バイオレンスクエスチョン・娘 ④
ある日、仲睦まじいかは別として、一つの家族が、娘と国旗のパズルをして遊んでいた。
「これがー、かんぼじあでー、これがーまれーしあー!」
「うん、良くできたねー♪ じゃあ、これはどこかなー?」
娘の相手をしていたのは妻。娘はパズルをはめていく度に嬉々としていくが、妻はどことなく不安な様子を見せる。そこへ夫が顔を出す。
「国旗のパズルを買って正解だったね。こんなに喜んでくれるとは思わなかったよ。……あれ? どうしたの?」
「ううん……。娘が楽しそうなのはいいんだけど、私があまり国旗を知らないから、ちゃんと正しく教えられてるかどうか、不安になって……」
「それ、ネットで調べれば良いことじゃない?」
あまりにも平然とした顔で言葉を返す夫に、妻は苛立ちを覚えてしまう。
「なに言ってんのよ!? ネットで調べるのも、結構大変なんだから!? 大体、国旗の事はあなたの方が詳しいんだから、あなたが教えれば良いじゃない!?」
夫は、妻の言葉を話し半分に聞いているのか、娘のパズルばかりを見て、ある事に気づく。
「ねえ、これなんだけどさ……」
「何よ!?」
「スウェーデンとアイスランド間違ってるよ?」
夫に間違いを指摘された妻は顔を真っ赤にすると、急いでスウェーデンとアイスランドを正しい位置に入れ直し、そのまま夫に食ってかかる。
「わ、悪かったわね! 少し似てるから間違えただけよ!!」
「でもそれ、その国の人に対して、すごく失礼な言い訳だよね」
妻は、夫の至極まっとうな言い分に、ぐうの音もでなくなってしまう。
そこへ娘がある国旗を持って、妻と夫の側に来る。
「ねーねー、お父さん、お母さん」
「んー? どうしたのー?」
「んー? どうしたのー?」
娘はその国旗に向かって右下を指を差すと、両親にとって驚愕の言葉を発する。
「このもんごるの横についてるのって、なーにー?」
次の瞬間、夫と妻は息を合わせたかのように、娘から目を反らした。
誰か……、
誰か……答えを教えて下さい……。
自分で調べろ? はい。