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悪くない


 躍動する美月の姿を見ながら、麻実は「悪くない」と思った。

 美月は現在データとの戦闘を繰り広げている。

 いつものように現場には出向くものの、戦闘行為にはほとんど関わらない麻実は、少し離れた位置でつぶさに美月を観察。

 普段はそんなに熱心に戦闘を観察することなんてあまりないのだが、麻実は真剣に美月の姿を目で追った。

 熱心に、真剣になっているのには大きな理由が。

 それは新しい美月の変身デザインのため。

 今の姿は三人で話し合い、アイデアを出し、そして麻実がそれらをまとめてデザインした。

 だが、そんなデザインも、ヨーロッパ勢からの評価はあまり高くない、芳しくない。

 以前の、魔法少女を模した姿のほうが、はるかに評判が良い。

 魔法少女は多くの人間が携わった、いわゆるプロの作品。対して現状のサイクリストを模してデザインした変身スタイルは素人の麻実がデザインしたもの。

 プロとアマチュアの差。しかし、外部の人間にはそんな事情は分からない。

 ならば元の魔法少女の姿に戻せばいいのかもしれないが、そこには少し複雑な事情が。

 美月は、元は男、しかも三十路前の。

 最近ではそうでもないのだが、以前は少女らしい恰好をするのを絶対に拒否とまではいかないが、それでもなるべく避ける傾向にあった。

 そんな美月に、また魔法少女の姿になれというのは、少々酷な話である。

 だが、それは昔の意見という向きもある。少女の姿になって一年以上生活をしてきた、スカートにも慣れてきた、嬉々としてまではいかないまでもそれでも以前に比べれば可愛い服を着ることへの抵抗感は薄くなっていた。

 元に戻そうか、もしくはそれを叩き台にしてリファインしようかと麻実は、美月とデータの戦闘を目で追いながらも、頭の中でアイデアを繰る。

 だがしかし、この三人で協議してデザインした姿も、正直捨てがたい。

 愛着というものが麻実の中にあった。

 作った人間の欲目なのかもしれないが、今眼前で戦闘している姿はそう悪くはない。

 身体にフィットするような機能的な衣装に、部分的にはガーリッシュなもの。機能性は全く皆無なのだが、桂の強い意見によって装着することになったサイクルスカートは美月の動きに合わせてヒラヒラと可憐に揺れ動く。

 そして躍動的な動きをさらに加味するヘルメットから出たツインテール。遠目で見ているとすごく映えて写る。

 悪くない。

 むしろ、これでいい。

 美月の動きを見ながら、改めて麻実は思う。

 しかしながら、他人の意見というのはけっこう気になってしまうものである。

 この良いという感覚は、もしかしたら創作者のエゴなんじゃないかと思ってしまう。

 それでも構わないと思えるような、確固たる自信、強固な意志のようなものを麻実が持っていたら、そんな意見なんか歯牙にもかけないのだが、身体は常人を遥かに凌駕するような力を有していても、その内面は経験値の少ない十代の少女。

 どうしようか?

 美月の戦闘を目で追いながら、麻実は思案に明け暮れた。



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