黒い澱
クソみたいな人生を変えたかった。
ガキの頃からずっと碌でもないことばかり。
面白くない、つまらない、思い通りにいかない。
それでも誰かの、力のある馬鹿の下にずっとついてきたからそれなりに役得はあった。美味しい思いもそれなりにした。
最下層の連中よりはよっぽどいい目に遭っていた。
ブスだけど一応彼女はいるし、そいつの身体で色々と経験もした。
けど、もっと相応しい女がいるはず。こんな身体だけで脳みそが空っぽな馬鹿じゃなくて、美人で気立てもよく、何でも許してくれそうな女が。
例えばアイツの彼女とか。
俺よりも、見てくれも頭の中身もはるかに悪いクセに力があるだけで、あんな女を、彼女にできる。最高の女とアレコレできる。
羨ましいと思った。
力がない。だから、こんな理不尽な目に合わなくちゃいけないんだ。
流星の降る夜に、力が欲しいと願った。
こんなことをしても意味なんかないことは十分に分かっているけど。
奇跡が起きた。
力を手に入れた。それもすごく強い力を。
誰にも負けないような無敵の力。
さっそく力を行使した。
これまで全然敵わなかった相手を、赤子の手をひねるよりも簡単に倒した。
それを目の当りにしても理解できない馬鹿な連中が束になってかかってきたが、圧倒的な力の差を見せつけ、連中を全員地面に這い蹲らせた。
これで取り巻く環境が一変した。
この力でなんでも自由に、思い通りになるような気がした。
事実、憧れだった女を簡単に抱くことができた。
それだけでなく、何人もの女が圧倒的な力に引き寄せられるようにくる。そんな女を何人も思い通りにした。
楽しい、面白い、この世の春だった。
誰にも負けないこの力さえあれば。ずっとこんな生活ができる。あんな人生を二度と歩まなくてもいい。
そんな無敵感はすぐに消えてなくなった。
同じような力を持つ連中が他にもいることを知る。
嫉妬が生まれる。この力を持つのは自分一人でいいと思った。この力を与えられた理由は知っている。けれど、そんなものはどうでもいい。他の力も自分のものにしたかった。
この願いもすぐに叶う。近隣に同種の少女が存在した。襲いかかるが逃げられる。
血眼になって探した。再会する。今度は逃がさない。けれど、後一歩のところでまたも手の平からすり抜けていった。
だけど、今度は手がかりを掴んだ。あの少女の顔をハッキリと覚えていた。
暴力で支配した手下を使い、手負いの少女を探すことにした。




