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 視界の端で激しく自己主張する、赤字の案内表示の指し示すままに歩くこと十数分。建物の中を移動している割には、結構な時間を歩かされた様に思う。見える景色が無駄に壮大であることも手伝って、かなりの距離を歩いた気分にさせられる。

 目がちかちかするほど眩しくて、雰囲気やかましい過激なダンスホール。僅かばかりの証明が薄暗く辺りを照らす、静かな古代遺跡。部屋の扉を潜るたびに、景色はくるくると様変わりする。一貫性が無く、目まぐるしく変わる背景に気疲れを感じ始めたころ、いよいよ目的地に辿りついた。

 最期に辿りついたのはどこかの学校の教室の様な部屋だった。幽霊屋敷の腐りかけた木の扉の向こう側にある景色としては、そこはあまりに清潔感溢れる場所だ。直前まで暗がりにいたものだから、窓から差し込む白い光が鋭く目を刺してくる。

 ふと、マサキは周囲の景色を見回して、”ホントにVRか?”と疑念を抱いた。グラフィックの質感、トーンが、今まで見てきたそれに比べてやけに綺麗だ。パッと見た感じでは、現実のそれに非常に近しい。しかし自分の体は相変わらずに見えるので、随分風景から浮き出てしまっている。

 実はこの部屋、会場の建物とは別に作られた別棟なのではなかろうか。試しに窓を開けようと鍵に手を付けたが、触ったのはコンクリートと思われる、石らしい質感を持った硬い壁だった。

 マサキは”ガリッ”と爪を立ててしまって、暫く爪をもみほぐすことになった。どうやらまだ、会場内に居る様である。


 気を取り直して教室内を見渡すと、部屋にはマサキの他に15人のプレイヤーが集まっている。内容は割愛するが、それぞれが思い思いの見た目を作った結果なのだろう。ずいぶん個性的な見た目をした人物ばかりである。

 学校らしい風貌に反して、机や椅子は、片付けられてしまったのか見当たらない。まあ、あってもすり抜けるだけの代物なのだろうが、無いとそれはそれで寂しい感じがする。


 計16人は、無言で時を過ごしていた。ある者はメニューを開いて項目を閲覧し、ある者は石の壁をこつこつと叩いてみて、ある者は、バイザーがずれたのか額の辺りをさすっている。

 気になって15人をざっと見渡した感じ、さっきの黒髪の少年は居ないようだった。つまり、知り合いゼロである。かといって、それぞれ他者を拒絶しているようで、ちらりと見やっても誰一人として目を合わせることはしない。見ず知らずの人間、ましてや本当の姿もわからない相手に話しかけようなんて、よほど気さくな人間でもなければ出来ないことだろう。

 マサキはそういった類の人間ではなかった。場の様子に任せ、周りと同じように振る舞うことにした。とてもではないが、話しかけようと思える気分でも雰囲気でもなかったのだ。

 暇を持て余したマサキは癖でケータイを取り出そうとしたが、手を突っ込んだポケットには何も入っていなかった。ここへ入る際に、電子機器の類は全てスタッフに預けたのだ。

 ふと、電子機器の類はあったとして使用できるのだろうか、という疑問が頭をよぎった。視界を覆うバイザーの向こう側にある液晶画面は、VRの景色に反映することは出来ないのではないだろうか。マサキはしばらく、その疑問について考えを巡らせ、時間を過ごした。


 五分ほどその状態が続いた後、場に動きがあった。VRで移された教室の黒板に、独りでに文字が現れ出したのだ。


 《えらばれたみなさん、入学おめでとう!》

 

「入学……?」

 付近の男が呟き、首を傾げた。

 マサキもそれに倣って、思慮深く見えるように腕を組んで首を傾げた。すると、


『さあさあ! 時間がやってまいりました、本日入学する皆々様!』


 不意に頭の後ろの方から甲高くてやけに明るい、騒がしい声がした。マサキは驚いて、小さく呻いた。

 周囲の人物たちを見渡すと、驚いて周りをきょろきょろと見渡す様子が見て取れた。、どうやら聞こえているのはマサキだけでは無い様だ。声の正体を探そうと周りを見渡す者や、互いに顔を見合わせて驚いた顔を向け合う者もいる。

『どうか黒板の方をご注目ください!』

 まちまちな反応を見せるプレイヤーたちを、同じ声が纏め上げる。マサキは言われた通りに黒板に目をやると、いつの間にか四角形に四角形を両手両足分くっつけて作ったような、角ばったちっこい生き物がふよふよと浮かんでいた。

『こんにちわ、初めまして! 私はロコ!』

「……誰だよ、お前。」

 その唐突な自己紹介を目の当たりにして、思わず一人が尋ねた。す

『ロコだと言いました! 突然の登場で困惑されているかもしれませんが、皆様の学校生活を案内する、いわゆるマスコットです! 以後、お見知りおきを!』

 ロコと名乗った四角いのは、堂々と胸を張って答えた。場に居る皆がそれに驚いた。マサキも、とても自然に受け答えする電子の生物に驚いて、目を見開いてじっと見つめた。

「か、会話出来るんだ……!? ってかこの声、どこから聞こえてきてるんだ?」

 尋ねた人物は周囲をきょろきょろと見渡した。周りの数人も同様のしぐさをする。

 そんな中で、マサキはロコの声がどこから聞こえて来るのか、すぐに思い至った。バイザーの後部にある、耳たぶに接した丸っこいパーツをこつこつと指でつついた。

「これか……。」


 VRバイザーには、耳小骨の付近に指向性の振動装置が付いている。それが耳小骨を振動させ、音を出さずにキャラクターの声などをプレイヤーに伝えるのだ。イヤホンを突っ込むのとは違ってこれは耳を塞がないから、環境音や他のプレイヤーの声を聞き逃す様な心配もしなくていい。

 ちなみに、いつか花瓶が割れた時に音が聞こえたのも、これがあったからだ。人々の足音などを消さずに音を伝えるから、作り物であるような印象を与えず、自然な音に聞こえて来るのだ。

 目の前のロコの声は、この装置が出しているものだ。あまりに自然と聞こえて来るから、ロコが本当に話しているみたいに見えてくる。状況次第で、CGキャラクターがここまでの臨場感を持つものなのか。……しかも、こちらの声に反応を返してくるとなると、それも一層際立つものだ。

 マサキは理屈に納得すると、改めてマスコットへ関心を向けた。

『では、みなさんおそろいの事ですし、ロコは早速、今回のゲームの説明をしますね!』

 四角い奴は黒板の前から退くと、ピカッとした眩い光と共に、何処からともなく長い物差しを取り出した。直径1メートル程の彼の身の丈を超えるほどの大きさの、半透明なものだ。

 その御大層な物差しを使って黒板を指し、身振り手振りを交えながら、ロコは説明を始めた。

『今回皆さんが行うゲームは、出題される様々なミニゲームに多く勝利することを目指す、多様なジャンルを扱ったテストゲームです。ミニゲームの種類は多種多様に渡り、なるべく偏った得意不得意で、特定の勝者が決まらない様に配慮したものにしていますので、自分の得意なジャンルでは特に頑張ってくださいね! 皆さんにはゲームの世界のキャラクターになったつもりで競技に励んで貰うことになります!』

「……それってつまり、パーティゲームの様なものかしら。」

 ふと、部屋の端に居た赤髪の少女が尋ねた。短髪で赤く鋭い瞳をした、活発そうな子だ。

「小規模で全くのジャンル違いなゲームを、幾つも行うような。例えば、そうね……。スゴロクゲームで良く見かけるタイプの、あんな感じ?」

 マサキは首を傾げた。質問している少女の横顔に、何か見覚えがあったのだ。どこかで見たような気がする。デジャブだろうか。

 困惑するマサキ等はよそに、ロコは満面の笑みを浮かべて頷いた。

『考え方は非常に近いです! ただ、ミニゲームとはいっても、テストの為に行うゲームですので、種目ごとにある程度、本格的な要素を含んだものを揃えています。多少は難易度ハードにして、ユーザーさんにはめいっぱい動いてもらわないと、テストになりませんからね。多様なジャンルのゲームを本腰入れてやってもらうことになるかもしれません。』

「その、多様なジャンルって言うと? どんなの? 新しい、見たこと無いようなジャンルのゲームとかあるの?」

 今度は青い眼の特徴的な少年が言った。マサキの初期設定の顔をちょっと弄った程度の見た目とは対照的に、場の人々の個性豊かなことこの上ない。外見の設定は、後で変えられたりしないのだろうか。マサキは思わず眉間にしわを寄せた。

 少年の問いに、四角い生物は申し訳なさそうに顔にしわを作った。今のマサキと同じような顔を見せながら、

『それは御教えできません……。けど、普段皆様が行っているそれと、内容自体は大差ないものばかりだと思いますよ! 目新しいジャンルをお考えであれば、ちょっと物足りないかもしれません。テストなので、そこはご勘弁を! ……ただ、やっぱり実際に体を動かしてそれをやってもらうので、コントローラーで行うのとは、勝手はちょっと違うかもしれませんねぇ。そういう意味では、きっと新鮮な気持ちに慣れると思いますよ。』

 と、ロコはしみじみと言った。

『……さて、説明を続けますね。まず、ここから先、皆様には二つのポイントを管理して頂きます! GPと、CPです!』

 ロコがそういうと、黒板に”CP,GP”の文字が現れた。文字の下に、凄い勢いで何かの絵が描きあがっていく。眺めていると、だんだん絵は形になっていく。完成間近になって、マサキはそれが、メニューの項目を描いているのだと気が付いた。

『ここから先、この画面を”メニュー”改め、”ステータス”画面と称させて頂きますね。ここを開くと、プレイヤーのみなさんの現状を確認することが出来ます。二つのポイントも、この画面で確認することが出来ます。』

 ふと視界の端を見遣ると、確かに”メニュー”と書かれていた文字が、”ステータス”という文字に成り代わっている。マサキは”ステータス”の文字を両手でつまむと、視界の真ん中に持ってきた。文字を囲うウィンドウがぶわっと広がり、黒板に移されている物と同じ画面が表示される。

 周りのプレイヤーもそれに倣った。全員がウィンドウを展開し終わった時、ロコは満足げに頷いた。

『では、まず一つ目のポイント、GPの説明です。GPとは、ゴールド・ポイントの略称です! これはお金のようなもので、ゲームで勝利するなどで手に入れることが出来ます。手に入れたポイントは、なんとショップでいろんなものと交換出来ちゃいます!』

「いろんなものって、なんなのさ。」

 口を開いたのはマサキだった。ロコはにこりと愛想のいい笑みを浮かべると、マサキの頭の上まで来て、すとんと頭上に座り込んだ。

『それも御教え出来ません。というのも、二つ目の説明を聞いてもらえれば理由はわかると思いますが。』

 ロコはマサキの頭上から、長い物差しで黒板を指した。マサキはなるべく首を動かさない様にして、そちらへ目をやった。あまり頭を動かすと、頭上のロコが落ちてしまうような気がしていたのだ。

『次にCP、これはコンティニュー・ポイントと言います!』

 黒板の絵が消え、”コンティニュー・ポイントとは”、という説明が書かれ始める。黒板に書かれた文字を見ながら、こうして説明を受けていると、なんだか授業を受けているような気持ちになってくる。

『かいつまんで言ってしまえば、この数字を多く増やすことこそが、このゲームの一番の目的です! ミニゲームに勝ったり負けたりすることで、CPは増えたり減ったりします。ゲームの最後にこのポイントが一番多い人が、このゲームの勝者となるわけですねぇ。まぁ、回りくどい言い方をしないなら、これはスコアみたいなものです。』

 ロコの説明に、先ほどの赤髪の少女が口を挟んだ。

「減るってことは、ゼロになったりするの? そうなると、どうなるわけ?」

『よくぞ気にして下さいました!』

 ロコは元気よく答える。

『これは皆様のライフポイントのようなものとしての機能も有していて、ポイントがゼロになった瞬間、ゲームに敗北したことになり、このゲームから退場して頂きます。』

 退場と言う言葉に、思わずマサキは身震いした。

 先ほどの黒髪の少年も言っていた言葉だが、つまりは帰らせられるってことだろう。もう少しこのゲームをやっていたければ、キチンとゲームに勝たなければならないわけだ。

 幸先不安になってくる。マサキは人と競うゲームはあまり得意ではなかった。……というか、ゲーム自体、近年全くといっていいほど手を付けてはいないのだ。友人との間で話題になる、ソーシャルゲームくらいしか、ここ数年本格的に触れたゲームは無い。

 人と競うゲームなど、いきなりやれと言われたって勝ち目は見えない。先ほどから露呈している射撃センスの無さからも、それは明白だ。反射神経が問われる系の競技で他の人と競えと言われたら、恐らくはアウトだ。

 しかしマサキの得意不得意に拘わらず、プレイヤー複数人で行うゲームにおいて、対人要素というのはとてもベターでつきもの(・・・・)なものである。ゲームであるからには勝敗があり、他者と競い合うわけだから、勝者に報酬、敗者に罰があるのは至極普通のことだ。

 他プレイヤーと対立し、互いにテストから叩き落としあうことになるのは避けられそうにない。腹をくくりしかない。

 マサキは小さく意気込み、心内で覚悟を決めた。

『ちなみに、この後すぐに行われるレクリエーションゲームでもこのポイントは上下しますので、周囲の方に、あまりに大敗を喫する結果になってしまうと、この場で退場になっちゃうかもしれません。そういうゲームなので、その際はご容赦くださいね? 怒ったりしないで?」

 申し訳なさそうにするロコをさておいて、赤髪の少女は大きく頷いた。

「なるほどね。……つまり今GPで購入できる物が教えられないっていうのは、少なくとも最初の一回を勝ち上がった人にしか、その内容を教えたくないっていう魂胆があるわけね。」

『そういう大人の事情に関しては、ロコの知るところではありません!』

 マスコットは元気よく、逃げの一手を打った。はぐらかされたことを悟って、少女はため息交じりに口を噤んだ。

『さてさて、大まかなルールについてはここまでです! その他のルールについては、必要になる都度説明をさせてもらいますねっ。それでは早速レクリエーションを行いますので、お手元のプレゼントボックスを開封してください!』

 ロコが言うが早いか、各プレイヤーの目の前に手のひらサイズの箱が出現した。ぽんっと音を立てて現れた白い箱には、赤いリボンで封がしてある。クリスマスプレゼントでサンタさんが持ってきそうな箱だ。箱はプレイヤーの目前を、ふよふよと浮遊する。

 箱のリボンに触れると、引いても居ないのにリボンはするりと解かれた。白い煙の様なエフェクトをまきながら、中から小さな弾丸の様なものが出てくる。銅色をした、親指程のいかさの小さなものだ。弾丸はキラキラと青い光のエフェクトを撒きながら、宙にふわふわ浮遊していた。

『ハイ、良く出来ました!』

 ロコが拍手する。ふと見ると、周囲のプレイヤーも全く同じものを受け取っていた。

『今後、箱を開ける際には同様の操作をしていただければ結構です! では、早速アイテムを手に取ってください!』

「取るって、こうか……?」

 呟きながら、指先で弾丸に触れる。すると、弾丸は一瞬強い光を放った後に、小さく弾けて、消えた。直後に視界の端に、〈シュートⅡ会得〉という文字が現れる。今ので取ったことになったのだろうか。

 マサキが指先をさすってみていると、案内人は説明を続けた。

『今、お渡ししたのはシュートを強化するアイテムです。今から行う競技にはきっと必要なので、確実に会得しておいてくださいね!』

 ロコはニコニコしながら言うと、物差しで黒板をぴしぴし叩いた。その音まで、耳の裏側から聞こえて来る。普通の音の出し方じゃないのに、イヤホンの様にはっきりとした音質で物音は聞こえてきている。


『では、これで基本的な説明は終了です。長らくお待たせしましたが、今度は、今から行われるレクリエーション競技のルールを説明したいと思います!』

 ロコは今までにもまして高らかに宣言する。それを言いたくてたまらなかったと言わんばかりだ。

 ロコの言葉と同時に、待っていましたと言わんばかりの勢いを持ってして、教室の窓ガラスをぶち割って、赤と白で的枠の描かれた皿の様な物体が飛び込んできた。割れた窓の破片が降りかかってくる。マサキは思わず身を庇ったが、当然VR映像である破片が身体に突き刺さることは無い。わかっているハズなのに反射で動いてしまったことを、マサキは恥じた。黒髪の少年がこの場にいなくてよかったと、心から思える。

 それからマサキは気を取り直して、浮遊する紅白の皿を睨んだ。シュートの強化アイテムを渡したことといい、あの浮遊する物体の形状と言い、既に嫌な予感がしてきている。

 マサキの予感を確実なものにするべく、ロコは元気よく声を張った。

『記念すべき第一回目の競技ですが、”的当て”です!』

 マサキはロコの言葉に、酷く落胆した。

 がくりと項垂れるマサキをよそに、浮遊する皿は、それぞれ勝手に宙を動き回りだした。早く鋭く動くもの、遅くふらふら動くもの、様々な動きの的が、プレイヤー周りを愉快そうに飛び回った。心境穏やかでない自分をあざけているんじゃないか。と、マサキは少し卑屈な気持ちになった。

「シュート。」

 部屋の端に居た赤髪の少女が、不意に人差し指を的の一つへと向けた。

 彼女のイメージカラーに合致する紅色の光弾が、皿の一つを粉々に消し飛ばした。

『あーっ! まだ早いですー!』

「あぁ、ごめん。どうなるかやってみたくて。」

 口では謝りながら、悪びれた様子を見せない少女に、ロコはやれやれと肩を竦めてみせた。四角いくせに、どの肩を竦めているのだろうか。

『ま、まぁいいですよ、もう。ちょうど実例が欲しかったところです。……では皆さん、ご注目あれ!』

 元気よくロコは、物差しで破壊された皿を指した。ロコの号令から少し間があって、皿の破片がすぅっと集まり、一瞬で元通りの形に戻った。

 件の少女はその様子をみて、「へぇ。」と感心した表情を見せた。その表情に、ロコはにやりと得意げに笑みを浮かべた。

『この様に浮遊するターゲットを打ち抜くと、一定時間後にもとに戻ります。ですので、可能な限り的を撃ち続けて下さい。今回のゲームはこれです。』

 説明を受けて、マサキは思わず頭を抱えた。どうしたものだ、止まっている的にも当たらないのに、動いている物に当たるだろうか。……このままでは落第してしまう。

「ルールはそれだけ?」

 今まで黙っていた金髪の少年が口を挟んだ。ロコは静かに頷いた。

『基本的にそれだけです。ゲームは一ラウンド五分、休憩時間三分で進行させる予定で、これを三ラウンド繰り返してもらいます。全てのラウンド内に撃ち落とした合計が一番高い人が勝者です。身体を使うゲームには不慣れでしょうから、疲労も大きいかと存じます。ロコとしては、休憩時間をどう休むかが、結構重要になって来るんじゃないかなって思ってたりします!』

 三ラウンド制、一回五分ならば合計十五分間の勝負。その間に少しでも多く、アレを打ち落とさなければならないわけだ。受験に受かったばかりなだけに、ここで落第するのは如何せん縁起が悪い気がする。なんとかしなければなるまい。

 マサキは自分の頬をパンパンと叩いた。びりにだけはなりたくない。

「んで、してからに、成功の報酬は?」

 金髪は更に言葉を付け加えた。

『上位五名にはCPが追加され、下位三名はCP減となります。特にどんけつさんは1000CP没収で一発退場! ちょっと厳しめですが、なにぶん参加人数が多いので事情を察して頂ければと……。』

「大人の事情は知らないんじゃなかったのかい?」赤髪の少女が食って掛かった。

『あ、ちなみに先ほど取得して頂いたシュートⅡには、シュートのCT(クールタイム)を短縮する効果がありますよ! より連射が効きますね、頑張ってください!』

「おい、無視するな、コラ。」

『では第一ラウンド、早速開演いたします! 五秒後に始まりますよ、頑張ってください!』

 ”五秒後”と言われて、場のプレイヤーたちはみな慌てて身構えた。無論、マサキもそれに倣った。周囲を見渡して、的の一つに狙いを定める。視界のど真ん中に、大きな”3”と言う数字が表示される。数字は2、1と、あっという間に数を減らしていった。内心心の準備が不十分なマサキは、ゼロの数字を見落とすものかと目を張った。


「シュート!」

 他の誰よりも早く、あの目立つ赤髪の少女がシュートを放った。まだラウンドは始まっていない。紅の弾丸は狙い通りに的へと真っ直ぐ突き進んでいった。

 それに誘発されて、皆が順次シュートを放つ。最初に放たれた、紅の弾丸の着弾とほぼ同時に、第一ラウンドが開始された。




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