曇りの日の朝
「きゃっ……」
声を上げて飛び起きて。
見回すと、そこは私の部屋……。
まるで、何事もなかったように、静かでした。
カーテンが、少しだけ光をはらんでいました。
明け方でした。
息を整えるのに、すこしだけ時間がかかりました。
体中がじーんとあつくって、胸元が汗ばんでいて、息苦しくて。
おふとんをにぎる手がふるえていました。
なんだろう?
なんだっけ?
本当はぜんぶ覚えていたのに、どうしてそんな言葉を頭の中で繰り返していたのでしょうか。
そのうちに、考えるのに疲れて、おふとんを頭からかぶって、縮こまっていました。
なぜか、体のふるえがとまりませんでした。
どのくらいの間、そうしていたんでしょうか。
ドアをノックする音が聞こえました。
「姉さん」
ハルの声でした。
私が返事をしないでいると、ハルは私の部屋に入ってきました。
「どうしたの、姉さん」
そういいながら、ハルはカーテンを開けたようでした。
私は、おふとんにもぐりこんだまま、何も言えませんでした。
「あ、僕、先に食堂に行ってるね」
明るい声で、ハルは言いました。
きっと、私が昨日のこと――私がハルの前で泣いたこと――を恥ずかしがってるんだって、思ったんだと思います。
迷子になって、心細くって泣いたんだって。
「まって、ハル」
自分でも驚くほど、よわよわしい声になりました。
「お姉ちゃんね、ちょっと具合が悪いんだ。今日の授業には出られないって、トートン先生に言ってくれる?」
「え、うん、わかった。……姉さん、だいじょうぶ、なの?」
「へーき。ちょっときついだけ。もうすこし、眠らせて」
「うん」
そうして、静かにドアを閉める音がしました。