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女子中学生、西へ 0.2

伊吹の地名を、胆吹に変更しました。


 関ケ原とはその名の通り、かつて関のあった土地である。壬申の乱の翌年に三関の一つ不破関が設けられ、ちなみに残りの二つは鈴鹿と逢坂関、治安維持と近畿と東国の行き来の監視をしていた。関がなくなった以降も、中山道として整備され、その後も名神高速道路と東海道新幹線が通る交通の要所となっていた。

 空間跳躍でまずはJRタワーの屋上へと出た。そこで二人とも変身し、その後は麻実が美月を抱きかかえ、猛スピードで一路関ケ原へと。

 胆吹(いぶき)山地と養老山地に挟まれた盆地に関ケ原はあった。

 近付くにつれて脳内の警告音が強く激しくなっていく。

 だが、いつものとは違う。

 その違いに美月だけではなく、麻実も気が付いた。

「何これ? いろんな場所から出てる」

「どういうことだ?」

〈これはまだ推察でしかないが、おそらく同時に多くのデータが出現したのだろう〉

 モゲタンの言葉を麻実にも伝える。

「それってすごく大変じゃない」

「うん、多分」

 時間がないというのに、ものすごく面倒で厄介な事態に。

 麻実の飛行速度が上がる。

 関ケ原町の上空へと到達した。

 そこには異様な光景が広がっていた。

 アチラコチラに甲冑姿の武者やら足軽達が。

 この土地の歴史から戦国武者が出ても不思議ではないのかもしれないが、その形は歪であった。

 普通の人型とは違う。なんというかユニークな姿をしている。

「もしかしてウォーランドの人形?」

 麻実が武者たちを上空から見下ろしながら言う。

 どうやらその正体に心当たりがあったみたいだった。

「何、それ?」

 だが、美月は分からない。

「えっとね、この辺にね博物館みたいなものがあるの……後はモゲタンよろしく」

 世界的に見ても大きな戦場。博物館のようなものがあってもおかしくないのだが、あんな不格好な戦国武将を展示するのは、と美月は思ってしまう。

〈今検索してみる。分かったぞ。麻実の言う通り、あれは関ケ原ウォーランドの人形で製作者は浅野祥雲。そしてその数は約二百体〉

 浅野祥雲とはコンクリート像の作者。東海地方で数多くのコンクリート人形を製作している。ペンキによる着色とユーモアさで、極一部でカルト的な人気を。

 ともかく、コンクリート像の活動を停止させないと。

 今はまだ被害は出ていないようだが、あれだけの数のコンクリート像が一斉に暴れだせばどうなるか簡単に想像できてしまう。

「麻実さん、降ろしてくれる」

「了解」

言うやいなや、麻実は美月を抱きかかえていた手を離す。美月は重力に引かれて落下。

落下した先は、コンクリートの戦国武将が密集している所。

 美月が貫手を。コンクリート足軽の胴をいとも容易く穿つ。

 普通の人間ならばコンクリートという硬い素材を破壊することは困難、しかも素手で壊すなんて到底できるような芸当ではないのだが、常人を遥かに凌駕した力を持つ美月にとってはそれは至極簡単なことであった。

 美月無双が開幕された。

 石田三成が左右真二つに裂け、大谷吉継の上半身と下半身が分離する。鉄砲を持った足軽が粉々に砕け散り、騎馬武者が爆発、何故かいる武田信玄を掴み、突進してくる上杉謙信へと投げ付けて同時に破壊する。

 簡単に破壊はできる。が、いかんせん数が多すぎる。

 逃げ出すように美月の周辺から離れるものも。

 周囲に被害が。

 追わなくてはいけないのだが、数多のコンクリート武者達が美月の行く手を邪魔する。

「こっちは任せて」

 上空から麻実が叫ぶ。

 これまでのデータ回収で麻実は一度も戦闘を行ったことがなかった。本人曰く「戦うのはシロのお仕事。あたしは運搬係」。

 それが自分から戦うと言うのだ。

「このままにしておいたら、新幹線の線路にも影響が出てしまうでしょ。あたしの初めての修学旅行を岐阜で終わらせてなんかなるものか」

 叫びながら麻実は攻撃を。

 小早川秀秋を粉砕し、徳川家康の首が飛ぶ。

 二百体以上いたコンクリート製の人形を全て破壊する。データの回収に成功する。

 ほんの数分前まで乗っていた新幹線はまだ関ケ原へと到着していない。

「間に合った」

 安堵の声が美月の口から出た瞬間、地面が揺れた。

「何? 地震?」

〈地震ではないぞ、これは。新たなデータの出現だ〉

 モゲタンの声に美月が周囲を警戒。

「新しいのが来る」

 揺れはまだ収まらない。激しくなる一方だった。

 少し離れた名神高速道路の向こうの山が地響きと共にその姿を大きく変えた。


現在我々が生活している世界線とは違うことを現すために一部の地名の漢字を変更。

この胆吹は偶々耳にし、そして歌詞を見た鉄道唱歌から拝借しました。


ブラタモリを観て修正。

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