おわりとはじまりの場所
花が咲き乱れる野原を彷徨う少女が、ひとり。
少女が向かう先は、大きな川。
そしてその先にある——。
「あなたには、心残りはありませんか?」
鈴のような声がして、振り返る。
そこにいたのは、白いワンピースの少女。
「あなたは……?」
「私は、この川の渡し守です」
渡し守——それは、渡し舟の船頭を意味する言葉。
しかし、白いワンピースの少女は、どうしても船頭には見えない。
「……渡し舟の、船頭さんですか?」
「いいえ。正確には、渡し守は渡し舟の船頭を指すのですが、この地では船頭と渡し守は別物として扱われています。船頭は渡し舟の船頭を務めます。川の渡し守は川とここを見守るような仕事ですかね。間違ってやってきた者が川を渡らないようにしたり、元の場所に帰したり。あとは船に乗る者の案内もしますよ。そして、今あなたに声をかけたのも、仕事の一環です」
白いワンピースの少女は微笑んだ。
「もしあなたに心残りがあるならば、戻ることが出来ますよ。限られた時間ではありますがね。もちろん、このままあちらに向かっても構いません」
思わず、少女は目を見開く。
「……本当ですか」
「はい」
白いワンピースの少女はうなづいた。
「——戻らせてください!」
少女のその一言が、全ての始まり。




