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チートな俺が、チープなあたしに変わったら、くすぐりに悩まされる日々が待っていました  作者: 広瀬みつか


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18.新しい恐怖、それを…

 夜が明け、空が白んでいた。小鳥がさえずり、朝の訪れを知らせる。


 ある一部屋に窓から光が差し込んでいた。

 その部屋のベッドの上には3人の少女が横になっている。

 1人は金色の滑らかな長髪の少女アストリア、1人は銀色の髪を束ねた大人びた少女イリイナ、そして、その2人の間に黒い髪の少女ミユウがいた。


 すやすやと気持ちよく寝ている2人の少女に対し、ミユウはクマを付けた目をぱっちりと開けている。

 ミユウは夜中ずっと起きざるを得なかった。

 アストリアとイリイナから無意識にくすぐり責めを受け、同時に二人の柔らかい感触がミユウを追い詰めていた。

 そして二人の手が止まったのは夜が明ける1時間前のことである。

「やっと解放された~。今回は本当に死ぬかと思った~。何度かきれいなお花畑が見えたもん」

 笑いすぎたのか、疲れたのか、天井を見るミユウの目から一筋の涙が自然と流れていた。



ーーー



 部屋の中に入った光が顔に当たり、大きな背伸びをしながらイリイナが目を覚ます。

「もう朝かいな。いや~ええ夜やったな~。こんな夜はいつぶりやろう?」

「おはよう、イリイナ……」

 ミユウは今出すことができる最大限の弱々しい声で朝の挨拶をする。

「なんや?もう起きとったんかいな。意外と早起きなんやなあ。それにしても、なんでそんなに疲れとるん?十分に昨日の疲れは取れとるはずやろ」

「取れるわけないでしょ……」

 ミユウはボソッとつぶやく。

「どういう意味や?」

「もういいよ……」

 昨夜の文句をイリイナに言おうとしたが、やめておいた。


 ミユウの不自然な姿と態度に、イリイナは頭をかく。

「変な奴やな。まあええわ。あんたとこうやって添い寝できるとはほんまに思わんかったわ」

「あたしも女二人に挟まれて寝ることになるとは思わなかったよ」

「まるで天国におるようやったわ」

「あたしはまるで地獄にいるようだったよ」

 イリイナの言葉にミユウはそっけなく返事する。

「あんな、いちいち話の腰折るんはやめてや」

「はいはい。ごめんなさいね~」

 更にイリイナの言葉に嫌味を添えて、返事をする。

「なんやねん。癪に障るわ~。まあええ。うちが言いたいんは『もう一度あんたと会えたことがうれしかった』ということや。うちもあんたのこと10年間待っとったんやで」

「え?」

 正直イリイナの言葉にミユウは少し驚いた。

 今までのイリイナとは思えないほどの幼気なセリフ。失礼だが、似合わないと思ってしまった。

「うちはアストリアみたいにあんたを探すことはできんかったけど、いずれ救い出そうとは思っとたんや。先越されてしまったけどな」

「イリイナ……」

 彼女もアストリアと同じで囚われたミユウを心配していた。

 そう思うと、胸が少し痛い……。


 ミユウがイリイナに対し、申し訳ないという感情を抱いていた瞬間である。

 イリイナはミユウに顔を近づけ、あごをつまむ。

「仕方ないから今回は離れるけど、次あったときはあんたの心をうちのもんにしてみせたる、どんな手を使ってもな。覚悟しいや、ミユウ」

 そういうと、強引にミユウの唇に自分の唇を合わせる。

「う~!」

 ミユウは突然のことに驚きを隠せなかった。

 こんなことされるのはもちろん初めて、謂わば“ファーストキス”と言うやつだ。

 話では心ときめくものだと聞いたが、それとは程遠い、違う意味でドキドキしたキスであった。

 必死に抵抗しようとしたが、体力が戻り切っていないミユウにはそれができない。


「どうされたのですか?こんな朝早くから暴れるとは……え?」

 ミユウが左側に目線を向けると、アストリアが目をこすりながら体を起こしていた。そして呆然とミユウたちを見つめている。

「ミユウさん、イリイナさん。一体何をされているのですか?」

 ニコッと微笑みながらアストリアがミユウたちに質問する。

「う~~!う~~~~!」

 ミユウは言い訳をしようとしたが、口が塞がっており一言もしゃべることができない。

「へえ~。そうなのですか。お二人は私を裏切るつもりなのですね」

 アストリアは口角をピクピクと痙攣させる。


 イリイナは物惜しそうにゆっくりとミユウの唇から離れる。そして、寝ぐせのついた髪を手でとぐ。

「何言うてるんや?確かに休戦協定は結んだで。けど、よう考えたら不公平やわ」

「何がですか?」

「やって、あんたはこれからずっとミユウといっしょにおれて、うちは当分の間離れんといかん。これぐらいのハンデはもらってもええやろ」

「それはそうですが…。私は、まだミユウさんと、その、キスをしていません。ミユウさんの初めてを奪われてしまっては……」

 アストリアは頬を染め、モジモジする。

 そんな彼女の姿を見ると、イリイナはニヤッと口元を緩めて余裕のある表情を見せる。

「なんや、そうなんかいな。うちはもう済ませてしもうとると思っとったからなあ。まあ、これであんたと対等というわけや」

「そんな~」

 アストリアは見るからに気落ちしていた。

 そして、ミユウを恨めしそうに睨みつける。

「ミユウさんの裏切り者……」

 涙目のアストリアはミユウに聞こえるか聞こえないかの僅かな声量で呟いた。

 しかし、確実にその声はミユウの鼓膜にしっかりと響いていた。

「いや、あたしは悪くないでしょ!イリイナが強引にやったんだから」

「いいえ。抵抗しなかったミユウさんが悪いです。あとで覚えておいてくださいね」

「え~」

 ふん、といじけるように目線を外すアストリア。



 ---



 朝のキス事件後、イリイナは身支度を整えていた。

 その間もアストリアはミユウと目を合わせない。

「あ、そうや。今朝のお詫びいうわけやないけど、あんたにこれ渡しとくわ」

 イリイナは何かを思い出したかのように服の上着の胸ポケットから赤い首輪を取り出し、アストリアに渡した。

「なんですか、こちらは?」

「えへへ。これはなあ~」

 イリイナはアストリアの耳元でささやく。

 ミユウは耳を澄まして会話を聞こうとしたが、結局聞こえなかった。


 話が終わると、アストリアは機嫌を戻したように朗らかな表情になっていた。

「なるほど。それは実にいいものをいただきました。仕方ないですね。これで今朝のイリイナさんのことだけは許して差しあげましょう」

「ありがたき幸せ。あははは」

 二人は固く握手する。

 なんと不穏な握手なのだろう。


「よかった。よかった。それやったら、うちはここで失礼するわ。あ、そうや。これどうしよう~」

 イリイナは頭をかきながら部屋の片隅に鎮座する物体を見つめた。それは“こちょこちょくん3号”だった。

 試験のために部屋まで持ってきたものだが、いざ持ち帰るとなるとなかなかの重作業だ。

「仕方ない。心苦しいけど、解体して持ち帰るか」

 イリイナは工具道具を取り出そうと荷物袋に手を突っ込んだ。

「よろしければこちらを使われますか?」

 アストリアが革製の袋をイリイナに渡し、その中から一つの琥珀色の石を取り出す。

「なんやのこれ?」

「こちらは魔石の一つです」

 彼女は石を“こちょこちょくん3号”に向けて投げる。すると、“こちょこちょくん3号”が緑の光に変換されて、石の中に取り込まれる。

「おお!すごいな!」

 イリイナは床の上に落ちた石を拾うと、それを日光に当てながら観察する。

「このようにこの石を収納したいものに向けて投げつけると、対象物を光に変換して収納することができます。そして、この石を割ると収納されていたものを出すことができます。使い捨てですが、これだけあれば様々なものを持ち歩くときに便利でしょう」

「これ、全部もらえるんか?」

「他にもたくさんありますから。それに先ほどいただいたお礼です」

「ありがとう!これがあれば、持ち運びが楽やわ!」

 イリイナは魔石が入った袋を荷物袋に入れる。


「よし、これでOK!仕事全部終えたらすぐに追いつくから、その日まで元気にな」

 イリイナは部屋に去っていった。



 ---



 イリイナが部屋から去ったあと、アストリアは右手で指を鳴らす。

「にゃあ!」

 それと同時に、ベッドの上でミユウにティークが覆いかぶさり、彼女の手足を拘束する。

「ちょっと待ってよ!だからあれは強引にされたことであって、抵抗ができなかったの!」

「そんな言い訳が通用するわけないではないですか?さて、観念してください」

 アストリアはじりじりとミユウと距離を縮める。

「もうくすぐりだけはやめて!」

「いえ。今回は先ほどイリイナさんからいただいたものを使ってお仕置きします」

「え?」

 アストリアはミユウの上にまたがる。

 そして、イリイナからもらった赤い首輪を抵抗できないミユウの首に着ける。


 首輪を取り付けを完了させると、指を鳴らしてティークを消す。

「なにこれ?外してよ!」

 強引に外そうとするが、ミユウの怪力でもビクともしない。

「外そうとしても無駄です。取り付けるときに魔力を流しました。私の意思なしでは外せませんよ」

 アストリアは後ずさりして、ミユウとの距離を開ける。

「なんなのこれは?」

「さっきもお伝えしたでしょ。こちらはミユウさんをお仕置きするためのものです」

「だからどういうことなの?」

「うふふ」

 アストリアは不敵に笑うと、一つ咳ばらいをする。

「ア、アストリア?」

「それではご覚悟ください。『ビリビリ』」

「え?『ビリビリ』って、ぎゃーーーーーーーーー!」

 アストリアが合図の言葉をいうと、首輪から大量の電流がミユウの全身に流れた。

 10秒後に電流が止まると、全身が黒く焦げて、わずかな電流の余りが走る。

「あ、あ、あ……」

「これは驚きました。思った以上の威力ですね。不殺族のミユウさんでなければ即死してましたよ」

 次第に焦げたミユウの肌が元に修復されていく。

「し、死ぬと思ったでしょ!」

「まあ、それだけの威力があったということです」

「もうこれ兵器じゃん……」

「そちらは私が『ビリビリ』と……あっ」

「ぎゃーーーーーーーーー!」

 アストリアの合図の言葉で再び電流が流れる。

「間違って口にしてしまいました」

「ちゃんと気を付けてよ!」

「すみません。そちらは私が合図の言葉を口にすると、電流が流れる仕組みになっています。イリイナさんのおっしゃるには、1万回繰り返しても大丈夫なぐらいの電気を込めているそうですよ」

(なんと恐ろしい……。イリイナは自分を殺す気なのだろうか?)

 ミユウはイリイナの恐ろしさを再び認識した。

「そちらさえあれば、私が『ビリビリ』というだけで……」

「ぎゃーーーーーーーーー!」

 再び首輪から電流が流れる。

「また間違えちゃいました。テヘッ」

「『テヘッ』じゃないよ!絶対わざとでしょ!」

「そんなことないですよ。どうして私がわざと『ビリビリ』と……」

「ぎゃーーーーーーーーー!」


 その後、アストリアは『ビリビリ』という言葉を20回口にし、その度にミユウの全身に電流が流れていった。

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