アルヌデン会戦
アイネ・デル・サヴィオンより。
大天幕に広がる暗澹とした空気。
それを打ち破るように「失礼するぞ」と頭を抱えたくなるほどの声量が轟いた。
「おぉ! 殿下もおいででしたか!」
「……ラーガンドルフ。相変わらず声がでかいぞ」
「ガッハハハ! これは性分につきどうかご容赦願いますぞ」
豪放磊落と言う言葉が二メートルもの肉体を与えられたらこうなるのだろうなと言う外見――密かにオークの血が流れているのではないかと疑いたくなるほど筋骨隆々の騎士がミスリルの鎧をガチャガチャ言わせて席に着く。
香油で固めた髪に見事な無精髭と言った大男こそ帝国公爵にして『鉄槌』の二つ名を持つアドルフ・ラーガンドルフと言う男だった。
初めて会った時は歩兵隊の指揮官では無いのかと思ったほど逞しい体が大天幕に押し入って来たせいで冬なのに汗が噴き出る気がする。
「それにしても我が輩は殿下に命を救われました! このアドルフ、皇室尊崇の念を新たにすると共に――」
「あーそういうのは良い。暑苦しくてたまらん」
周囲に視線を送れば鎮定第三軍の参謀や将がやれやれと顔をしかめている。
なんとも勝ち戦の雰囲気が無い。そのため明らかにラーガンドルフが浮いているのだが本人はそれに気づいていない。むしろ気づこうとしない。
それがまたラーガンドルフらしいと言えばらしいのだろうが……。
少なくとも余の家臣で無かった事に安堵を覚えてしまう。
そんな事を思っていると天幕の上座側の布が巻き上げられ義兄一の忠信であるエルヴィッヒ・ディート・フリドリヒ公爵が顔を覗かせる。
「諸君、そろったようだな」
名と声の低さから初見の者はエルヴィッヒが女騎士である事に気づく者はそう多くはない。それに戦場となれば彼女はフルフェイスの兜を被ってしまうのでなおさらだった。
だがその兜の下に隠れる素顔はまさに万の男を虜にしうる美しさを持っている。
凛々しい緑の瞳。かわいらしい小さい鼻。鋭く結ばれた唇。
それらが均整の取れた顔と体に乗せられた奇跡の女性。
「ではまもなく第一帝子殿下が参られます。気を付けェ!」
帝都近くに領地を持つ若きフリドリヒ家の当主(昨年前公爵が急逝)の号令に背筋を伸ばす。そして歩哨の堂々とした「第一帝子殿下御来入!」の声と共にスクッと立ち上がり、深々と頭を下げる。
「皆、大儀である」
ゆっくりと下げた頭を戻し、青髪の青年――ジギスムント・フォン・サヴィオンに向き直れば、義兄は余に煩わしそうな視線を向けて「此度の働き聞いているぞ」と蛇に似た狡猾そうな口元を歪める。
「敵は見事に敗走した。そうであろう? だがそれだけでしかない」
立たせたままの家臣達が冷や汗を流しているのを感じる。もっともラーガンドルフを除くが。
もっとも義兄の言わんとする事は分かる。
なんと言っても会戦で勝利を掴んだは良いが、それだけなのだ。
確かに敵騎兵を退け、アルヌデンの歩兵隊に壊滅的な損害を与えられた。
しかしエフタルの敗残部隊を取りこぼし、逃げに転じた敵部隊の追撃に失敗し、こちらも手痛い損害を受けている。
「諸公に聞く。どういう事なのだ? どうして戦果の拡張では無く、損害が増える?」
「畏れながら申し上げます! 敵は依然と強力な遅滞部隊を――」
「強力? 力が強い部隊が蛮族に居る。畏れ多くも――」
義兄が畏れと言う存在はただ一人しか居ない。父サヴィオン皇帝その一人だけ。
故にサヴィオン帝の忠信である我らは一斉に立ち上がって次の言葉を待つ。
「――畏れ多くも父上から賜った兵共より、蛮軍の方が強いと申すのか?」
「い、いえそのような事は――」
哀れにも義兄の怒りを一身に浴びる参謀に同情しつつ、小さなため息をつく。
誰にも気づかれないようにしたつもりだったが、ただ一人エルヴィッヒにそれを見咎められてしまった。
「第二帝姫殿下。そのような体で軍議に赴かれるのはどうかと」
「いや、すまぬ。ただ、義兄上にも申し上げた通りエフタルには精強な遅滞部隊が存在するのは確かです」
「アイネ。貴様、吾の言葉を忘れたか? そのような敗北主義的な――」
「事実ですゆえ。義兄上、お認めください。敵は強い。それこそ帝国を脅かすほどに。
故に我らの祖先は生存圏保護のために戦い続け、憎きジュシカ領には十万の英霊が眠っているのです。それを忘れ敵を侮るなどそれこそ御国に殉じた英霊達に、そして父上に対する不敬ではございませんか?」
これでいくらか参謀虐めも減るだろう。だがあまり肩入れしすぎるとただでさえ嫌われているのだから何をされるか分からない。
「――それより今後の策を示せ」
先ほどの言葉を無かった事にした義兄に参謀の一人が黙って会釈してから作戦について語り出す。
アルヌデン攻略戦。もっともエフタルでの攻城戦を見ている限り危なげも無いだろう。
ただ気がかりなのは轟音と火の魔法を操るエルフの兵団のみ。おそらくあの部隊がまた遅滞作戦を行ったのだろう。
故に勝ち戦なのに余計な損害が出し、追撃の手が緩んだがために敵主力を逃してしまった。痛い失態だ。まぁ魔法使いの損害が少なかったのは不幸中の幸いか。
「よろしい」
パンと手が打ち鳴らされる。
予め策定された戦術の再確認と此度の会戦の反省会の意味合いを含んだ軍議は終わった。
「皆に言おう。これは始まりなのだ。我ら先祖よりの本願を成就する始まりなのだ。
吾は宣言しよう。この夏にはサヴィオンの旗がアルツアルの空を席巻するのだと!
共に戦い抜こう。そして勝利を! 我らが帝国に勝利を!」
「「「勝利を! 帝国に勝利を!」」」
歓呼が響く。居並ぶ公爵達や参謀から歓喜の声が響く。
まぁ何にせよ余はただ戦を求めるのみ。それさえ叶えられればそれでよし。
そして簡単な事後の打ち合わせを挟んで軍議は解散。公がぞろぞろと自分達の天幕に戻っていく中、なんとなく居残っているとエルヴィッヒが余の向かいに立った。
「何用だ?」
「いえ、お別れを申し上げたく。もう我らはアルヌデン攻略に出陣致しますゆえ」
「……気をつけろ。敵は妙な魔法を使う」
アルヌデン攻略戦においても余の騎士団は予備兵力扱い。
まったくもって不本意だ。
功は全て義兄にやるから戦場に出せと言いたいが……。
「えぇ。先の会戦では危ない局面もありました」
優雅な仕草で一つに結われた髪をかき上げながら言う。
「ですが第二帝姫殿下はどうも蛮族を恐れすぎなのではございませんか?
先の戦でも親衛隊の力をもってすれば第二帝姫殿下のお力を借りなくても撃退できた事でしょう」
「自信が過ぎるのではないか?」
「事実ですゆえ。第一帝子殿下の御采配に疑いはありません」
「義兄上は良き人と巡り会えたようで何より」
チラっと上座に座る長身痩躯の皇太子を見やれば冷たい目線が返ってきた。
知っておりますよ義兄上。余の事がお嫌いなのだと言うことは。その上、エルヴィッヒ――フリドリヒ家と母の不忠も。
元々現帝陛下派の家であるフリドリヒ家は前帝陛下の御代、領地こそ帝都近郊でも扱いは外様のそれと変わらなかったと言う。
とは言えなぁ。フリドリヒ家を冷遇した前帝陛下はすでに墓の下。唯一の繋がりは母が前帝陛下の側室であった事だけ。それなのにほぼ無関係の余に当たられてもな……。
あまり長居すべきではないか。
「では余もこれにて」
「アイネ。余計な手はもう上げるな。兄でも庇い切れぬぞ」
兄でも密告してやる、と言っているようにしか聞こえませぬぞ。
一礼して天幕から外に出る。
あいにくの曇天。それでもこれでアルツアル戦争の第二弾作戦が展開完了となる。続きは春。雪溶け、大軍の運用に枷が無くなった頃合いこそ決戦の日になる。
その時こそあのエルフを血祭りに上げてやろう。
「楽しみにしてい、ろ……」
と、背後から濡れた声と音が聞こえてきた。
薄い天幕一枚挟んで漏れ聞こえる音。はぁ。あの二人は……。まだ正式な婚儀の話は出ていなかったが、この戦が終わったら布告を出すのだろうか?
まぁ良い。関わらない方が良いに決まっている。
それに下手にその手の話をすると爺がうるさくてかなわない。
「さて、余も出陣の準備を整えよう運んて」
まず攻略したアルヌデンを拠点に冬を越しつつアルヌデン平野に広がる街道で遊撃戦をしかける。そのために準備を整えなくては。楽しい楽しい戦の準備を。く、ハーー。
「……ん? 雪、か」
ついに降り出した白の固まり。それが世界を覆うとするように降り出してきた。
◇
ロートスより。
「急げ! 急げ!!」
アルヌデンの城壁に立っていた歩哨からの報告でついに撤退となった時、もちろん野戦猟兵中隊は殿を任される事になった。フザケンナ!!
万の呪詛を飲み込んでキャンベラ様から無理矢理手配してもらった馬車に乗り込む。
これで騎兵から逃れられるとは思っていないが、徒歩行軍の際の負担を減らす事が出来る。もっとも確保出来たと言っても中隊全員分は無い。
せいぜい三台――一個小隊分しか確保出来なかった(もっともこの他に砲弾や装薬輸送用に一大と輜重品輸送のために二台も確保しているので十分と言えば十分)。
そこに第二小隊(戦死、戦傷で欠員一二名)と中隊本部直轄分隊を乗り組ませ、最後に俺が乗る。
「中尉、各車点呼完了。欠員無し」
「ご苦労リンクス臨時少尉。ハミッシュ! 居るか?」
「ここなのじゃ」
幌のついた荷台から返る声に「発破準備は?」と訪ねれば堂々とした返事が返ってきた。
「抜かりなし。あと三十分もすれば発火するはずじゃ」
大工房の破壊命令の完遂は近い、か。
もっとも建物を爆薬で吹っ飛ばす訳ではない(そんなに火薬を使えない)。工房として必要不可欠な炉や煙突等を破壊し、工房としての能力を奪おうと言う話だ。
故に必要な箇所に導火線付きの樽を設置した時限式爆弾をしかけてある。
本来ならもっと余裕をもって発破するはずだったが、思ったよりサヴィオンに侵攻が早かったり、アルヌデンの無血開城宣言が出されたためにこうして慌ただしく逃げ出さねばならなくなってしまった。
「よし出せ!」
雇った御者が軽く鞭を振るうと共に二頭立ての馬車が動き出す。
振り返れば兵士達の多くが過ぎゆく街並みを目で追っていく。出来るだけ多くのアルヌデン在住者に別れをさせてやりたかった。
とは言え中隊主力は昨夜のうちにアルヌデンを脱出し、遅滞戦闘の準備を整えている。
「さようなら」
小さく。本当に小さく呟く。
明るく陽気な街に。そこに暮らす人々に。そしてアルヌデン城の女城主と小さな姫君に。
馬車は駆ける。とは言え馬車に揺れる時間はそう長く無かった。
距離にしておよそ六百メートルほど。丘陵となったそこに野戦猟兵中隊の面々が立ち並んでいる。
そしてその数も多くはない。総勢九十八名。編成当時は百五十も居た兵士達。
そして振り返ればアルヌデンの荘厳な城壁がよく見える。そして街の一角で煙と共に轟音が響くのが見えた。
「上手く発破出来たみたいだな」
馬車から降りた俺のそばにミューロンがやって来て悔しげにほぞを噛んだ。
彼女は許せないのだ。彼女の大事な友が愛してた場所が壊れた事を。彼女の友が愛していた場所を壊さざるを得なかった事を。
故に彼女は親友に声をかける。
「ハミッシュ、元気出して。春が来たらサヴィオンを一緒に追い出そう。一人残らず叩き出そう。そして、大切な物を取り戻そう」
だが声をかけられたハミッシュはそれに悲しそうに、いや哀れむようにミューロンに返す。
「……なぁそこに憎しみしか存在せぬのか?」
「――え?」
「確かに、故郷や村の大工房を奪ったサヴィオンは許せぬのじゃ。じゃが、わしはそうやって立ち止まる事など出来ぬ」
毅然とした瞳には先ほどの色は無い。
それが眩しかった。だがそう言われたミューロンはなんと言えば良いのか分からないから助けてと言わんばかりに俺を見てきた。
だが、俺が口を開く前に一人のドワーフが口を挟む。それが義務だと
心得てか。
「あんま無茶を言うな」
「親父! じゃが、わしは伝えたい。ミューロンに、そしてロートスにも」
「はぁ。エルフを親父が――お前の爺婆が嫌う理由はな、こういう連中だから嫌うんだ。長命種であるエルフは過去に捕らわれる。それがエルフなんだ」
「それでもわしは伝えたいッ!!」
彼女は叫ぶ。その小さな身を震わせ、体に秘めた想いを全て吐き出す様に。そのなんと熱い事か。なんと眩しい事か。
それと同時に「サヴィオン軍城門に現る! 現在陣形変更中の模様!」の報告が飛ぶ。
「戦闘用意! 戦闘陣形となせ!」
その言葉にハミッシュは即座に持ち場に返って分隊仲間と共に射撃緒元を選定していく。
ただ残った中隊先任曹長に視線を送ると彼は気まずそうに髭をかく。
「……すまねぇな。デクは、エルフって言えばお前等の事を思い描いているようだ。なんら自分達と変わらない良い存在なのだと思っていやがる。
だが、歳取ればドワーフはこう思う。エルフっちゅうのは執念深い狩人だと、な。特に年寄り共はそおう思ってる。
なんたってその世代は種族間抗争に明け暮れてた頃だからな。身を持ってエルフがどんな奴らか知ってるんだ」
「……それが今のようになったのって、アルツアルがエフタルに侵攻してから?」
「あぁそうらしい。まぁおれも戦後世代だ。伝統を重んじる――過去を重んじるエルフの方がそういうのは詳しいと思うがな」
確かに祖父の世代のエルフはドワーフの事をガハハと酒を飲む野蛮な種族と認識している気がある。
何があっても鉄と語り合い、酒を愛して笑う一族と――。
「確かに、テメェらは良い奴だと思う。デクと仲良くしてくれる事に感謝すらしている。
だが、根本的に違うんだ。そうだろ?
だから相争ってきた。どちらが悪でも無く争ってきた。アルツアルが来るまではな」
それが本当ならエルフとドワーフは混じり合う事の無い種族だったのだろう。そしておそらく人間とも。
互いに言葉を交えられても考え方は違う。互いに近づこうとするも
その距離は万里も離れている。
「親父! 余計なお世話なのじゃ!!」
そう叫んだのは先ほどまで射撃緒元を煮詰めていたハミッシュだった。彼女は小さい体躯を震わせ、身の内に宿る意志を現す様に大きな声で宣言する。
「少なくともわしとロートスは分かりあえると思うのじゃ。もし種族の壁があるのなら、そんな物壊してやるし、互いに遠いのなら一歩一歩近づいていくのじゃ」
用箋綴りを片手に彼女は言い切る。
必ずそれを実行せんとするように。
「確かにサヴィオンの連中は憎いのじゃ。じゃがエルフの憎しみとは違う。
過去を悔いるより、未来を憂うより、わしはロートスと共に今を生きたいのじゃ。
壊れたのなら直せば良い。何度も直せば良い。そのための腕がここにある。そのための技もある。
そうした今が積み重なって過去になり、未来を紡ぐ糸口になる。それを信じるのがドワーフの生き方じゃと思う。
故に共に笑おう。酒を飲んでガハハと笑おう!!」
その身から発せられたとは思えぬ言葉に、俺はただ黙っていた。
お前に、お前に何が分かる!?
この身を焼く怒りの炎を前に笑えだと!?
そんな事――。
そんな事……。
「じゃが、それでもエルフが過去に捕らわれると言うのなら、わしがロートスも、ミューロンもまとめて引っ張り出してやるのじゃ!
この戦争が終わるまでにわしはお前たちを引き上げてやる。憎しみしかないお前たちに希望を与えよう。
じゃから、じゃから戦争が終わったらわしと結婚して欲しいのじゃ!!」
そんな事に、思わず心が揺れてしまうではないか。
サヴィオン人を殺す事に迷いは無いが、それを置いて明日を生きてみようと思ってしまうではないか。
ミューロンただ一人を愛すると決めていたが、その想いに迷いが生まれてしまったではないか。
「……ハミッシュ。すまないが――」
「図々しい事を言うておるのはわかっておる。じゃが、考えて欲しいのじゃ。じゃからミューロン! お主には負けぬぞ!」
「え? あ、あの、その……」
タジタジのミューロンが細い指を組んで頬を朱に染めて小さく何かを言うも風に流れてしまった。
だが彼女はそれを良しとはせず、軍帽の下の双眸がまっすぐ恋敵を射る様に見据える。
「わ、わたしは負けないんだから! ハミッシュにロートスは渡さない!!」
「お、お前ら――!」
その時、溜息が響いた。振り返れば野戦猟兵の面々が呆れたように俺達を見ている。
くそ、だから職場恋愛と言うのは――!!
「戦闘配置!! 急げ!! 見世物じゃないんだ。早く戦争の準備を整えろ!」
「とっくに完了してますよ、中尉」
狼耳をペタンと閉じてやる気無さそうにリンクス臨時少尉が応える。
……やっちまったか。
「皆、痴態をさらしてすまない。さぁ我らの仕事を始めよう。第三小隊、砲撃始め!」
小隊長が即座に命令を復唱。そして俺の隣に立つハミッシュが先ほどと変わらぬ声で言い放つ。
「目標、前方敵騎兵。距離およそ六百。コック四分の三捻れ」
即座に命令が伝わり、敵を睨んでいた砲身に仰角が与えられる。
「一歩一歩、わしは進む。立ち止まるロートスの手を引いて」
「女性にエスコートされるなんて、恥ずかしいな」
小隊長が砲撃を命じる。
天を貫かんばかりの砲声が周囲を圧すし、白のカーテンが周囲を覆う。
それが過ぎ去るのを待っていると軍衣の胸飾りをハミッシュに引っ張られた。なんだろうと思って下を向くと、精一杯背伸びした彼女と唇が触れ合った。
「き、今日はこのくらいにしておいてやるのじゃ」
「おま――!?」
だが即座に唇を拭う事は、出来なかった。そしてさらに抗議しようとする前に白煙が風に流される。
眼下に広がるは濛々と土煙を上げるアルヌデンの城壁。その周囲に居たサヴィオン帝国騎兵はそれに驚いたのか、散り散りになって逃げ惑おうとしていた。
「おい、なんで初弾からほぼ命中してんだよ」
「日々の積み重ね――いや、愛のなせる技じゃよ」
ニッカリと微笑む幼女。思わずその軍帽を取り上げて栗毛色の髪をわしゃわしゃと撫でてやる。
ニヒヒと気持ちよさそうに笑う声が曇天の下に響いた。
またノンケエンド。よって作者はホモでは無い。証明完了。
銃火のよりハーレム度を上げて読者に媚びようとするくっそ汚い手法ですが許してください。なんでもしますから。(これで淫夢厨も釣れるな)
あと二、三話幕間を入れて完結ですが、本筋での二章はこれにて終わりです。
またストックも尽きたので連続更新も終了です。おそらく来週? には幕間投稿しようと思います。
それではご意見、ご感想をお待ちしております。




