備はすでに整っております。こちらへどうぞ」

「うん。ありがとう。では行こうか。イリイナ」

「あ、ああ……」

 テイラの口調が少し変わった。

 彼らの故郷で使っているしゃべり方ではなく、最近ローラが使い始めた他人行儀なしゃべり方。

 イリイナがいつも対応しとる客ならそうでもないが、皇族や貴族と対応するときには故郷のしゃべり方は毛嫌いされるらしい。

 テイラは国家技師として、その場にあった切替ができるスイッチを身につけたのだろう。

 しかし、イリイナにはそれが難しい。彼が自分の知らない遠いものに感じ、少しだけ寂しくなる。

「どうした?」

「いや、何でもない」

 テイラに呼ばれて、執事の案内に従い邸宅の中に入った。



 ―――



 サヤたちは今暗い部屋の中にいる。

 暗闇に目が慣れると、棚の上に置かれた野菜や肉が置かれていた。

 計画通り、シュミルーク邸の食物庫にいるらしい。

「ここからは別行動しましょう。事前に決めたように地下への隠し階段を見つけたら、この石を3回叩いて話しかけてください。全員揃いましたら、ミユウさんの囚われている部屋を探しましょう。いいですか?」

 アストリアの問いにサヤとシュナが頷いて返事をする。

 緊張して手の震えが止まらない。さっき衛兵を三人倒したときにはこんなことはなかったのに。

 失敗したら、アストリアやシュナ、イリイナ、そしてミユウが危険にさらされてしまうと考えると恐ろしくなる。

「……ひゃう!」

 突然サヤの横腹をシュナが掴んだ。

 思わず悲鳴を出してしまったサヤは慌てて両手で自分の口を塞ぐ。

「ちょっといきなり何するの?」

「そう緊張しとったらもしもの時にうまく動けんよ。うちら三人がおったら必ず助けることができる」

 シュナの言葉にアストリアが首肯する。

 自分が緊張で固まっていることに気がついたサヤは、自分の頬を叩いて気合を入れる。

「ありがとう。アスねぇ、シュナさん」

 シュナが扉を少し開けて、外の状況を確認する。

「大丈夫じゃ。誰もおらんよ」

「それではお二人ともお気をつけて」

「アストリアもな」

 それぞれの健闘を祈った後、分かれて探し始める。

 サヤは扉を出て、右に曲がる。

 彼女の担当は邸宅の東側にある階段の裏側だ。その近くには警備の控え部屋があり、もしもの時の戦闘に備えて担当に選ばれた。

 邸宅の一番奥にあるだけあり、目的の場所に行くまで時間がかかる。周りを警戒しながらだとなおさらだ。

 何度か人と遭遇しかけながらも、やっと階段裏に到着することができた。

 壁や床を何度もたたきながら確認をしたが、結局見つけることはできなかった。ここははずれみたいだ。

 サヤは近くにあった棚の陰に隠れて、アストリアからもらった魔石を両手で握る。

(大丈夫。きっと二人が見つけてくれるはず)

 心の中で何度もそうつぶやく。

 体を丸めて、二人からの連絡を待っていると、背後に何かがいる気配を感じた。

 後ろは壁で何かが入る余地はない。第一、そこに何かあったのであれば、隠れるときに気づくはずだ。

 ゆっくりと振り返る。すると、いきなり全身を手のようなものが絡みつき、背後に固定される。

「?!」

 何度も引きはがそうともがいてみても、ビクともしない。不殺族の怪力でも外せないとは何て力なのだろう。

 口と鼻を手で覆われて息ができない。頭の中が朦朧としてきた。

 視界が暗くなっていく中で、目の前に見覚えのある少女の姿がいた。

「……にぃ、に?どう、して……」

「うふふ。みーつけた」

 その声を聞いたのを最後に気を失ってしまった。

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