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女子中学生、西へ 9


『シロ、そこを右』

「了解」

 脳内に麻実の声が響き、その指示に従って美月は建設中のアベノハルカスの横を右折し、関西本線の線路を越えてデータを追った。

 何故こういう状況になったのか、それを少し説明したいと思う。

 修学旅行二日目の宿は大阪だった。

 そこで夜遅くまでガールズトーク、約一名中身が少女でない者もいるのだが、が繰り広げられていたがみな睡魔には勝てずに次々と寝落ち、最後まで起きていた美月も皆の寝息を聞き、そろそろ寝ようとした矢先に脳内に警告音が鳴りだした。これはデータが近辺に出現した証拠。

 美月は年下の友人達を起こさぬようにこっそりと部屋を抜け出したのだが、同じようにデータを感知できる麻実も起き、二人でデータの追跡に。

 すぐにデータを回収できると思っていたのだが、思いのほか手間取ってしまう。

 何しろ今回のデータは速い。

 あびこ筋沿いを猛スピードで疾走。

 最初麻実が美月を抱いたままで飛び、追跡をしていたがあまりの速度差に全然追いつけない、どころかむしろ離されていく。

 そこで美月が空間を跳躍して先回りし前方で待伏せしようと算段したのだが、接触しようとする前に路地へと逃げられてしまう。

 慌てて追いかけ、美月達も路地へと入るが、その(かん)にまたデータは大通りへと。

 無暗に追いかけても捕まらない。

 これは前回のデータ回収の時にも経験していた。あの時は狭い室内での追いかけっこであったが、今回は広い範囲、しかも相手の速度は格段に速い。

 即座に作戦変更を。

 美月達が柔軟に対応できたのには、経験ということもあるだろうが、それ以上に新アイテムの登場という要素が大きかった。

 携帯電話。

 これまで全く携帯電話を使用してこなかったわけではない、むしろ日常生活では常に活用していた。だが、ことデータ回収においては全く使っていなかった。

 しかし、モゲタンの力によりデーモン同士の秘匿の交流が可能になった。メールのやりとりをしてその情報が盗まれることはなくなったし、通話していても傍受されてしまう危険性も排除された。

 さらに言うと、どれだけ通話、通信しても無料。

 まあそれはさておき、相互通信を用いてデータを追いかけるという作戦に。

 その際指示を出す側は携帯電話を手にしていてもさほど問題はないのだが、追いかける役目の美月は電話を常に持ちつつでは動きに支障をきたしてしまう。

 そこでモゲタンが新しい能力を美月に付加。

 サイクリストに姿を模した変身スタイルには、背中にこれまで全く活用されてなかったサイクルポケットが備わっていた。そこに携帯電話を入れ、麻実からの通話を一旦携帯電話で受信し、それを増幅し美月の脳内へと飛ばす。しかもそれによって生じる時間的誤差もなし。

 これによって美月は携帯電話を持たずに通話が可能に。

 線路を越えると天王寺動物園があった。

 データは動物園の中へと。

(仲間を求めてか?)

 追いかけていたデータの姿は、黒色で四つ足、まるで動物のような姿であった。だからこそ美月は追いかけられて本能的に仲間を求め、動物園へと逃げ込んだ、と思った。

〈いや、帰巣本能かもしれん〉

 美月の考えにモゲタンが意見を。

「データの帰巣本能だったら、宇宙だろ」

 データは外宇宙から来ている。

〈データ自身のではなく、寄生したのが案外動物園の出身かもしれんぞ〉

「そんなものかな」

 そう美月は呟きつつ、夜中の動物園へと侵入した。



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