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原因の究明 その4


「どうかしたのか稲穂?」

「実里さんに確認しておきたいことがあるんだけど、いいかな?」

「稲穂の質問にならなんでも答えるぞ。私の3サイズか? それとも性感帯か? 弱い個所か?」

「実里、稲穂ちゃんは真面目に訊いているんだから」

「分かっている、ちょっとした冗談だ」

「教授の助手のリーさんの出身ってあそこの国だよね?」

 稲穂が国名をあげる。

「ああ、たしかそうだったはず。けど、いきなりどうしたんだ? 彼女のことを突然聞くなんて」

「それは後で説明するから。それでもう一つ質問。教授は彼女と一緒に海外出張中と言っていたよね」

 これは稲穂は直接聞いたわけではないのだが、先に会社の事務所に到着し、その後シャワーを浴びた後で、実里が来るまでの間に桂から今回の事のあらましと一緒に聞いていたものであった。

「ああ、そうだ」

「その行っている国はもしかしてリーさんの母国?」

「たしか、そのはずだったと思うが。それがどうしたんだ?」

「いや、文句を言ってきた機関もその国との交流が活発というか、有体に言ってベッタリ、密接に結びついているという噂があるくらいなんだ」

「それがどうしたの?」

「だからさ、これはお……私の妄想といってもおかしくないような考えなんだけど、もしかしたら機関と教授とその国が結託していて、実里さんの研究を奪い取ってしまおうとしているんじゃないのかなって」

「はあああ?」

「何を言っているんだ、稲穂。自分で言うのもなんだが私の研究の何処に国家ぐるみの組織が関与するようなのがあるんだ。高々保温時間のずっと続くお弁当箱だぞ」

「でもさ、応用が利きそうな研究でしょ」

「うーん、まあたしかにそうかもしれない。私の研究を基にしてこれから先色んなものが作られるかもしれない可能性はある」

「さっき出ていた電気の送電の話。実里さんの研究を応用して使えば送電ロスが少なくなるかもしれない。あの国は大きいし、それに最近急速な都市化で電力事情がひっ迫しているって聞くし」

「だがな稲穂、そういうことにもしかしたら使えるかもしれないというだけで、確実に流用できるような保証はどこもにないぞ」

「そうよね、使えるかどうかわからないものを横取りしようというのはちょっとね……」

「ああ。それにこれも前に言ったが、情けないけどまだまだ研究の余地がある。触媒の変更はともかくとして、今の製造方法では三回に一回成功すればいいくらいだからな。とてもじゃないが、これではな……」

 と、やや自嘲気味に実里は言い、そして続けて、

「……こんな研究途中のものを躍起になって奪う必要はあるか? しかも国家ぐるみで。成功しているならともかくまだまだ先の長い基礎研究だぞ」

「でも、あの国だからな」

「まあ、ここ最近はあんまり良い噂を聞かないけど、でもさすがにそこまで行くのは誇大妄想だと思うけどな」

「………そうかな。可能性はあると思うけどな」

  

 その後、三人での話し合いを続けたが、結局分からず仕舞いで終わり。

 後日、また時間を取って、今度はもっと情報を得てから今後についての話し合いをするということが決定した。


 それから数日後。

 実里は桂に電話を。

『もしかしたらあの時の稲穂の妄想は正解だったかもしれない。教授が大学を辞めた。そして向うの大学で研究することになった』


次話は未定。

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