ちょこっとばなし アダルトバージョン
アダルト、大人組のチョコの話。
といってもエロい話ではありません。
前回に続きチョコの話を。
と、その前に簡単なチョコの歴史を。
現在よく知られ、日本国内でよく食べられているチョコレートはヨーロッパで発展したものであるが、元は、起源は南米大陸である。紀元前よりカカオ豆の栽培が始まり、高価な品、貴重な品として、貨幣や税の代わりに用いられていた。そんな貴重なカカオ豆をすりつぶしたのがチョコの始まりであった。このチョコという名前もアステカ民族の言語ナワトル語、ショコラトルが変化したものという説が有力で、その意味は「水」や「飲み物」。また別の説として「熱い」という意味があるという説もあり、またまた別のでは「泡だった飲み物」という説を唱える者も。御託を色々と書いたが結局のところ南米でのチョコは飲み物であり、今現在我々が知るような甘い食べ物ではなかった。薬や滋養強壮のために用いられていたと考えられており、唐辛子をいれて飲んでいた。なお、余談ではあるが唐辛子の唐という言葉に引っ張られて日本人は中国からきた食材と思っているがそれは勘違いである。この唐というのは外の国からきた渡来してきたものという意味であり、唐辛子は中南米が原産である。閑話休題。
さてそんなチョコがいかにしてヨーロッパ大陸へと渡ったかというと、その原因はコロンブスである。歴史的な功罪はともかくとして、彼の行動によって欧州と北南米の航路が開かれ、多くのものが大西洋の東西を渡った。チョコレート、カカオもその一つである。
ヨーロッパに渡ってからもチョコは飲み物であった。それが今のような形、固形の食べ物になったのは産業革命真っ只中の十九世紀。カカオ豆から脂肪分を分離させ、ココアバター、ココアパウダーを作ることに成功。そこから上記の二つに砂糖を加えて、板状のチョコレートが。ここでようやく飲み物から食べ物になり、それまでは上流社会での流通しかなかったチョコが一般庶民に手が届くものへと。
そしてこれは帝国主義の、植民地によってもたらされたものであった。
大量のカカオも、そして大量の砂糖も、植民地とされたアフリカで栽培されたもの。
さて簡易ではあるが、それでも長々とチョコの歴史を語ってきたのは、これを稲穂が、桂、麻実、それから実里に語ったものであったからだった。その仔細を全て書き起こすとこれ以上に長くなり、また所々何度か脱線をしていたために、それこそ膨大な分量になってしまうので、先の文章に割愛。
しかしながらこれはバレンタインデーに語ったものではなかった。
一応その時チョコは出たのだが、バレンタインデー当日ではなく、翌日の日曜日。
これはバレンタインデー当日、社内でレクリエーションイベントとしてチョコフォンデュパーティーが事務所で催され、その準備のために駆り出された社員ではない麻実と実里の慰労をかねた身内だけでの打ち上げパーティー。
社員ではない二人が準備に携わったのは、近くにいたということもあるが、麻実はこういうイベント事が好きであり参加。そして実里は現在大学の研究室でニート状態。端的に言ってすることがなくものすごく暇であったからだった。
実里の都合でちょっと遅めの昼食を食べながら語った話であった。
そして食後はデザートではなく麻実のリクエストであるチョコのカクテルを。
これは以前、桂に作ったものとは違う一品。というのも、麻実は吞みたがるけどそれ程アルコールには強くないので、アルコール度数低めのカクテルを稲穂が調べてチョイス。
今回三人に提供したのは、ホワイトチョコミルク。チョコリキュールをミルクで割ったカクテル。しかし三人全員が同じものではなかった。というのも、先にも書いたように麻実はそれほどアルコールには強くないので参照してレシピよりもミルクを多めにしアルコール度数を低く、そして他の二人はレシピ通りの一杯を。
「さっきの稲穂ちゃんの話を聞いていて、そしてこのお酒を呑んで思ったんだけど、チョコって変な歴史をたどった、不思議な食べ物よね」
「どういうこと?」
「うん、最初は飲み物で、それが時代が経つにつれて変化して固形物になったのに、またこんな風に飲み物になるなんて」
「たしかにそうだね」
「いや、それよりも私は稲穂の話で興味深かったのは唐辛子が中国から来たものではないということだ」
「あ、それはあたしも思った。唐ってつくから昔に海を渡ってきたものだと思っていたけど、海は海でも日本海じゃなくて太平洋だったとは」
太平洋は誤りで、大西洋とインド洋が正解。
「稲穂ちゃんもさっき言ってと思うけど、唐っていうのは昔の中国の国名じゃなくて外の国という意味だから」
「流石、元国語教諭だけあるな」
「それで桂も知っていたんだ」
「ちょっと違うかな。唐辛子のことはある人から前に教えてもらったから」
ある人とは、稲穂の前の前の姿、即ち稲葉志郎のこと。彼から何度も聞いたトリビアであった。
「ああ、唐辛子といえばさっき出ていた昔のチョコも飲んでみたいな」
「あ、もしかして甘すぎて実里さんの口に合わなかった?」
「そんなことはないぞ稲穂。美味しかったぞ。ただ、私の好みは甘いよりも辛いだかなら」
「うーん、そうか。……あ、こういうのもあるけど呑んでみる?」
実里の好みを思い出しながら稲穂は言う。
「どんなのだ?」
「日本酒を使ったカクテル」
「そんなのあるんだ?」
「ねえ、シロどんなのがあるの?」
「色々あるよ、麻実ちゃん好みのチョコを使った日本酒ベースのカクテルもあるから。それじゃ、今から呑んでみる?」
普段成瀬家では日本酒を飲まないが、今晩のためにまあまあ良いお酒を仕入れていた。
「いや、私は遠慮しておくぞ。日本酒はそのまま呑んだ方が美味しいからな」
「それは……たしかに」
かつて日本酒を少し嗜んでいた。そのまま呑むのが、味わうのが一番良いことも知っていた。氷を入れるのですらお酒に対して失礼という認識を持っていた。それなのに長年の禁酒? で、そのことをすっかりと忘れていた。
「だからな」
「ええー、あたしは呑んでみたいな」
「私もちょっと興味あるかな」
「けどな、二人とも。さっきチラリと一升瓶のラベルが見えたけど、あのお酒はそのままで呑んだほうが、それも冷で楽しんだほうが絶対に美味しいお酒だぞ。まあ、といっても私も実際に吞んだことないんだがな」
この言葉に稲穂は無言でうなずいた。
自分で言ったことだが、このお酒はそのままで堪能したほうが絶対に美味しい。
「まあ、そうかもね」
「じゃあさ、シロ。今度また作ってね」
「了解」
「ああ、それで話を戻すが、初期の頃のチョコも稲穂は作れるんだろ。それをちょっと飲んでみたいなと思ってな」
歴史の話の後に、女子高生三人組に作って出した話もしていた。
「作れますけど。でも、すごく苦いですよ」
「そこは了解している。だが、滋養強壮の効果があるんだろ。この頃はエナジードリンクが多く出回っているが、どれも甘くてな。今後必要になるかどうか分からないけど、そのチョコで代用できないかなと思ってな」
「あ、実は私もちょっと興味あったんだ。どれくらい苦いのかなって」
「あたしも」
「材料はあるからいいけどさ。でも、三人に出した金平糖はもうなくて、代わりに……落雁くらいしかないけど」
「問題ないぞ」
「麻実さんも大丈夫?」
「平気よ。だって知恵達でも飲めたんでしょ。あたしはあの子達と違って大人なんだから」
結果から言うと三人揃って熱さと苦さに撃沈。即座に砕いた落雁を頬張った。
だが、三人共に苦さに辟易といった表情ではなく、どことなく楽しそうであった。
そしてひとしきり笑った後で、実里が突然、
「いや、苦かったな」
「だから、言ったじゃないですか」
「しかし、予想以上だった。稲穂といるのは面白いな、想像していないことが次々と起こる。……よし、決めたぞ。私は向こうにはいかない」
「それって前にも宣言していたじゃないの。改めて一体どうしたの?」
「ああ、ここに来る前にリーさんからまた話があってな。そこで条件を提示されたんだが、破格といってもいい位の待遇でちょっと心が揺らいでしまっていた。だけど、決めた、行かないことにする、このままずっと稲穂と一緒にいることにする」
「だから、稲穂ちゃんはあげないって」
「そうよ、シロはあたしのものなんだから」
「麻実ちゃんのものでもないでしょ」
「いや、私はものじゃないんだけどな」
「ゴメンね、稲穂ちゃん。それで実里、行かない宣言はいいけど、残るのか別の研究施設に移籍して研究を継続するのかは決めたの?」
「……いや、そっちはまだ……」
「肝心なことを決めなさいよ」
「……すまない。しかし、そうは言うが桂もまだ見つけていないんだろ」
「候補は二三見つけてあって、話をしている最中よ」
それから一週間後、
「すまない桂、こないだの話はなかったことにしてくれないか。……急な話だが、向こうに行ってあの研究を続けることになった……」
次話は四月中旬を予定。




