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フーファイター

短い話。


 美月がF1に一喜一憂している頃、海の向こうではちょっとした大事件が起きていた。

 一見矛盾しているような表現ではあるが、実はこれはあながち間違いではない。

 では一体何が起きたのか?

 その説明を。

 まずは場所。

 それは、南半球にあるソロモン諸島付近。

 そこにデータが、これまでの数倍の頻度で出現。

 こう書くと大きな事態のような思われるが、この地域はこれまであまり出現事例がなく、数倍といっても一桁台である。

 それでも数体出現したことには変わりはない。大変な事態なのだが、出現したデータはいずれも力が弱く、地元在住のデーモンがさほど苦労することなく一人で対処を。

 数字上で見れば、この出現頻度は大事件である。しかしながら、事態はあっさりと解決を。

 これが矛盾をはらんでいない理由。

 情報は共有。

 モゲタンが構築したネットワークで、ソロモン諸島の異変についての会議が行われた。


「UFOと、さっきから出ているフーファイターって何が違うんだ?」

 チャット上では何度となくフーファイターという文字が。

 これはソロモン諸島に相次いで出現したデータのうち、初期の頃は分からないのだが、後半では、まるで出現を知らせる合図、予兆かのように、謎の飛行物体が確認されていた。

 それは分かるのだが、何故フーファイターと言っているのか、実際には書いているだのが、分からずに美月は疑問の口に。

〈たしかに未確認の飛行物体であるということについては違いはないはず〉

 左腕のクロノグラフモゲタンが、美月の脳内で同意を。

「だろ」

「ああ、それはね出現した場所がソロモン諸島だからよ?」

 一緒に会議に参加していた麻実が。

「どういうこと?」

「フーファイターというのは二次大戦中にパイロットが目撃した未確認の飛行物体のことなの。当時はUFOなんて言葉じゃなくてフーファイターって呼んでたのよ」

「へー」

「そんでもって、ソロモン諸島はそのフーファイターの目撃情報が結構あった場所。だから、このネット会議に参加してるメンバーの中でその辺の知識があるのが言いだして、それがピッタリだからいつの間にかその呼称が定着しちゃったのよ」

「そうなんだ。……ところでさ?」

「何、シロ?」

「ソロモン諸島って、南半球だよね。あの辺って太平洋戦争の戦場になったの?」

「何言ってんのよシロ。あの辺は激戦区だったのよ。ガダルカナルって聞いたことない?」

「……ある」

 ガダルカナル島の戦いは知識としてはあった。しかし、美月の中では、その場所は北半球の太平洋上の何処かで、南半球で起きた出来事であるとは思ってもみなかった。

 だがこれは、ある意味致し方ないことであった。

 というのも、去年の歴史の授業ではそこまで行くまでに時間切れを。

 普通の中学生ならばしょうがないのかもしれない。

 しかし、美月は二度目の中学生。加えて言うならば高校教育も受けており、その時は日本史を選択していた。それにもかかわらず、何故知識がなかったかというと、それは当時もその辺のことは授業でしなかったからであった。

「だったら、何で知らないのよ。それにシロ、歴史小説けっこう読んでるでしょ」

 ちょっと憤慨するように麻実が言う。

「ゴメン、俺のよく読んでいたのは戦国ものと幕末ものだから」

 怒られるのは少々理不尽だとは思いながらも、美月は素直に謝る。

 近代史の小説は『坂の上の雲』くらいしか読んでいない。

 だから、歴史関係の知識はあるが、それ以降の時代の知識は皆無、とまではいかないが、断片的な事柄は知ってはいるのだが、それを繋がりをもって理解できていない。

「それじゃ、今からあたしが教えてあげるから」

「えっと……お願いします」

 出題される可能性は低いはずだが、だけど出る可能性もある。それを取りこぼしたことによって志望の高校に落ちてしまうことも十分にあり得るかもしれない。

 美月はそう考え、頭を下げた。

 というわけで、即席の歴史の授業、太平洋戦争もとい大東亜戦争篇が、リビングで開始された。



名称でアレコレ悩み中。


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