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チートな俺が、チープなあたしに変わったら、くすぐりに悩まされる日々が待っていました  作者: 広瀬みつか


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27.平穏な朝、のはずが…

 拘束されてから10日目の朝が訪れていた。

 昨日出会った獣人族のシュナに膝枕してもらったまま眠ったミユウは心地よい目覚めをする。

「ん~よく寝た~」

 ミユウは縛られて腕を伸ばすことはできないが、できるだけの背伸びをする。

 彼女にとって久しぶりのいい朝だ。最近は一晩中くすぐり責めやお色気責めをされたり、変な起こされ方をされたりとまともに起きることができなかった。

「たまにはこんな日があっても罰は当たらな……あれ?」

 違和感がある。

 何か重いものが体に張り付いている感覚がある。ちょうど人一人分の重さだ。

「一体……え?シュナ何してるの!?」

 下に目線を向けると昨日から一緒にいたシュナがミユウに抱きついていた。その上、彼女が着ていた服は地面に散らばっており、生まれたままの状態だった。

「シュナ!起きて!」

 ミユウが呼びかけてもシュナは目を覚まさない。

 それどころか、縄で縛られている部分に自分の体を擦り付けている。

 もし縄がなかったら、精神的に絶対耐えられなかったかもしれない。初めて縄の存在に感謝する。

「く~~~ん」

 犬のように甘えるシュナになんとも言えない気持ちがこみあげてくる。

「あたしの出会う女の子は何で揃いも揃ってこう寝相が悪いんだろう……」

「ミ~ユ~ウ~~~。ペロペロ」

 抱き着いていたシュナは這い上がり、ミユウの首を何度も舐め始めた。

 そして、それに追い打ちをかけるようにシュナのふさふさのしっぽがミユウの足の裏をやさしく撫でる。

「ちょ、や、やめ、やめて!ひゃはは!しょこは!あははははは!」

 ミユウは必死に逃れようと体をくねらせるが、シュナが体の上に乗っかり思うように動くことができない。

「いひひひ、はや、早く、起きて!これ、以上は、む、無理ーー!」


 その時だ。

 ミユウの頭上で何かが落ちる音がした。

 不安な雰囲気に気付いて見上げると、そこにはアストリアとサヤが立っていた。

「あ……」

 二人は冷たい表情でミユウたちの姿を見つめていた。

 それもそのはず。ミユウの上には何も着ていない少女が乗っかっており、ペロペロと首を舐めているのだから。これが室内のベッドの上であれば、完全に言い逃れができない状況である。

「いや~。ミユウさんが寂しがられていると思い、朝早く来てみたのですが…どうやらお楽しみのようでしたね」

 アストリアはニコッと笑っているが、殺気にも似た圧力を漂わせている。

「にぃに。こんなかわいい子にこんなことやらせて……エッチ」

 サヤにいたっては、ミユウを汚物を見るかのような目で見つめていた。

「誤解だって!あたしが、そんなこと、させるわけ、ひゃん!」

 その間も寝ぼけているシュナは幸せそうにミユウを襲い続ける。

「ひゃ!ちょっと!早く起きて!寝てる場合じゃないから!」

「ん~~。あれ?うち、なにしよるんじゃろ……」

 ミユウたちの声でやっとシュナは目を覚ました。

「シュナ。お、おはよう…」

「おはよう、ミユウ。今日はなんかひやこいなぁ」

「それは青空の下で何も着ていないからだよ。あたしも経験したことあるから……」

「ん?何も着とらんってそんなわけ……あ!またやってしもうた!」

「またって?」

「えへへ。ボク、どうやら寝よるときに服を脱いでしまう癖があるらしいんよ。前の仲間にもよう怒られたもんじゃ」

「それはいいから早く服を着て。今あたし以外にも人がいるから……」

「ん?人がおるって……」

 シュナが目線を上げると、二人の少女の姿があった。

 彼女たちから漂う不穏な空気、裸の自分とミユウの現状、それらを鑑みてシュナは自分がとんでもない誤解をさせていることに気が付き、寝起きではっきりしていない脳内が真っ白になった。

「ど、どうも〜。初めまして~。ボク、シュナ・アルペルトいいます」

「はい。初めまして。挨拶をしていただけるのは誠に素晴らしいことなのですが、その恰好はいただけませんね。とりあえず服を着ましょうか」

「は、はい……」



 ---



 シュナは服を着ると、仁王立ちするアストリアとサヤの前でちょこんと正座させられ、その傍らでミユウが縄で縛られたまま地面に寝っ転がっていた。

「では、この方はどなたなのか?どうしてあのようなことになったのか?説明していただけますか?ミユウさん?」

「はい……。この子はシュナ・アルペルトといいまして、昨日死にかけていたあたしを介抱してくれました」

「ふ~ん。朝のあれはにぃにへの介抱の一環だったわけなんだ。かわいい女の子に裸であんなことさせて、いいご身分になったもんだね」

 サヤはミユウの頭の上でしゃがみ込み、ミユウの頬を指先で突いている。

「あ、あれはボクが寝ぼけてしてしもうたことじゃけん、ミユウは悪ないんよ」

「信じられないな~。にぃにが命令してやらせたんじゃないの?」

「だ、だから、あたしが、そんなこと、させるわけ、ないじゃん」

 そういうと、服のポケットから2本の小筆を取り出し、ミユウの顔に近づける。

「本当のこと言わないと、ふふふ……」

「し、信じて!あたしがやらせたわけじゃ、あははははははは!」

 サヤは彼女の両耳の中に小筆の先を入れてくすぐり始めた。

 左右からくすぐったさに襲われたミユウは、打ち上げられた魚のように暴れていた。

「た、たしゅけて!あはははははは!」

「あわわ……」

 傍で妹に拷問されるミユウを見ていたシュナの背筋が凍る。

 もしかしたら自分はとんでもない人たちと関わってしまったのではないか、自分も同じ拷問を受けるのではないか、気が気でならなかった。


「ところで、シュナさん?」

「は、はい!」

 いきなりアストリアから話しかけられ、シュナは耳としっぽをまっすぐに立て返事をする。

 アストリアはシュナの前に正座で座り、彼女と目線の高さを合わせる。

「どうやらミユウさんが危ないところを助けていただいたことは本当のようですね」

 そういうと、アストリアは三つ指を立てて頭を下げた。

「私からも感謝を申し上げます。ありがとうございました」

「いえいえ!ボクは当たり前のことをしただけですけん!頭を上げてつかあさい」

 予想もしなかった突然の行為にシュナは頭を上げるように促す。

 昨晩ミユウから聞いた話から冷血なイメージを抱いていたが、目の前の彼女は自分にしっかりと礼節を通してくれる礼儀正しい女性だった。

 シュナの全身の緊張は一気にほぐれていった。


「いひひ、だ、だれの、しぇいで、危ない、目に、あったと、おもってるの……」

 くすぐられながら抗議するミユウに対して、アストリアがニコッと微笑みながら目線を送る。

「あらあら。ミユウさんはまだ反省されていないようですね。サヤさん、今度は足の裏をじっくりくすぐって差し上げてください。そうすれば、ご自身のなさったことの罪深さをご理解できることでしょう」

「了解!」

 アストリアの指示に従い、サヤはミユウの足元に移動する。

「ちょっと待って!違うの!本当に反省してるから!だからサヤ、足の裏はやめ……」

「昨日ね、アスねぇににぃにをくすぐるときのポイントをいっぱい教えてもらったんだ。早速実践ができるなんて、あたしも運がいいなぁ~。ちょこちょこちょ~」

 サヤはミユウの土踏まずを滑らかな指さばきで撫でまわす。

「ぎゃーーはははははは!ごめんなしゃい!あたしが悪かったでしゅ!だから、やめ、やはははははははは!」

 顔を真っ赤にしながら笑い悶えるミユウをよそ眼に、アストリアはシュナとの話を続ける。

「朝のことはシュナさんが寝ぼけてやってしまったということで間違いありませんか?」

「はい。意識がなかったとはいえ、大変申し訳ございません……」

「いえいえ。いいのですよ。あなたも悪気があったわけでもないのでしょうから」

「そう言うていただけるとありがたいです」

「見たところあなたも旅をされているようですが、お一人なのですか?」

「はい。前まで一緒に旅をしよった仲間がおったんですけんど、けんか別れしてしもうたんです」

「そうですか。あの、ミユウさんを助けていただいたお礼という訳ではないのですが、よろしければ私たちと一緒に行動しませんか?」

「え?ええんですか?」

「はい。ここで会ったのも何かの縁です。それに仲間が多ければ旅も楽しいですし。大きな声では言えませんが、こう見えても私は旅の資金をいっぱい持っていますので、1人ぐらい増えても心配いりませんよ」

「あ、ありがとうございます!実はうち方向音痴で、今後どげにしようか困っとったんです!では、お言葉に甘えさせていただきます。これからよろしゅうお願いします、アストリアさん!」

「そんなにかしこまらないでください。これからは呼び捨てで呼んでください」

「わかった!よろしく、アストリア!」

「はい!シュナさん!」

 アストリアとシュナは互いに強く手を握り合った。


「あれ?もしかして、またライバル出現!これは油断できない……。でもいいや。また楽しくなりそうだし。ね?にぃに?」

「ぎゃははははははは!い、今はそんなこといいから、くすぐりをやめてーーーーーー!」

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