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Requiem  作者: 秋本そら
幕間12
29/32

消えた道

 ——花畑。

 聡美は、かつて咲希が渡っていった、記憶で出来た道があったところに立っていた。

「道よ、死者の渡る道よ、現れろ」

 聡美は叫ぶ。

 現世の時間でいうと、今は十月十五日の早朝。聡美は、咲希が自分の戻りたいタイミングで花畑に戻って来られるように、現世と花畑の間に橋をかけようとしていたのだ。

 ——しかし、何も起こらなかった。

「……嘘でしょ?」

 聡美は思わず、呟く。

「道よ、現れろ!」

 自分の力を思い切り込めて、花畑の力も借りながら、再び橋をかけようとする。

 なのに、道は現れない。

「そんな……」

 思わず、その場にへたり込む。

 自分の力不足と花畑の力の消失を改めて実感する。

 これでは、次から現世に戻ることを望む死者が現れても、現世に戻せないだろう。

 いや、それ以前に、咲希が花畑に戻ってこれなくなってしまう。それだけは、避けたかった。

(あっこ……!)

 聡美が頼れる人は、一人だけだった。


 顕子は、夢を見た。

 夢の中で、顕子は花畑にいた。

「……うちのことを夢の中に連れ出したの? もう、荒っぽいことするねえ、さっちゃん」

「ごめん、あっこ。でも、伝えておかなきゃいけないことがあって」

 夢の中の聡美は、半ば泣いているように見えた。

「内川さんの帰りの道が、渡せないかもしれないの」

「……えっ⁉︎」

 これには流石に、顕子も焦りを隠せない。

「力が足りないの……まだ頑張ってはみるけど、でも、道を渡せない可能性の方が高くて……」

「……そんな」

「もし、渡せなかったら……」

「それ以上言わないで」

 思わず顕子は聡美の言葉を遮る。

「ごめんなさい。ごめんなさい……」

 花畑に、聡美の泣き声が広がっていった。

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