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霧雨の降る中で

 ふとももにあたる、冷たい水の感触で、目が覚めました。

 雨が降っていました。

 大きな木の根元、枝葉の間から落ちてくる雨粒。

 起き上がって、まだ鈍い痛みを残す――――に触れてみました。

「……ッ」

 おなかに残る、圧迫されるような違和感。

 痛いのを我慢して、――――に指を入れて……。

「ん……」

 どろっとしたものが私の――――から、あふれてこぼれました。

 夢じゃ……なかったんだ……。

 指に付いたそれを、落ち葉でぬぐって、そうして、それ以上、深く考えるのをやめました。

 何があったのかを理解してしまったら、きっと……泣きじゃくって、その場から立ち上がれなくなるような気がしました。

 立ち上がったら、家の灯り、温かい食事、ハルの笑顔が、頭をかすめて。

「家に帰りたい……はやく帰らなきゃ……」

 それだけを考えて、私は歩き出しました。

 しばらく歩くと、遠くから、近くから、私を呼ぶ声が聞こえました。

 顔を上げてみると、雨の降る暗い森の中を、いくつもの淡い光がゆらゆらとゆれているのが見えました。

「ここよ」

 そう言おうとして、でも、声がかすれて、のどを空気が通り抜けるような音がしただけでした。

 私を呼ぶ声が近づいてきて、その中に、ハルの声も混じっているのに気づきました。

 私は、泣きそうになるのをこらえながら、前へ前へ歩きました。

 私の正面から来る光。それが、ハルでした。

 その光は少し立ち止まって揺れたかと思うと、すぐに私のほうへ近づいてきました。

「姉さん!」

「ハル!」

 股のところがズキズキ痛んだけれど、びっこを引くように走って……、

「ハル……ハル……」

 そのまま、崩れ落ちるようにハルに抱きついて、泣いてしまいました。

 ハルの胸に顔を押し当てるようにして、そうして、嗚咽が止まりませんでした。

 私が泣いている間、ハルは、私の髪を梳くようにして頭をなでてくれました。


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