ライトレ三題噺
その日俺は初めて街におりた。足に怪我を負い随分と汚れた姿でほつき歩いていると
「その足痛そうだね」
と声をかけられた。幼い彼は優しく手当した後綺麗にしてあげると言って銭湯へ連れて行ってくれた。
「はいこれ」
そう言って差し出されたのは白く濁った水が入った瓶。
「なにこれ」
初めて見る。一体これをどうしろというのだろう。
「牛乳だよ…知らないの?」
「知らない」
「変わってんね。ま、飲んでみて」
飲む?これを?美味しくなさそう。だが貰ったものだ。仕方ない。そう思いながらしぶしぶ口に流し込んだ。
「おいしい」
つい口に出てしまった。ふと隣を見ると彼は自慢げに笑っている。
「おいしいでしょ」
―――その顔は今でもはっきりと覚えている。懐かしいな、そうボヤきながら石となった彼の前で俺は瓶を仰いだ。