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逃走

「やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい! 」


 洞窟の中をひたすら走り続けているのは、ロリクスだった。

 その表情に余裕はなく、地獄の悪鬼すら驚愕させる形相だ。


「ロリクスーがんばってー」


 力の抜けそうな応援をしているのはソシエであり、彼女は飛行魔法を利用して高速で移動している。


 彼らを追いかけているのは緑色の体表、樽のような体格、大樹のような腕と脚、そして能面のような化粧の施された、文字通りの意味でのモンスターだった。


「なんだれ! 」


「しらなーい、こっちの世界特有のモンスターじゃないの? 」


 ロリクスが死ぬ気で逃走を図っているのには理由がある。

 おそらく戦えば一方的な展開にする事が出来るだろう。

 だがそうしなかった理由は一つ。


 出会いがしらにモンスターに言われた言葉にあった。


「あら、好みのタイプ」


 モンスターが喋ったことにも驚いたが、それ以上に発せられた言葉に理解が追い付かなかった。

 それほどに、モンスターの言葉は衝撃的だった。


「じれったいし……撃っちゃう?

ねえ撃っちゃう? 」


 ロリクスと打って変わって楽しげなのはソシエだ。

 恋愛沙汰などは彼女にとってどうでもよい事なのだが、コントを見ているような現状は見ていて楽しいのだろう。

 モミジのように早々に範囲外へと離脱したためこの場にはいない。

 今のところ一本道であり、しばらく分かれ道はない。

 その分かれ道の手前でモミジは待機しており、ロリクスが来たらどちらかに進もうと考えていた。


「うおぉおおおおおおおおおおおおおお!

くるんじゃねえええええええええええええ! 」


「まってぇダーリーン」


 逃げるロリクスと追うモンスター、その様子を楽しげに眺めるソシエと既に範囲外にいるモミジ、混沌とした光景が洞窟内で繰り広げられていた。


「もういい!

ソシエ! 【無の衝撃波】であれぶっ殺してくれ! 」


「あーわたしまだ使えないよあれ。

正確には使えるけど使いこなせてないから周囲一帯が消し飛ぶと思う。

たぶんロリクスも私もモミジも巻き添えで」


「だあああああああ、やっぱり魔法使いは集団戦じゃ使えねえええええええええ! 」


「誰が使えないって? 」


 唐突にロリクスの叫びを遮ったのは、モミジだった。

 いつの間にか分かれ道まで来て、モミジの横を駆け抜ける。

 そして、ソシエがその後に続いたのを見てモミジは魔法を行使した。


「アースウォール」


 それは土の壁を作り出す魔法であり、強度は大したことはないが上級者になれば連続しての使用が可能である。

 そしてその特性として重ねがけをすればするほど壁は厚くなり、攻撃を防ぎやすくなる。


「さて、道もふさいだことだしさっさと先に進みましょう」


「た、助かった。

本当にありがとうモミジ」


「はいはい、使えない魔法使いががんばっただけよ」


 少々不貞腐れているモミジだったが、ソシエはにこやかだった。

 先ほどロリクス達が通った道はアースウォールの多重発動により完全に塞がっており、モンスターもこれ以上追ってくることはなさそうだった。


 なお、この後行き止まりであると判明したためアースウォールを手作業で崩しながらもう一方の道へ逃げ込み、そして再びモンスターに追われたのは三人だけの秘密である。

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