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チートな俺が、チープなあたしに変わったら、くすぐりに悩まされる日々が待っていました  作者: 広瀬みつか


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33/109

33.あの日も思い出、いつから…



 ミユウたちを見送ったサヤはアスねぇと泊っている部屋にいた。

 ミユウがつい先ほどまで横になっていた自分のベッドの上で腰を掛けて、ぼーっとしながら3人が帰るのを待つ。

「みんな、いいなぁ。マッサージ気持ちよさそうだし、あたしも行けばよかったかな?けど、くすぐったいのは嫌だし……。やっぱりあたしはまだ子供なのかな?」

 自分のシャツの胸元を人差し指で開け、胸を覗き込む。

 下着がつつむささやかな膨らみ。ミユウたちのものと比べると、その差は歴然だ。例えるならば、山と平野。

 我ながらなんとも寂しい。

「アスねぇもシュナさんも胸が大きいのに、あたしの胸は……」

 ふと自分の胸を二の腕で挟み、谷間を作ってみる。

 しかし、アストリアやシュナに及ばない。

 その事実にむしゃくしゃする。

「というか、何でにぃにの胸もあんなに大きいわけ?!絶対におかしいじゃん!」

 ベッドの上に背中から倒れて手足をじたばたさせ、自分の中の憤りを晴らそうとする。

 しかし、一層に晴れることはなかった。むしろむなしくなり、大の字になる。

「これじゃ、あたし、にぃにから一人の女性として見られない。にぃにを取られちゃう。そんなの……絶対嫌だ!」

 おもむろに手元にあった枕を掴み、壁に向けて投げつける。

 枕が壁にぶつかるポンッという間抜けな音が部屋の中に響く。

 まるでサヤの気持ちを表しているようだった。

「あたしの方が昔からにぃにのことが好きだったんだもん…」



 ---



 あたしはミユウと3歳離れた妹だ。

 あたしたちは兄妹であると同時にライバルでもあった。

 村の習慣で他の同年代の子供たちと組手をしていたが、あたしたちが負けることはなかったのだ。

 月一で行われる組手の大会となると、必ず二人が決勝に残る。

 そして、いつも僅かの差でにぃにが勝つ。

 その度に悔しがり、次の大会まで必死に鍛錬をする。そんなあたしの努力する姿をにぃには陰ながらに見ながら見守ってくれていた。

 こうして、いつの間にかあたしたちは自分たちより体が大きい大人たちと台頭できるほどの戦闘力を付けていた。


 そんなあたしがにぃにを異性として好意を持ち始めたきっかけがいつだったのか、はっきりと覚えていない。

 日々切磋琢磨する中で、徐々ににぃにに対する畏敬の気持ちが愛情へと変わっていったのかもしれない。

 そして、幼かったあたしがその気持ちが“恋”なのだとはっきり気付いたのは5歳になったころ、村に他種族が訪れ、にぃにとの縁談を持ち掛け始めたころであった。

「自分の兄が他の女の子のものになる」その不安があたしの中のにぃにに対する異性としての愛情を自覚させたのだ。


 焦ったあたしはある夜ににぃにを森の中に呼んである約束をした。

「もし組手であたしがにぃにに勝ったら、あたしをお嫁さんにして!」

 今思うと、子どもだったにぃににはその言葉の意味を十分に理解できていなかったのかもしれない。だから、勇気を出して持ち掛けたあたしの提案をすんなりと受け入れてしまった。

 当時のあたしはにぃにの心中に気づくことができず、にぃにが提案を受け入れたことが嬉しかった。そして、約束の成就のため、その晩から毎日絶やすことなく鍛錬を続けた。


 にぃにが村から飛び出したのは、この晩から2か月後のことだ。




 ---



 ふと気が付くとサヤは自分が眠っていたことに気が付いた。

「久しぶりに昔の夢を見た。懐かしいな……」

 天井を眺め、自分の胸に手をあてて気持ちを確かめる。

「アスねぇとシュナさんには申し訳ないけど、後から来た人ににぃにを取られる訳にはいかないんだから!」

 勢いをつけて体を起こす。

 すると、さっきサヤが飛ばした枕が床に落ちていたことに気付く。ベッドから降りて枕を取りに行く。

 落ちている枕に手を伸ばそうとすると、その傍らに二枚の布が落ちていた。

「確かこれは……」

 見覚えがある布。それを見ていると、なぜかドキドキする。それはなぜだろう。

 その理由に気づくのに、さほど時間が経たなかった。

「にぃにの着てた部屋着!そうか、さっきにぃにが拾い忘れていったんだな……」

 小刻みに震える手で部屋着を取る。

(にぃにの………匂ってもいいかな?……誰もいないんだし、いいよね!)

 すぅーーーー。

 手に取った部屋着を顔に当て、大きく息を吸う。

「にぃにの匂い~。大好きだよ~、にぃに~」

 何度も何度も自分の顔にスリスリと擦り付け、にぃにの匂いを堪能する。


 コンコンコン。

 突然部屋のドアを3回ノックする音がした。

 驚いたサヤは手にしていた部屋着を投げ捨てる。

「は、はい!」

「私です!申し訳ございませんが、ドアを開けていただけますか?」

「アスねぇ?うん、わかった。ちょっと待ってね」

 アストリアの言葉を不思議に思いながらも、簡単に部屋を片付けてドアを開ける。

「早かったね?もう少しゆっくりしてくるのかとおも……え!にぃに?一体どうしたの?!」

 目の前にはアストリアとシュナに担がれているミユウの姿があった。

「とりあえずミユウをベッドに寝かすけん、手伝って」

「うん。わかった」

 サヤは疲労しきっているアストリアと代わり、ミユウの右腕を肩に担ぐ。

 アストリアが自分のベッドを軽く整えると、その上にミユウを寝かす。

 ミユウを寝かすと、アストリアとシュナは力が抜けるように崩れ落ちる。

「つ、疲れました~」

「マッサージしてもろうたのに、台無しじゃ~」

「ねえ。にぃに、大丈夫なの?何があったの?」

 サヤの問いに疲れ切ったアストリアがマッサージ店での出来事の顛末を説明する。


「なるほど。くすぐったいのに、気持ちよかったからやめることができなかったんだね。もう一体何してんの?」

 サヤはベッドの上で、間抜けな顔で眠っているミユウのお尻をペチンとたたく。

「病み上がりのアスねぇに無茶させて。本当に妹として情けないよ」

「私のことはお構いなく。しかし、意識はありませんから何をいっても無駄ですよ」

「まったく…。ちょっと待ってね。下から水を持ってくるから」

「ありがとうございます」

(本当ににぃには手間がかかるな…。でも、そんなにぃにも好きだよ)

 サヤは一階に水を取りに行くために部屋を出る。

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