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不思議の店の桂 追加

今回は短めのお話。


「もしかして私の中にあるナノマシンが作用したのかな」

 帰宅後、これまでの感覚よりも鋭敏になっていた原因は、以前モゲタンによって脳内に付与されたことによるものかもと思い桂が訊く。

〈そんな作用はないはずだが〉

 モゲタンは美月の脳内で否定。そしてそれを桂に伝える。

「そうなの?」

「そうらしい」

 桂の推測はどうやら外れのようだった。

 気を取り直して戦利品を。

 美月が、もとい稲葉志郎が、気に入るだろうと思って購入してきた文庫本は、桂が思ったような結果にならなかった。

 というのも、美月はそれほど興味を示さなかったのだが、麻実が思いのほか喜んでいた。

「ノダ公の本じゃない」

 そう言って麻実は文庫本を開く。

 たしかに作者の名字は野田だけど、その言い方はどうかと思い桂が苦言を。

「ああ、これあだ名ね。他にも宇宙軍大元帥とかあるけど。えっとね確か、本名が宏一郎だったと思う。この人はテレビ会社に勤めながらSFの翻訳や執筆もしていて世間的には名前を知られていないけど、作品は大抵に日本人なら一度は観たことあるような番組を制作していたの」

「「へー」」

 美月と桂が同時に驚きの声を上げる。

 桂としては、文庫本に目を通した時点でテレビ関係者だろうなとは思っていたのだが、まさかそんな人物とは想像もしていなかった。

 麻実に説明は続く。

「この表紙に描かれているキャラの番組もこの人が創ったの。それでね、スペースオペラの研究家というか、収集家としても有名でNHKの番組にも出たことがあるし、それからこないだ観せた王立宇宙軍にもロケット関係に資料で協力しているの。あ、後これは知る人ぞ知るなんだけど麻生元総理に従兄なの、この人」

「「へー」」

 またも同時に感心の声を上げてしまう。

「それにしても、昔から有力者の関係者がテレビ業界にいるんだな。前からコネ入社とかあったのかな?」

 と、美月が。

「あったんじゃない。だってさ、ノダ公がテレビマンになって最初に伝票に切り方を教わったのが海音寺潮五郎の娘とかいうのを何かに書いていたと思うから」

 海音寺潮五郎というのは昭和の著名な歴史作家。そして件の人物はその次女。

「「そうなんだ」」

 三度目のシンクロ。

 同じなのは声だけではなく、心の中に疑問も一緒だった。

 自分よりも年下なのに、どうしてそんなことを知っているの?

「ねえ、シロが興味が無いのなら、この本あたしが貰ってもいい?」

 美月としても別に絶対に読みたいと思う代物ではない。

「俺は別にいいけど」

「稲葉くんがいいなら、私も異論はないわ」

「やったー。それじゃ後は『レモン月夜の宇宙船』も手に入れないと、それなら今日(きょう)(どまり)亜蘭(あらん)も手に入れて、あっ、でもネットで見ると読むの大変そうだし、それよりも『銀河乞食軍団』も大変だけど集めてみようかな」

 麻実が色々と画策をする。

 そんな麻実を置いておいて、同時に購入した他の本も開いてみる。

「この本の出版社って聞いたことないんだよね」

「じゃあ、ネットで検索してみたら」

 同時に購入した三冊の本を出版元の知識がなく桂が呟いた疑問に、美月が提案する。

 その言葉に素直に従って桂はパソコンを立ち上げ検索する。

 しかし、ヒットが一件もなかった。

 念のため、小説のタイトルで検索するも、こちらもなしのつぶて。

 モニターの前で美月と桂二人して首を傾げていると、

「もしかして別の世界線に桂が行ったんじゃないの。だから、こうしてこっちの世界にネットにヒットしない小説を手に入れてきた」

 という麻実の声。

〈ワタシの意見も同じだな。この宇宙にはワタシの認識していない世界線が多数ある〉

 麻実の言葉には疑問符を持った二人であったが、人知を超えた存在のモゲタンの言葉には妙な説得力を感じ、信じてしまう美月と桂だった。


 追記。

 件の三冊の小説は桂はもちろんのこと美月もいたく気に入り、二人の共通の愛読書になった。



この世界線では「あるある」大事件は起きていまん。

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