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稲穂対ごぢら 3.5


 稲穂は「急げ」という指示を出したが、現在乗車中のジープはレストアしエンジンを乗せ換えてはいるものの、如何いかんせん古い年代物の、旧世紀の車体であり、東名の追い越し車線を走行すれば即座に後続車からクラクションを鳴らされたりパッシングをされてしまうくらいにしか速度が出せない代物であった。

 そんな車で、なぜ出向いたのか? 社用車の空きがこれしかなかったというわけではない。実里の護衛の時に使用した例の黒塗りのクラウンもあったし、もっと速度の出るような車もある。それこそ国内最速かもしれないとい異名を誇る実用車もあった。

 だが、稲穂が今回選んだのはジープ。

 そもそも何故稲穂はジープでの移動を選んだのか?

 稲穂一人で移動するのであれば別に車を使う必要はない。

 普段の足として使用している、都内の移動で重宝しているロードバイク、愛車のビアンキチタンを駆り、国道一号線を疾走、は流石に信号が多くて困難だが、某漫画のアンドロイドのように高速へと強引に侵入し、アウタートップで全力で漕げばジープよりも格段に速く目的地に着くことも十分に可能であった。まあ、ロードバイクで高速を人の力を超えた速度で走行というのは多くの人の目について世間を騒がし、色々と不味いから自転車以外の手段として新幹線での移動、浜岡原発のある御前崎市に近い、静岡駅、もしくは浜松駅で下車してそこから向かうという選択肢もあった。または自身の能力を使用、空間跳躍を連続して行い、多用すると大量のエネルギーを消費するというデメリットがあるのだがカロリー値の高い補給食を多めに持っていけばそれを補える、目的地である浜岡原発へということもできた。

 だが、そのどれも選択せずにジープで移動したのはとある重要な理由があったから。

 その理由とは、とある物を運搬するのに適していたから、であった。

 それ自体は他の車で運ぶことも十分に可能ではあるのだが、万一にでも走行中に警察に停められ、職務質問、中身を見られたら大事になるような代物。そんな物騒なものだから新幹線には、在来線にもだが、絶対に持ち込めない。だからジープに米軍車両のナンバーを付け、そしていつもは着けていない幌を被せ、R、稲穂双方ともに迷彩服を着用して米軍関係者であるかのように偽装工作を施して運用。

 そしてそれを運ぶ必要があったから、稲穂一人の単独行動ではなく、Rという随行者を伴っての移動であった。運ぶだけならば他人の手を煩わせることはないのだが、それを使用した後、回収する必要があった。使ってそのままその場に放置なんていう行いをした場合、社会的な問題に、ニュース、ワイドショーを連日騒がしてしまうような大事に。

 Rを連れて行く主目的は運転でなく、それを回収し、誰にも見られないようにしながら東京へ、会社へと持ち帰ること。

 後は、実里の警護で負った怪我からのリハビリ、仕事復帰も兼ねていた。といってもナノマシンで損傷個所は修復しているので入院前よりも調子が良いのだが。


 捕獲作戦のための包囲網を突破したごぢらはすぐに浜岡原発へと辿り着いたわけではない。

 そこにはタイムラグが。

 上陸にまでは時間の猶予が。

 稲穂としてはこの時間は非常にありがたかったが、如何せん古く速度の出ない車体。

 Rは懸命にジープを走らせるが、

〈間に合わないぞ〉

 脳内でモゲタンの声が。

 ごぢらの移動予測速度とこちらの移動速度を計算し、ジープが原発に到着する予定時間はごぢら上陸の二十分後とはじき出す。

(了解)

 脳内で返事をし、それから、

「先行するから、後は予定通りに」

 ハンドルを握るRに言い、そして後部へと稲穂は移動。

 そこにおいてある大きな荷物の複数を手にして空間を跳躍。

 幾度も空間を跳躍し、辿り着いた場所は原発ではなく自衛隊のレーダー基地。

 そこから海上のごぢらの姿を視認、確認し、持ってきた荷物を降ろしセッティング。

 50口径の弾丸を発射できる大型のライフルの照準をごぢらに向けて構えた。



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