表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
232/333

ロードバイク 続き

宣伝企画



 さて、ロードバイクの話の続きである。

 稲穂は自身の望むバイク、つまり硬くて高剛性のフレームとして真っ先に脳裏に浮かんできたのはKOGAキメラというオランダのロードバイク。

 これは、桂の兄の文尚が所有しているロードバイクで、彼曰く「硬くて踏み切れないフレーム」らしい。そして、彼の持っているフレームはシリーズの中で一番扱いやすい、柔らかなUDというものらしい。ということは、最上級のもの、つまり3Kという一番硬いモデルを購入し、運用すれば。

 だが、あくまでこれは候補の一つにすぎなかった。

 すぐにでも買い替えるということはしなかった。

 最初のアルミは、ある意味時間に追われて選択した。しかし、今度のはすぐに入用というわけではない、硬さに不満はあるものの街乗りで、通学で使用する分には十分に使えるもの。

 ここはじっくりと腰を据えて吟味を。

 色んな選択肢が。

 次に候補の上がったのはデ・ローザというイタリアのロードバイクメーカー。

 車種ではなくメーカーなのは、ネット上で調査している稲穂と一緒に横で見ていた桂が、デ・ローザのマーク、ハートマークを気に入り「ここのにしたら」と、推薦。

 イタリアの老舗メーカーのバイク。これも悪くはないかと思いつつも、これが良いという決定打を持つフレームはなく、桂の推薦を固辞。

 意外と国産メーカーも良いかもと思い立ち、アンカーのRMZや、グラファイトデザインのメテオも検討。

 さらに浮かんできたのは、昨年のツールドフランスの覇者、クリス・フルームが駆るピナレロのドグマ。今年は運悪く途中リタイアに終わってしまったが、初戴冠に輝いた彼は格好良かった。

 ロードバイクというものは、プロが使用しているものと、ほぼ同じものを所有することができる。プロの脚力に耐えうるものならば、硬いはず。ならば、それに、そっくりそのまま購入ということを考えるが、フレーム、コンポ、ホイール、その他アクセサリー類を同じもので揃えた場合、新車の軽自動車が買えるようなお値段になってしまう。

 金銭的な余裕はできたが、そんな大金をつぎ込むのは流石に躊躇をしてしまう。

 ならば、今のロードバイクに使用されているものをソックリ移植して、フレームだけは豪華なものをとも一瞬考えたが、ドグマにコンポがクラリスでは見事なまでに見劣りしてしまう。それでも気にならない人はいるかもしれないが、稲穂にはそれをするような勇気はなかった。

 金額はできれば抑える方向で検討を。

 そこで出てきた案は中古フレーム。

 ネット上では中古のロードバイクは止めておいた方が良いという意見が多く見受けられた。どのような使用歴があるか分からない、見た目は綺麗でも、写真写りが良いだけで見えない所は壊れている可能性もある、と。だが、これらの多くは個人での売買での問題点であった。きちんと店で買う分には大丈夫という意見も多くあった。 

 稲穂は都内のショップ巡りを。

 現物を見て判断、そしてモゲタンの力を借りれば、フレーム内部の傷、クラックがあったとしてもそれを発見することが可能。走れないような傷物を掴まされることは皆無。

 店を覗いているうちに、稲穂の中で手に入れていたフレームが。

 それはS-Worksのルーベ、2010年のツール・ド・フランデルでカンチェラーラが使用したバイク。もっともあれはプロトタイプで、市場に出たのとは異なるが、それでも石畳という悪路のレースで活躍したものの市販品。カペルミュールでボーネンを引き千切った、一説には1400キロワットの出力が。そんな高出力に、剛脚に応えたバイク。

 これならば、思いきり踏んでも問題ないはず。

 しかしまあ、人気のあるバイクである。おいそれと見つからないであろう、ならば次善の策として、後年カンチェラーラの要求に応え開発されたトレックのドマーネを、と稲穂は考えた。

 探索中に稲穂は新車、中古問わずに次々と魅力的なフレームに出会うことに。

 カーボンバックで衝撃を与えたピナレロのプリンス。マルコ・パンター二が駆ったカレラのメガチューブのアルミフレーム。コラテックのカーボンの皮を纏ったアルミフレーム。ケストレルのTTバイクで、フレームはカーボンでフォークはクロモリという珍品。

 他にもオルベアのオルカゴールド、ボッテキアのSP9、BHのG4、カレラのフィブラ、国産メーカーと思いきや現在はアメリカメーカーのFUJIのブエルタを制したアルタミラ、KTMのフレーム等。

 いっそのことオーダーフレームというのも考え、アマンダや三連勝の系譜であるケルビム、関西のナカガワについて調べ、その過程で片倉シルクのフレームに出会ったりと。

 どれも買うまではいかなかったが、眼福であり、稲穂にとって至福の時間であった。

 だが、いつまでも眺めて過ごすわけにはいかない。

 そろそろ買うのを選ぼうかと思った頃、稲穂はとある一台と出会う。

 それはクロモリのロードバイク。

 イタリア三大メーカーの一つ、コルナゴのマスターⅩ。通常は丸パイプのクロモリを使用するのだが、独特の潰し、ジルコ加工と呼ばれるパイプを使用したロードバイク。

 このジルコ加工の形が稲穂に心を打った。

 ラグも綺麗だったし、ストレートフォークも美しい、剛性も高いという評判。

 けれど、すんなりとこれに決定というわけにはいかなかった。

 稲穂がこのロードバイクに唯一持った、懐いた欠点というべきものがあった。

 それはカラーリング。

 好きな人には申し訳ないのだが、少々派手な、老松さんの台詞「色を盛っている」というのに稲穂も思わず同意してしまう。

 しかしながら、これについては解決法が。

 塗装は、ペイントは然るべき業者に依頼すれば、塗り直すことは可能。そしてクロモリという素材は、アルミやカーボンに比べるとその比較的ハードルが低い。

 好みの塗装ではないが、この形は非常に気に入っている。稲穂は、これを購入し、そしてリペイントする方向で固まりつつあった。

 すぐに入用ではない。多少時間がかかっても自分が気に入ったものに。その労力、というか費用はそんなに惜しまない所存であった。

 頭の中にこんな色合いにしたいとう朧げな願望はあったが、頭の中のイメージを上手く外に出すことが、表現することができない。

 そこで麻実に協力をお願いする。

 二人だけでの会議。

 いつもならば、ここに桂が加わるのだが、今回彼女を省いたのにはある理由が。それは稲穂が桂に飽きてしまったからではなく、桂がいると彼女好みの色になってしまう可能性が非常に高い懸念があったからだった。

 頭の中のイメージを稲穂はなんとか伝え、それを麻実が画に起こしていく。

 出来上がったイメージ図は、黄色を主体にして、トップチューブの一部、そしてチェーンステーを赤く染め上げたもの。

 これには稲穂は大変満足であった。

 後は、今も製造されている件のフレームを注文し、届き次第に塗装屋に持ち込むだけ。

 そうすれば、晴れて二台目のロードバイクに。

 しかしながら、稲穂の二代目のロードバイクはマスターⅩではなかった。


今回で終了の予定が、終わりませんでした。もうちょっと続きます。

後「KOGAさんといっしょ!」という新作を投稿しました。ロードバイクの話です。興味があったら読んでみて下さい。

面白いロードバイクの情報を得たら、また編集します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ