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たいりく


「シロは、次何処(どこ)に出ると思う?」

 まだ(かつら)が帰宅していないリビングで、麻実は美月に質問を。 

 これは連日ネット上でのデーモン同士の会議内で繰り返されている議題。

 ソロモン諸島に出現したフーファイター。あれだけ連日のように目撃されていたのに、ここ数日は目撃情報は皆無。

 さらに言うと、ソロモン諸島近辺でのデータの出現もなし。

 何処かへと移動したという見方が大半を占めた。

 では、次に何処に移動したのか?

 それについて議題は紛糾。

 情報が、足取りが不明なので、出てくる意見は全て推論に過ぎない。

 それでも各自が、それぞれの意見を出し、そして議論した。

 それを麻実は直接美月に。

 美月はその問いにしばし考える。そして、

「うーん……オーストラリア……かな」

 これは会議の中で出てきた地名。一番人気、という表現は少しおかしいのだが、もっとも多くの支持を集めたのはソロモン諸島に近いニュージーランド。次いで、クック諸島をはじめとした近くの諸島群。

美月の出した地名は三番目に多かった意見であった。

 オーストラリア案を、美月が推したのは、多数派の意見が嫌いだから、というのではなく、これまでオーストラリアにはあまりデータが出現していない、あれほど広大な土地なのだからまだ活動を開始していない、休眠状態のデータも多数いるはず。それに持論をプラス。そして最後は、勘のようなものが働いたからであった。

「なるほど、シロは犯罪者の大陸が怪しいと睨んだのね」

「麻実さん、言い方」

「だって、あそこには英国から多くの犯罪者が入って開拓したんでしょ」

 かの大陸の開拓の歴史にはそういう背景がある。

「まあ、そういう歴史もあるみたいだけど」

 そのことは美月も知識として持ち合わせていた。

「まあそれは別にどうでもいいけどさ。あそこがご希望ということは、シロはコアラやカンガルーのデータが出現することを望んでいるのね」

「いや、そんなこと全然望んでいない。……けど、もし有袋類のデータが出現したら戦いにくいだろうな」

 オーストリア大陸特有の哺乳類。

「どうして?」

「……可愛いから……」

 見た目は美少女なのだが、その中身は三十路前の男、そんな人間がこのような発言をしてしまうのは気持ち悪いと取られてしまうかもしれないが、思ったことをそのまま発言。

「可愛い? アイツら別に可愛くなんかないわよ」

 正真正銘の少女は辛辣な言葉を。

「そうかな?」

「だって、カンガルーは昼間のオジサンみたいに横になるし、コアラなんかよく見ると目が怖いし。そうそう、パンダも目が怖いんだよね」

「うーん?」

 美月にはそういった印象はあまりなかった。

 なんとなくだが可愛い生き物という認識が子供の頃から。

「そうよ。それに結構凶悪なんだから、カンガルーはキック力強いし、コアラの爪は鋭いし」

「ああ、それ聞いたことある」

 コアラは一日の大半をユーカリの木の上で過ごすために、爪が鋭くなっていた。

「それにアイツ、毒を食べるのよ」

 ユーカリの葉は毒性が強く、他の生物が食するには適さない。

〈毒といえば、カモノハシにも注意しないとな。アレのオスは毒の混合物を分泌する蹴爪があるぞ〉

 美月の左腕のクロノグラフモゲタンが脳内で。

「そうなのか?」

〈ああ、そうだ〉

「どうしたの、シロ?」

「モゲタンが、カモノハシには毒があるから気をつけろって」

「へー、それについては知らなかったわね。鳥か哺乳類か、どっちか分からないだけの生き物だとばかり思っていたわ」

「俺も。……ところで、麻実さんの意見は」

 美月が少々脱線していた話を戻す。

「あたし。……あたしはね、南極、南極点かな」

「また随分とんだね」

「そうかな。南極ってオーストラリアの横じゃない」

 この言葉に美月は簡単な世界地図を脳内に広げてみる。麻実の言葉通り、自分の推した案の下にある。

「たしかに」という言葉を発しようとした美月であったが、モゲタンの声がストップをかける。

〈キミが描いた地図では確かに近くだが、実際には距離が離れているぞ〉

 そう言いながらモゲタンは美月の脳内に精確な世界地図を。

 日本オーストラリア間の距離よりも、オーストラリア南極間の距離のほうが離れている。

「麻実さん、結構遠いよ」

「そうなの? まあ距離はどうでもいいのよ。肝心なのは南極ということなの」

「どういうこと?」

「南極といったら秘密基地よ」

「はい?」

「昔から、南極には色んな組織の秘密基地があるのが定番じゃない。ナチの残党のUFO基地とか、ノーチラス号のドッグがあったりとか。だから、あのフーファイターも、実は南極に秘密の基地があって、そこから発進を繰り返しているのよ」

「それはちょっと無茶な意見じゃ」

「あ、他にも南極に眠っている巨大生物とか古代の神が目覚めるとかも面白そうよね」

 麻実の妄想トークが爆発。

 

 それが止まったのは、データ出現を知らせる一報とフーファイターの目撃情報。

 美月の勘は外れ、麻実の妄想も当たらなかった。

 出現したのは、誰もが予想していなかった場所。

 南米の国、チリ。

 そしてフーファイターの姿を見事に捉えた画像が、何枚もサイト上にアップされた。

 そこに写っていたのはB-29だった。



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