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超要塞 2


 学校で聞いた話を、帰宅後デーモン同士の秘密のサイトにアップ、その後世界各地から、同じような情報が続々と。

 しかしながら、どれも噂レベルの話であり、フーファイターの機体を特定できるだけの情報はなかった。

 それでも会議は活発に。

 それぞれが自らの持論を次々と発表。

 アメリカ陸軍のB-17から始まり、B-24、B-25、B-29。場所柄日本軍が占拠していた

地域であるために日本海軍の流星や天山、山本五十六が乗機し撃墜された一式陸上攻撃機。他にもソビエト、ドイツ、イギリスの機体。爆撃機かもしれないというのに、戦闘機説を上げるもの。飛行機だというのに、船の名前を上げるもの。

 そして終盤には架空の機体、アニメの機体などがモニター上に。

 最後はまるで大喜利のようなネタ合戦になり大盛り上がりで終了。


 麻実は嬉々として大喜利大会に参加していた。

 だが、美月はその横でモニターを見ているだけであった。

 そんな美月であったのだが、大喜利大会という名のデータに関するデーモン達の会議が終了後、頭の中にふとよぎった考えが。

 それを脳内でモゲタンに。

〈うむ。その可能性も十分に考えられるな。……だが、もう少し早く思いついてくれれば、あのまま会議で俎上に載せて議論できたのに〉

「いや、そう言われてもな。今、突然頭の中に浮かんだんだから仕方がないだろ」

 脳内での会話だから声に出さなくても成立する。しかし、美月はこの時モゲタンの言葉に思わず逆上、とまではいかなくても少しだけ癇に障り、思わず音になってそれが出てしまった。

「何? 何、思い付いたの、シロ」

 麻実が訊く。

「うん、あのね……いや、俺が口で説明するよりも、モゲタンが上手く纏めてくれた文章をアップしてくれる……あ、アップしたらしいからそれを読んで」

 話している間に、モゲタンがネット上に先程の美月の思い付きをアップ。

「えー、直接聞いた方が早いじゃん」

 麻実がせがむ。

 というわけで、ほんの数分間に、()が悪く浮かんできた考えを口頭で麻実に伝えることに。

「さっきの会議でさ、爆撃機の墜落場所について色々出てきたでしょ」

「うん、まあ出たわね」

 フーファイターの正体が爆撃機だと仮定して、世界各地で墜落したレシプロの爆撃機の情報がモニター上に多く上がった。

「その中にさ、小笠原諸島近辺に落ちたのもあっただろ」

「うーん……あったわね。まあ、あの辺は硫黄島もあったしね」

「それでさ、さっきふと思ったのが、あのフーファイターは小笠原諸島近辺に墜落した爆撃機じゃないのかなって」

「出たのは南半球よ。小笠原諸島は北半球。地理を理解しているのシロ?」

「理解しているよ、ちゃんと」

「だったらさ、どうしてそんなこと思ったのよ?」

 美月は麻実の問いにはすぐに答えなかった。

 しばし時間を置き、考えを自分の中で整理し直し、そしておもむろに口を開く。

「卵が先か、鶏が先か、どっちか分からないけど、あのフーファイターが目撃された時にデータが出現するよね」

「まあ、そうらしいわね」

「それってアレを彷彿させるというか、思い出させるというか」

「何よ?」

「……あの狐型のデータ」

 かつて小笠原諸島近海で対峙し、そして撃退はしたものの、回収にまでは至らずに逃げられてしまったデータ。

「はあああ?」

「アレが最初に出現した大阪で大量にデータが出現しただろ」

 修学旅行の夜、道頓堀で苦戦した苦い記憶が。

「出たわね」

 それは麻実も同じであった。

「なんとなくその時のことを思い出したんだ」

「でもさ、それって只の偶然じゃないの。というか、あの狐型のデータが出たからといって他のデータが出現したというわけでもないし」

「……いや、そうじゃないと思う……」

「どういうことなの、シロ?」

「ロンドンでもフロリダでも、アイツが現れた場所では他のデータも出現しただろ」

「出たのは出たけどさ、インドでは単体だったみたいだし、それこそシロが目撃した鈴鹿の山でも他のは出現していないじゃない」

「でも、鈴鹿の時はまだ目覚める前の、宙に漂っていて落下してくるデータを捕まえていた」

「……そうだった」

「あの狐型のデータは他のデータの能力を奪い取って強くなる」

「まあ、そうね」

「そのために世界中を回っている」

「まあ、その意見は多かったわね」

「……これは俺の推測、完全な妄想なんだけど……アイツはデータが出現しそうな場所に行くんじゃなくて、アイツが行く場所でデータが動きだすんじゃないのかって思って」

「はあ?」

「つまり、アイツはまだ活動していないデータを活性化させて、そしてその力を奪い取り、強くなっていくのが目的なんじゃないのかと」

「仮にそうだとしても、それがどうしたというのよ?」

「フーファイターの正体は、あの狐型のデータかもしれない」

「はあ?」

「あの時、弱体化させることには成功したけど完全な破壊、そして回収することはできなかった。つまり、逃げられてしまった。その逃げた狐型のデータが小笠原諸島近辺の海底を彷徨っているうちに墜落した爆撃機を見つけ、それに寄生というかとり付いて活動を再開したんじゃないかと」

「うーん、どうかな。……まあ、シロの説は面白いとは思うけどさ、ちょっと無理があるんじゃ。第一さ、例のフーファイターは目撃されているだけで、出現したデータを捕獲しているわけでもないし」

「それは俺達が知らないだけ。もしかしたら、確認が取れた場所以外でもデータが出ていて、それをフーファイターが採取していた可能性もある。……まあこれは、あくまで仮説……それも精度の低いもの、ある意味妄想だけど」

「……でもまあ、一理あるかも」

 麻実はさっき電源を落としたばかりのパソコンを立ち上げた。


 先の大喜利大会とした会議とは一転し、今度は真面目な議論がネット上で繰り広げられた。

 しかし、結論は出なかった。



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