表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チートな俺が、チープなあたしに変わったら、くすぐりに悩まされる日々が待っていました  作者: 広瀬みつか


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/109

38.計画への参加、そこで…

「なんで、こんなことに……」

 拘束から解放されたミユウはレジスタンスメンバーから用意された鮮やかな桃色のドレスに着替えをしていた。

 初めての服に戸惑いながらも、女メンバー二人の協力のもとようやく着ることができた。

 着替えが終わり、部屋から出るとシーラスをはじめとする男メンバー六人が待ち構えている。

「おー!さっきの服でも十分だったが、その服に着替えるとまさにミンクの野郎そのものじゃねぇか。一瞬殺意が芽生えたぜ」

「なんだろう。褒められているんだろうけど、全く嬉しくない……」

 今まで着ていた服は動きやすさをメインにしたボーイッシュなものばかりであったため、今回のドレスのような女性ものの服に抵抗があった。

「もう一度作戦を確認しておく。みんな集まってくれ」

 ミユウはレジスタンスメンバーと一緒に部屋の真ん中に置かれた丸テーブルを囲むように集まる。

 そして、シュターナリクスの地下水道の地図と、どこで手に入れたのかシュミルーク邸の見取り図を広げる。

「まずここがシュミルーク邸だ。ここから地下道を通れば町の奴らに気付かれず中に入ることができる。ミユウさんはここを使って侵入してもらいたい。ハンスとリアはミユウさんを侵入口まで道案内して、そこで帰ってくるまで待機しろ。リザータ・リク・ナイヤは裏手で、他のメンバーは俺と一緒に表側で待機する。

 ミユウさんは邸宅内に潜り込み、二階にあるシュミルーク卿の書斎からそれらしい書類を持ち出したら侵入口に戻り邸宅を抜け出してくれ。それで作戦終了だ。いいな!」

 シーラスの確認の言葉にメンバー七人が頷いて答える。

 しかし、ミユウには不安が残った。

「当のミンクが邸宅にいたらどうするの?」

「それは大丈夫だ。あんたが着替えているうちに軽く仲間に情報を調べに行かせた。あの女は他の貴族の邸宅に行って夕方まで帰ることはないらしい。もし、家の奴らに聞かれたら『忘れ物を取りに来た』とでもいえばいいだろう」

「それでも失敗することもあるんじゃ……」

「その可能性が高いだろうな。もし作戦失敗した時はこれを握りつぶしてくれ」

 シーラスから二センチほどの小さな種を渡される。

「こいつを潰すと、俺たちが持っている種が連動してつぶれる。それを確認したら俺たちがお前の救出に動く」

「なるほど。それは大事だね。絶対に忘れないよ」

 すぐに手元に出せるように、袖の中に種を入れる。

「外部者のあんたに一番あぶねぇ役割をやってもらうのは本当に申し訳ねぇと思っている。しかし、あんたがいないと今回の作戦は成立しない。どうかよろしく頼む!」

 メンバー全員がミユウに頭を下げる。

「みんな頭を上げて。あなた達も命を懸けて戦っているんでしょ?これも何かの縁だし、あたしにしかできないことならできるだけ協力するよ」

「ありがとう!俺たちもできるだけ援護する!」

 シーラスはミユウの手を取り、強く握る。

(あれ?なんだか前にも同じようなこといって大変なことになったような……まぁいいや)

 ミユウとレジスタンスメンバーは円陣を組み、作戦の成功を誓う。


 作戦を確認した後、メンバーはそれぞれの配置に向かう。

 ミユウもハンスとリアの誘導に従い、ランプの灯りを頼りに地下の水道を移動する。

 アジトを出てから十分後、ミユウたちは例の出入り口に辿り着いた。

「ミユウさん、俺たちが案内するのはここまでです。これより先はあなた一人で行ってもらいます。何かありましたらすぐに駆けつけます」

「ありがとう……が、頑張ってくる。」

 二人に背中を押されると、石製の重いふたをゆっくり開けて地下道から出ていく。


 ふたを開けて外を見渡すと、そこには暗い部屋があった。

 人気がないのを確認すると、ふたをゆっくり横に置いて上半身を外に出す。

 目が慣れてくると、そこに棚に多種多様な食料が並んでいた。

「ここが食糧庫かな?」

 ハンスとリアに尻を押し上げられて部屋の中に入る。

 そして、二人の小さなガッツポーズに見送られながら、音を立てないようにふたを閉める。

 暗い中を手さぐりで歩いて部屋の出口を探す。移動するたびに横に広がるスカートが棚に引っ掛かる。

(やっぱりこれ動きづらい。もし逃げ出すとなったら不便だなぁ。できるだけ誰にも見られないように気を付けよう)

 ようやくドアに辿り着くと慎重に開けて、ドアの隙間から部屋の中に光が差し込む。

 目を細めて覗くと、そこには横幅の広い廊下があった。床には赤いカーペットが延々と敷かれており、白い壁には装飾で彩られた額縁に入った絵画が並んでいる。想像した通りの貴族の邸宅だ。いろんな意味でまぶしい。

 廊下の明かりに目を慣らすと、周りを確認しながら部屋を出る。幸い廊下には人影はなかった。

 安心したミユウは食糧庫のドアを閉め、ドレスについた埃を払う。

「食糧庫がここなら2階への階段はあっちか。人と出会う前に早く書斎に行こう」

 気を引き締めながら廊下を歩きだす。急いで入るが、誰かに気付かれても自然に見えるように背筋を伸ばし、自分なりに精一杯のお嬢様を演じて見せる。

 アジトで見た見取図を思い出しながら移動し、玄関前の二階に続く階段の下側に辿り着く。

「確かこの階段を上って左に曲がった一番奥に書斎があるんだっけ。まだ遠いなぁ」

 二階に登るため、一歩を足をかける。

「おや?お嬢様、このようなところで何をされているのですか?」

 背後からいきなり声をかけられる。

「ギクッ!」

 振り返ると、そこには執事服を着た男性が経っていた。

 背丈は一八〇センチほどの痩せ型で、引き締まった紳士服が似合う二十代の青年であった。

「本日はレミニアス卿のご令嬢とのご予定があるとお聞きしていたのですが?」

「あ、あの……そう!忘れ物!どうしても必要なものを忘れてしまいましたので、取りに帰ってきたのですのよ!」

 自分でも合っているのか分からないお嬢様言葉を駆使して返事を返す。

「さようでございましたか。しかし、従者のものに取りに来させればよろしいのでは?」

「え?それはその、少しばかり恥ずかしいものでしたので……」

「それは気が付かず、ご無礼いたしました」

「おほほ。よ、よろしいのですよ。ではこれで……」

(ややこしいことになる前に早く行こう)

 あと一歩で二階に到着するその直前、背後から重たい玄関のドアが開く音が聞こえた。

「私としたことが。エリーにお返しする本を忘れてしまいましたわ」

「お、お嬢様!」

(ん?お嬢様?)

 固まる自分の体を背後の玄関に向けると、そこにはミユウと瓜二つの女性が立っていた。

「あら?なぜ私が?」

「これは一体……」

「あはは……」

 突然の事態に硬直しながらミユウを見つめる令嬢と執事。

 その状況はヤバい!そう察したミユウは彼らからゆっくりと目線を反らす。

「では……失礼します!」

 スカートを掴んでまくると、二階へ走っていく。

「ま、待ちなさい!」

 その姿を見た執事は我を戻し、追いかけてくる。

(どうしよう。二階だと逃げ道はないだろうし。こうなったらあの執事と戦うしかない!)

 体を反転させると、追いかけてきた執事と対峙する。

「観念されましたか?その良い心がけは褒めて差し上げましょう」

「そんなわけないでしょ!」

 邪魔なドレスのスカートの下半分を破り捨て、体を低くして戦闘の構えになる。ミユウお得意の戦闘体勢である。

「その動き、どうやら戦いに慣れているようですね」

「ふん。あなたにはあたしを止めることなんてできないよ」

「それはどうでしょうか?」

 執事は右手にはめていた白い手袋を外すと、右の手の平を床に叩きつける。

 すると、ミユウの足元に影が集まる。

(こ、これは!)

 とっさに危険を感じ、地面を蹴って後ろに移動する。

 しかし、その時には遅かった。

 影から手が飛び出してあたしの右足を掴み、床に背中をぶつける。

「いたたた……。何なのこれ!離せ!」

 右足を引っ張るが、強い力で掴んで離さない。

 慌てているミユウの背中に影が移動し、そこから無数の手が飛び出して彼女の全身を掴み床に拘束する。

「は、離してーーー!」

「そういうわけにはいきません。あなたにはいろいろとお聞きしたいことがありますからね」

 服を整えながら執事がミユウに近づく。

「早めに白状された方が身のためですよ?」

「い、言わない、絶対に……」

「仕方ないですね。女性を、ましてやお嬢様と瓜二つのお方を痛めつけるのは本意ではないのですが……」

 執事はミユウの目の前でしゃがみ込み、手袋を外した右手で彼女の首を掴んだ。

「待ちなさい、ジーク!」

 廊下の向こうからドレス姿の少女が歩いてくる。ミユウに似たその人物はミンク・シュミルークである。

「そのお方は私がお預かりいたします」

「お嬢様……またでございますか?いいかげんにしてください。もうそろそろお控えにならないと……」

「仕方ありませんか。これはどうも私自身では止めることができないのですもの」

 ミンクはミユウの顎を掴むと、互いの鼻同士が触れ合うほどに顔を近づける。

「それにこのようなお方、手放したくありませんわ」

「あわわ……」

 顔を紅潮させて微笑むミンクの表情にアストリアと似た狂気を感じる。

「はあ。まったくお嬢様には困ったものです。わかりました。今回で本当に最後ですからね」

「ありがとう!ジークならわかっていただけると思っていましたわ!」

「た、助け……」

 助けを請おうとすると、執事はミユウの目の前で指を鳴らす。

 その瞬間、睡魔が襲う。

「うふふ。大丈夫ですよ。私が優しく可愛がってあげますからね」

(あ、これ、ヤバ、い……)

 消えゆく意識の中で聞こえたミンクの言葉に、自分の先の絶望を予感するミユウであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ