黒い澱 2
苛立ちを紛らわせるために女を抱いていた。頭は悪いが身体は良い女だった。
これまで何回も抱いたけど、飽きがこない。
最高とまで言わいが、これまでの中では一番の具合が良かった。
おまけにコッチの要求に、過激なプレイにも応えてくれるし。
「どうしたの? いつもより激しかったよ。機嫌が悪いと乱暴になるんだから。でも、ちょっとハードなプレイも好きだからいいけど」
苛立ちをぶつけても女はさして気にしない様子だった。
「うるさいな」
それが癪に障った。
「ねぇ、いいものあげようか」
「いいから。用は済んだんだから、さっさと帰れよ。いつまでくっ付いてるんだ」
もう出すものは出したんだ、女はもう用済み。
「いいもの上げようか」
「いいから離れろよ」
抱いている時はいいけど、行為が終わった後もくっ付かれるのは腹が立つ。
少し力を入れて強引に引き離す。
が、女は離れようとはしない。
より身体を絡めつかせて、自分の携帯の画面を見せようとした
「ほら、これ。幸運のお守りなんだって。これ持ってるとすんごい幸せになるって美由紀が言ってたよ。あたしもまあ気持ち良いエッチができたし」
携帯の待ち受け画面も見せる。そこに写っているのはゴスロリ姿の美月だった。桂が女生徒へと転送した画像は幸運のお守りとして女子高生の間で密かに人気があった。
少年は少女から携帯電話を奪い取った。
「ちょっと返してよ」
奪われた携帯電話と取り返そうとして少女の手が伸びる。それを振り払い、少女の首に右手を押し当て力を込めた。
「これ誰だ? どうやって手に入れた?」
「し、知らないよ。く、苦しいから放してよ。……ゲホゲホッ……もらいものだから、出所なんか分かんないよ」
苦しみから解放され、入手経路を話した後は少女は泣き出した。
そんなことはどうでもよかった。噂の通りに幸運が舞い降りてきたような思いだった。
「見つけたぞ。やっと、見つけたぜ」
ニヤリと少年は笑う。
さっきまで自分の中にあった苛立ちが一瞬で消えさった。
セックスでの射精の時の快感よりも、もっと気持ちの良い感覚が全身を駆け巡る。
欲しいものが手に入る。
手がかりを手に入れた。
携帯の待ち受け画面。たった一枚の画像だけど、これさえあれば十分だ。
出所を探ればアイツに出会える。
そう考えて、使える人間を総動員して捜索することにした。