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戦火のロートス~転生、そして異世界へ~  作者: べりや
外伝 戦火のアイネ――東方大返し
132/163

だから前進する、戦友と共に

「エリー姉さんッ!!」



 だが戦場の喧噪に悲鳴は飲み込まれ、景色もぐんぐんと流れて行く。

 突撃をかけている最中に足を止める愚を犯す訳にはいかないが、それでも叫ばずには居られなかった。



「――ッ!!」



 敵陣を見やれば一人の弓兵と目が合った。まだ距離は百メートルほどあろうに、それでもその一人と目が合っている確信があった。

 長い詠唱では間に合わない。すでに先の魔法式は崩れて使い物にならない。



「【永遠に燃え続ける柴よ――】」



 その時、一本の矢が弧を描いて飛翔してきた。ダメだ、一息足りない――!

 避けなければ――。だが今から身を動かした程度で外れる軌道では無い。

 嫌だ嫌だ嫌だ。そんな最後を迎えるなど嫌だ。


 周囲の空気が粘着してくるように矢はゆるゆると回転しながらこちらに飛翔し、ブケパロスの動きもだんだん鈍くなっていく。

 だが思考だけは何事も無いように動き続けている。

 その粘ついた時間が朕の思考に余裕を吹き込ませてくれた。

 怯えるな。怯える必要は、無い。すでに散々怯えて逃げて来たのだ。ならばこのまま――。



「殿下――ッ!!」



 周囲の時が本流のように動き出す。

 一歩前に出たクラウスが直剣を振るい、その矢を払い落とす。無理に避けようとしていればその動作にクラウスの振るう剣の機先を制していたかもしれないと思うとゾッとする。



「【炎よ(イグニス)】!!」



 方陣の中央に炎の幕が広がり、人々の悲鳴が木霊していく。火だるまになった弓兵が転げまわり、それを魔法使いが必死に消火しようと水魔法を唱えだす。その混乱に長槍(パイク)兵の一部が浮足立った。あそこだ――!



「者共続けぇ!」



 入り乱れる蹄の音にその声がどこまで届いたのか考える間もなく短杖を左手に持ち変え、一振りの曲刀を抜き放つ。

 上下に暴れる馬上でそれを抜くのは至難ではあったが、すでに造作も無くそれが出来る自分に『戦場に居すぎだ』と悪態をもらす。

 それをしながら無意識のうちに踵を馬の腹に強く押し付けるように力を入れる。するといよいよ襲歩(ギャロップ)に入り、空を飛んでいるのではないかと言う錯覚を覚えながら曲刀を振り上げる。

 いつになってもこの感覚が好きでたまらない。人ではなく一陣の風と化すようなこの感覚が。

 気づくと併走していたはずのクラウスとの間に背後から駆けて来た東方騎士が割り込みだす。

 東方騎士の突撃とはサヴィオンのそれとは違い、最初は幅広い布陣から徐々に互いの間隔を詰めて突撃の密度を底上げするものだ。

 そしてついに最後の五十メートルを切る頃には膝と膝が接するのではないかと思うほど緊密な距離を取り、敵陣に喰いつく。



「ぎゃあああッ!」



 長さ五メートルを越える超長槍(コピア)がまず最前列の長槍(パイク)兵を切り裂くと共にそれがバキリと折れる。

 もっとも超長槍(コピア)とはその見かけに関して非常に軽い。と、言うのも槍を作る時にそれを割って中を中空にし、タール等を使って張り合わせて作られているからだ。もっともそのせいで耐久性は非常にもろい。

 謂わば使い捨ての槍なのだ。だが手が込んでいる分、その値はバカにならないのだが、それでも一撃で敵陣を粉砕出来るのだから安いとも考えられるか。



「く、フハハ!!」



 そして超長槍(コピア)が突き崩した方陣は腸を垂れ流す獣も同然だ。その柔らかな臓腑に斬りこみ、より戦果を拡張できる。



「ハッ!!」



 短い気合と共に目についた魔法使いに向け曲刀を振るう。その魔法使いはサヴィオンの近衛に相応しいミスリルの鎧に身を包んでいたが、こちらの得物もミスリル製だ。

 肘を中心に円を描くようにそれを振るい、棒立ちする相手の背後からその肉を削ぐ。

 するとやっと事の危機を悟ったのか悲鳴とともに血しぶきが舞い、隣の騎士が折れた超長槍(コピア)の柄で魔法使いを突き、そのまま駆け抜ける。

 決して止まりはしない暴力の塊が密集した歩兵を蹂躙し、そのままその梯団から飛び出して行く。その先――後詰と思われる騎士達が驚愕と言わんばかりに口を開いてこちらの勇姿を見守ってくれていた。



「く、フハハッ!」



 我らの国の旗が天にはためきし時、帝国の武威は彼方へも宣布されるだろう。この旗の下、蛮族の嘲笑を許してなるものか。

 あぁその白き手でこの手を握っておくれ。さようなら安穏。さようなら平和。

 さようなら、ごきげんよう。我ら進軍する。我ら進軍する。我ら敵を求めて進軍する。



「く、フハハ! く、フハハッ!!」



 まだ行ける。まだ戦果を拡張できる。まだ、まだまだまだ戦える――! く、フハハ。

 その時、荒れ狂う馬上だと言うのに歌声が聞こえてきた。いつも口ずさむサヴィオンの戦歌と同じ調べだが、その歌詞が違う。



「我らは敵を求めて駆けあがろう、親愛なる我が東の国の為。東方の地は断じて譲らじ、先祖の霊が我々を見ているのだから!

 我らは攻撃する 一族のために! 剣を再び打ち合わせよ。我が地に闇夜が襲い来たのだ。

 だから前進する、戦友と共に。我らは夜明けまで前進する。勝利を目指して――」



 東方らしい歌詞だ。だが嫌いではない。むしろ好みでさえある。

 いよいよ楽しくなってきた。さぁ祭りを続けようではないか!



「だから前進する、戦友と共に。我らは夜明けまで前進する。勝利を目指して――!」



 歩兵達の梯団を駆け抜ける。

 左右に展開する騎兵達はこちらの両翼と小競り合いをしながら包囲せんと機動しているが、少なくとも一撃で方陣を粉砕された事に動揺しているようだ。

 そして前方には後詰の騎士達。祖父上殿はどこだ?



「気にしても詮無き事か。よし、退け! 退けッ!!」



 戦場にラッパが再び吹奏され、東方騎士達が後退を始める。

 粛々としたそれに対し、サヴィオン軍は中央に配した歩兵隊の壊滅により追撃よりも再編が行われるだろう。

 それも歩兵だけではなく陣形の乱れた騎兵も再突撃のために再編成が必要になる。その隙をつくように東方貴族達は陣に戻り、後方に待機させていた馬車から新たな超長槍(コピア)を従者に持ってこさせ、補給が済み次第こちらの陣形の再編に掛かり出す。



「クラウス! 生きておるな!?」

「はい、陛下。御前に」

「被害を集計させよ」

「すでに命令を下しております。今しばしお待ちを」

「エリー姉さんは? どうなったか分からぬか?」

「………………」



 返って来た無言が多弁にその様子を語っていた。

 思わずエリー姉さんが貸してくれた兜に手を添える。



「……。陛下。損害がまとまりました。再度の攻撃に参加出来る者は四百五十ほど。対しサヴィオンの中央に居た歩兵はあと一押しで壊乱と言った所でしょうか」

「うむ」

「……。もっとも被害が多かったのは我が軍の右翼――デルソフ家とやり合った者達の損害が激しく、現在再編を急いでおります。他の部隊の損害は軽微。いやはや、留守貴族とは言えさすがは東方貴族。サヴィオンがあれほど苦しめられるわけです」

「うむ」

「……。泣いても良いのですよ」



 その優しい言葉に瞼が決壊しそうになる。だがここでは泣けぬ。まだ戦は終わっていないのだから、朕は楽しまなくてはならない。

 そう、狂喜し刃を敵に突き立てるように振舞わねば、悲しみに押しつぶされてしまう気がしてならないのだ。



「確かに主君たるもの、常に堂々とあるべきと存じております。しかし私にとって陛下は――いえ、殿下はまだまだ幼き姫にございます。そう強がられなくても私は構いません」

「……そちらの方が篭絡しやすいからか?」

「おや、ばれてしまいましたか」

「それに泣くにしても奸臣の前で泣いてやるものか!」

「その意気でございます。殿下は多少怒っているほうが元気でよろしい」

「――ッ! い、いつまで(じぃ)のつもりでいるのだ?」



 恨みがましい言葉もクラウスにとってはそよ風に等しいらしく、涼しい顔で目を細めながら朗らかな笑みを浮かべて来る。

 いつもいつもお前はお節介なんだ!



「殿下――」

「いや、陛下だ!」

「いえ、殿下。悲しみたい時もあれば怒りたい時もありましょう。失礼ながら殿下は聖人からはほど遠いお方ですし、お一人で全てを抱え込まれる必要はありません。肩肘張る事など無いのですよ。それにいざと言う時はどうか私共をお頼りください。それくらいのお返しをしたいのです」

「……エリー姉さんにも、同じ事を言われた」

「おや。先を越されましたか。なんともお恥ずかしい」



 だがクラウスの優しさに溜まっていた涙があふれて行く。声を大にして泣き叫ぶ愚は犯さなかったものの、これでは王として失格だ。

 それでも、こうして泣ける事がどこか懐かしく思えた。見えぬ敵から逃げ続けた果てに、全てを受け止め、感情の赴くままに涙を流す今が、非常に懐かしかった。



「殿下。この世にはどうしようも無い事が幾つもございます。それに耐えれぬ事もありましょう。その時はオロオロと涙を流しましょう。その涙もいずれ枯れ、風化し、無辺の彼方へと散って行くものです。

 此の世は正に流れる雲の如し――世は無常。全ては流れ、移ろい、消えて行くもの。

 ですので泣きたい時は泣いてください。我が小さき姫君よ。私めは貴女様が泣き止むのを待ちましょう。いつまでも待ちましょう」

「泣いている最中に勝手を働くの間違いではないのか?」

「はぁ。そのように曲がったお心を持たれるとは。(じぃ)めは悲しくあります」

「ならば泣け。お前が泣き止むのを待ってやる」

「これはありがたい」



 青嵐のように力強く、清々とした物が心に吹き込んでくる。



「陛下! 再編が済みました! いつでも攻撃できます!!」

「よろしい!」



 さぁそろそろ仕上げと行こう。敵はまだ再編に追われているらしく、歩兵の前面に騎士達が集結するような陣形になっていた。あれでは両翼包囲は出来まい。



「どうやら敵の歩兵はもう仕舞いのようですな」

「東方騎士の騎兵突撃(ランスチャージ)を受けたのだ。ひとたまりもあるまい。後は騎士を片づけて終わり、だ。行くぞ!!」



 曲刀を振り上げて叫べば騎士達の喚声が平原を押しつぶすように駆けて行った。



「突撃! 進め!!」



 ラッパと共にゆるゆるとした足取りで前進を始める。それに合わせるように敵陣からも騎士が動き出す。その先頭にはこちらと同じ羽飾りをつけた装飾過多の有翼重騎士団が超長槍(コピア)につけたバナーをなびかせながら迫ってきていた。

 さすがデルソフ家。このような戦況でも怯まずに戦うか。く、フハハ。



「もしも命運尽し刻が来たらば 私は英雄として地に眠るだろう。だが泣かないでくれ、愛しき人よ 私は一族のために殉じたのだから!

 我らは攻撃する 一族のために! 剣を再び打ち合わせよ。我が地に闇夜が襲い来たのだ。

 だから前進する、戦友と共に。我らは夜明けまで前進する。勝利を目指して――」



 誰かが歌う。デルソフの騎士なのか、オストスカヤの騎士なのか、それとも自分自身なのか。

 歌声と共に馬脚は衝突し、人馬の悲鳴が戦場に共鳴していく。

 そこに騎士らしい名乗りがあるかと言われれば否と答える。東方騎士は言葉よりも力で語り合うというのもあるが、互いに高速で動きあう東方の戦では名乗りを上げる時さえ許されないからだ。

 故に眼前で曲刀を振りかぶる祖父上殿を見やった瞬間、そこから戦いが始まった。



「ここはとうさぬッ!」

「押し通るッ!」



 馬は全ての力を使い果たんばかりに駆け、腕はしなり、一瞬だけ剣戟が混じり合う。二撃を行う余裕も振り向く事はない。

 ただ騎馬達がすれ違い、弱き者が地に頼れていく。

 そしてそのまま進めば先ほど突き崩した歩兵達が居た。まだグズグズに崩れたそれはまさに腸を垂れ流すようなそれが潰走を起こしていないのは偏に近衛の矜持故だろうか。

 そんな事を思いつつ歩兵達を突き刺すように騎士の集団が押し寄せるといよいよ歩兵達が逃げ出し始めた。

 よし!



「追撃に移れ! 一兵たりとも逃すな!!」



 個々に逃亡を始めた歩兵達の背に向け反りの入ったサーベルで円を描くように振るうと肉をそぎ落とすように血しぶきが舞った。

 だが足を止めるような愚はおかさない。騎兵は速度が命だから。

 そして歩兵を抜ければあとは騎士団直轄の後詰めを残すのみ。



「小癪なッ!! 我が名はヴィルヘルム・ラーガルランド!! 謀反人め、いざ尋常に勝負――」

「【炎よ(イグニス)】!」



 その後詰めの先頭で喉を振るわせる暑苦しい騎士の馬の鼻先に炎の魔法を放つと嘶きと共に馬は竿立ちになり、主を振り落としてしまった。

 ――まぁ馬を攻撃するのは褒められた行為ではないが。



「ぐああ!? ひ、卑怯なり!!」



 だが落馬しても元気が有り余っているようだ。さすがラーガルランドの弟。



「残敵を掃討せよ! かかれッ!!」



 歩兵に釣られるように浮き足立ったサヴィオン軍はそのまま戦の流れを取り戻す事が出来ず、三々五々とした撤退が始まったが、それを許すほど東方貴族は甘くはないのだ。


 ◇


 戦が終わり、羽飾りを取って椅子に身を預けながらワインで喉の乾きを癒しているとちょうど木杯を傾けるとポタリと深紅の液体が一粒零れただけであった。

 チラリと隣のテーブルを見やれば封を切られたばかりのワインが「どうぞ」と言わんばかりに鎮座している。

 それに手を伸ばそうとして、止めた。



「クラウス」

「はい、陛下」

「……酌を頼む」

「御意に」



 待ちこがれたとばかりに背後に控えていた初老の騎士が差し出した木杯にそのワインを注いでくる。



「放せッ! 我を誰だと思っている!! 我こそ現帝陛下より近衛の将に任ぜられたヴィルヘルム・ラーガルランドであるぞ!! 我が身は捕虜に甘んじるつもりは毛ほどもない!! 虜囚の辱めを受けるくらいなら殺せ!!」



 あれがもう少し静かであったらワインの味わいも増す事だろうに。

 もっとも周囲の東方貴族達もラーガルランドの弟の事をもてあましているらしく、迷惑そうな眼でこちらを見てくる。さっさと沙汰を出すか。



「悪いがヴィルヘルム殿。貴様を含めて捕虜を殺すつもりは一切無い」

「くッ! そのような辱めを受けては武人の名折れ! いっその事、殺してくれ!!」

「お主、よく不敬罪に問われぬな」

「うるさい! 陛下の騎士団に敗北は許されぬのだ! ならば我らは潔く腹を斬る!」

「……言っておくがそのように叫んでいるのは貴様だけだぞ」

「なにッ!?」



 二度の東方騎士による突撃はサヴィオン騎士の戦意を挫くには十分だったらしく、多くの騎士達が捕虜となる事を選んでいる。ここまで抗戦的な奴はたぶんすでに死んでいる気がするが。



「さて、祖父上」



 そして捕虜となった有力貴族はヴィルヘルム・ラーガルランドだけではなくミヒャエル・オスト・デルソフ辺境伯もその一人だった。



「まさか再び生きてお会い出来るとは、正直思っておりませんでした」

「同じく。さて、私の沙汰もお出しくだされ。陛下に手をかけた罪、この命にて償いとうございます」



 深々と頭を下げる老年の騎士。その右腕は力なく垂れ下がり、きつく縛り上げた包帯を朱に染めつつあった。きっと朕との一騎打ちで負った傷だろう。



「確かに祖父上殿は朕の事を帝国に売ったな。万死に値する」



 今回の騒動の一つの解決策として謀反の首謀者の疑惑をかけられた朕を帝室に差し出す事でこの一件を丸く納めるつもりだったその人を朕は許すつもりはない。



「だが、先も言ったが一切捕虜を殺すつもりはない」

「しかし――」

「今、サヴィオンからの支配から脱却した東方には先立つものが必要なのだ。悪いが帝国やデルソフの領地から絞れるだけ絞らせてもらうぞ」

「……それでは私の気がおさまりません」

「言っておきますが、祖父上殿。朕の気も収まっていないのです。そもそも朕に暗殺者を差し向ける事がどれほど許されぬ事か! そんな大罪を犯された祖父上殿は死を持ってもその罪は贖えぬでしょう。

 ですので、もし東方への忠誠心が一欠片でもあるのなら生きている間、その罪を償い続けてくだされ」

「それは、一体?」

「デルソフ家の領地はちょうどサヴィオンと東方の国境地帯。どうか東方の防波堤になっていただきたい」

「……しかし――」



 まぁ祖父上殿が難色を示されるのは分かる。デルソフ家もれっきとした東方三大貴族とは言え、サヴィオンを押さえつける力など無い。

 だが政治として見ればデルソフにはまだまだ価値がある。



「祖父上殿は帝室からの親も厚いサヴィオン騎士ですし、何より現帝陛下の義父にあたられます。その伝手をおかし下さい」

「……一体何を?」



 疑問を浮かべるその顔に小さく微笑む。

 まぁこれは保険だ。東方のための保険。



「それはまたいずれ。クラウス。部隊の再編は?」

「すでに完了しております。現有の兵力は総じて四百。この他に遊兵となっていたガリアンルートの軽騎兵が残敵掃討にあたっております」

「よろしい。出発だ」



 それに祖父上が何処へ? と問うてきた。答える義理は無いのだが、まぁ良いだろう。



「これからリトリスへ。巨人退治です。ちょうど巨人発見の報が流れて一週間は経つか?」

「な!? そろそろと思っておりましたが、もうですか。しかし今から出立するとなるとイヴァノビッチ領内で巨人を迎え撃つ事になるのでは? 民に被害が出てしまう!」

「そうですな。普通に向かったのではその通り。まったく、歩兵などを連れて進軍してくるから余裕が無くなってしまいました」

「……その口調、何か策がおありなのですか?」

「えぇ。朕は戦好き故、とっておきの策を練っております。今年もイヴァノビッチ領外にて巨人を討ち取ってご覧に入れましょう。では、これにて。またお会いしましょう」



 思わず頬が緩んでしまう。

 さぁ次の戦だ。もう一合戦してこよう。

 我等の前途に待つのは栄光の日々と戦である。泰平への欲求は後に残し、今、東方は再び攻めにかかる!

 我らは攻撃する、民族のために! 剣を再び打ち合わせよ。我が地に闇夜が襲い来たのだ。

 だから前進する、戦友と共に。我らは夜明けまで前進する。勝利を目指して――。


ラーガルランド弟「く、殺せ(CV大塚明夫)」



今回は久々のお歌回でした。作中で使っているのは水兵歌に続いてフィンランド進軍歌と言う曲です。

こちらは継続戦争中に作られた水兵歌のスオミ語版アレンジです。

剣を打ち合わせよとか暗闇が襲い来たとか原曲より殺意マシマシな上に厨二度が上がっているのでアイネ覚醒祝いにこちらの歌に変更しました。

蛇足ですが水兵歌には他にも第13山岳SS師団(クロアチア人SS部隊です)向けのボシャニャク語版もあるとか。結構流行していたようですね。


それではご意見、ご感想をお待ちしております。

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