その次の日の昼
次の日のお昼、ミスティが昼食を運んできました。
私は、読み止しの本をベッドの脇の台の上に置いて、小テーブルのほうへ行きました。
椅子に座って、アスパラガスにフォークをさして口に入れようとしたとき、ミスティが私のことをじっと見ているのに気付いて。
「……? ミスティ、どうしたの?」
「え、いいえ。ただ、お顔の色がずいぶん良くなられたような気がして……」
「そう?」
「はい。……あら」
ミスティは何かに気付いたみたいに私の文机のほうへ行きました。
そうして、机の端に積み上げてある本を私に見せるように振り向いて、
「こちら、片付けても、よろしいですか?」
「え、うん。いいよ」
その本は、私が部屋に閉じこもっている間、トートン先生が贈り続けてくれたものでした。
贈られてくるうちに、文机の上の本立てだけでは足りなくなって、私の部屋に小さな本棚が備え付けられました。
でも、今では、はじめの本棚だけでは足りなくなっていて、二つ目の本棚が運び込まれていました。
「どうせなら、はじめから大きい本棚にすればよかったわね」
「はい……でも……」
「ん?」
「はじめから大きなものだと、それだけ長くつらい日が続くと思わせてしまうのでは、と。
だから、はじめは小さくていい、と……おっしゃられて……」
「トートン先生が、そう言ったの?」
「は、はい」
「ふーん……」
私のいじわるな視線に気付いて、ミスティはきっとなりました。
「な、なんですか……?」
「んーん、なんでもないよ」
含み笑いをしながら、そう言って。
私は、また片付けにもどったミスティの後姿を見ていました。
見ているうち、私は、ミスティにどうしても聞きたくなって。
「ねえ、ミスティ」
「はい?」
「恋する、ってどんな?」
「な……」
驚いたように振り向いたミスティに、
「ねえ、いいから」
私が、からかってないって分かったのでしょうか。
「そ、そんなこと言われましても……私にも、よく……」
ミスティはうつむきながら、そう言いました。
「そっか……」
そのとき、私は、ハルの日記のことを思い出していました。
自分のことを、分かろうとしてくれる人がいる。
自分のことを、こんなにも大切に思ってくれる人がいる。
そのことが、とてもとても、嬉しかったときのこと。
「ねえ、ミスティ」
「はい?」
「想ってもらえる、って嬉しいね」
「え?」
「きっと……トートン先生もね、ミスティが気持ち伝えたら、うれしいって思うと思うの」
「そ、そんなこと……」
「ミスティ」
「は、はい……」
「嫌な私とも向き合ってくれて、ありがとう」
ミスティは、私からそんな言葉が出るなんて思っていなかったんでしょうか。
本当に驚いていました。
失礼な話です。……でもいいです。
「ご褒美にね、私が一肌ぬいであげるね」
「いいえ、そんなこと……」
「いいの、するの。まあ、私に任せておきなさい!」
ちょうどそのとき、ドアをノックする音がして、ハルが部屋に入ってきました。
ハルは、ミスティが顔を赤くして思いつめたような顔をしているのに、少し戸惑ったようでした。
私とミスティをかわるがわる見て、
「な、何の話をしてたの?」
「いいえ、あの……」
口ごもるミスティのあとを引き取るようにして、
「ひみつ! 女の子同士の話なんだから!」
私は笑ってそう言いました。
「あ、うん……」
ちょっと寂しそうなハル。
「おいで、ハル。口あけて、ほら!」
ハルの口のなかに、パンを大きめにちぎって詰め込みました。
「どう? おいしい?」
ハルは、口をもぐもぐさせながら、うなずいてくれました。




